Chopin: Vc Sonata Op.65@Ophélie Gaillard, Edna Stern |
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ショパン:
・チェロ・ソナタ ト短調 op.65
・前奏曲イ短調 op.28-2*
・ノクターン ト長調 op.37-2
・前奏曲ホ短調 op.28-4*
・ノクターン ト短調 op.37-1
・序奏と華麗なポロネーズ ハ短調 op.3
・ノクターン ホ短調 op.72-1*
・ワルツ イ短調 KK IVb no.11*
*=ガイヤールとスターンによるチェロ&ピアノ編曲版
オフェリー・ガイヤール(チェロ/ Francesto Goffriller, 1737( 弓/ Etienne Pageot, 1840)
エドナ・スターン(ピアノ/1843年プレイエル)
これもまたショパン・イヤーに因むCDの一枚かも知れないが、そういった話題性やマーケッティングを度外視して素晴らしい出来映えのアルバムだ。ピアノの詩人の異名をとるショパンではあるが、実はチェロという楽器にはずっと憧憬があって、曲はぐっと少ないがこのト短調ソナタはその代表と言って良い名作。
これはまた、ショパンがかなり本格的にチェロ等の弦楽器に興味を持っていた事を裏付ける一曲と言える。生前には、自分が本来的に勝負する領域はピアノ(クラヴィーア)曲ではあるが、肉声を模した音楽または歌曲、声楽ならばチェロが持つ柔らかな音声帯域を活かした曲に興味がある、とのコメントも残しているくらいで、ショパンがもし高齢まで活躍していたならばこの手の弦楽曲または管弦楽作品を夥しく残した可能性はあったと個人的には思っている。
このアルバムの冒頭はメインディッシュのVcソナタ、そしてその後には優美なエドナ・スターンによるピアノ独奏と、元来はピアノ独奏曲であったものをガイヤール&スターンがVc+Pf向けに編曲したものとが交互に配置される構成となっている。
Vcソナタはなんとも不可思議でふくよか、そして自由な夢心地を兼ね備えた佳作であり、およそショパンらしくない和声展開と旋律進行といえる。VcとPfは対位法的な掛け合いが基本となる一方で、一楽章においては転調を繰り返す事、増4度および減7度の不安定な和声、そして3、5、7♭系の安定和声(ギターコードで言うとセブンス・ディミニッシュに類似した和音だろうか?)を交互に出し入れする複雑な和声展開が特徴だ。どの楽章ともVcとPfが交代しつつ対等に主旋律を受け持つのはフランクのVn+Pfのソナタと似たポリシーと言えようか。
この曲全体を通して言えるのは、繰り返しとなるがショパンらしくない事。敢えて比喩するならばバルトークの旋律展開にフォーレの和声を載せた様なかなり前衛的かつ強い飛翔感を漂わせる曲想と出来ようか。色彩感も強いのだが、どこかに退色したような地味な哀愁を臭わせる風情が特徴で、目眩くコントラストと言うよりは深々とした秋色といったところ。ガイヤールのVcは凄く巧くて、硬軟の使い分け、強弱の出し入れの妙は恐れ入るしかない出来映え。またエドナ・スターンのプレイエルによるパートもガイヤール以上にキュートで美しくかつ高速パッセージが冴え渡っていてこの往時の楽器をここまで操れるとは凄いのひとことだ。
ノクターン2曲がエドナ・スターンによって完全独奏で弾かれるわけだが、これが素晴らしい風情であって昨今出ている諸家のショパン生誕記念ボックスを軽く凌駕するリリカルな解釈と表現だ。このスターンという女流の弾くビンテージ・プレイエルがなんともエレガントで脳裏に焼き付くピアニズムを奏でるのであった。
(録音評)
Aparteレーベル、AP003、通常CD。録音は2009年9月、パリIrcamとある。プロデューサーはNicolas Bartholomee、トーンマイスターはVirginie Lefebvre、録音機材はZaxcom、DPA 4041マイクロフォン、アンプはJeff Rowland Capri、モニタがSonus Faber Cremona Mとクレジットされている。
音質はモデレートながらなかなかに解像度が高く、ガイヤールの精妙な弦捌き、そして霊妙なプレイエルを克明に捕らえきっていると言える。なかなかお洒落で大人の調音である。これまた注目に値するアルバムの登場だ。
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このCD、なかなか見かけなかったのですがようやくゲット、初めて聞くショパンのチェロ曲、確かに雰囲気はショパンではないですが、ガイヤールちゃんwのチェロを聴いているだけでも楽しめます。
それと、スターンさんのピアノの音が最初にポーンと出た時に、えらくくすんだ音だなあと思いましたが、チェロの鮮明な音に「こういうピアノなのか?」と。拙宅のプアな機器ではなかなかに再生は難しいのでしょうが、2回、3回リプレイしているちらもと何となく雰囲気が出てきてます。
それと、スターンさんはnaiveから今年にショパンの有名曲のCDを出しているのですね。こちらも機会をみて手に入れてみたいです。
ではでは。
引き続いて、色々とお教えください。
お世話様です。タチアナ・ヴァシリエヴァ、素晴らしいでしょ? またヌーブルジェという彗星は、これは凄いの一言なんですよね。一発屋で終わる気配もあるので頑張って欲しいですが・・。ま、経済的な面を睨みながら息長く発掘を続けていって下されば、と思います・・ww