2010年 07月 10日
Beethoven: Vn Sonata #3, #9@Viktoria Mullova |
ONYXの新譜でムローヴァが弾く3番ソナタとクロイツェルだ。ONYXは随分前から活躍しているレーベルかと思っていたが、今年が設立5周年なんだそうで、これがレーベル通算で50枚目の記念リリースなんだそうだ。

http://www.hmv.co.jp/product/detail/3798835
ベートーヴェン:
・ヴァイオリン・ソナタ第3番変ホ長調Op.12-3
・ヴァイオリン・ソナタ第9番イ長調Op.47 ”クロイツェル”
ヴィクトリア・ムローヴァ(ヴァイオリン)
クリスティアン・ベズイデンホウト(フォルテピアノ)
ムローヴァの無伴奏パルティータ+ソナタ全集は正に新世紀の金字塔、そして時代的名演の一つに挙げて良く、とても素晴らしい出来だったことは万人が認めるところだと思う。そして蛇足ながら拙Blogのプライベート・プライズMusicArena Awards 2009 グランプリも獲得した。
ここのところずっと、J.B.ガダニーニにガット弦+ヴィンテージ弓と、ピリオド系の攻め方を継続してきていたムローヴァだが、いよいよ古典派時代の作品をもこのスタイルを敷衍して弾き始めたようである。そして今回は伴奏にフォルテピアノを持ってきているところが彼女の完璧主義をより完全なものとして仕上げるキーだ。フォルテピアノは若き名手で進境著しいクリスティアン・ベズイデンホウトを起用している。2007年、病欠した名手アンドレアス・シュタイアーの代役としてフライブルク・バロックオーケストラで弾いたのが大成功で、その名を知られる様になったそうだ。
針を降ろしてまず気付くのがピッチの低さである。A=440Hzの標準値に対して6~7Hz低い気がする(周波数カウンタで正確に測定したわけではないが・・)。そのためか密度感と太さはずば抜けている。通常はピッチを落とすと歩が遅く、ピッチを上げると歩が速まって聞こえる傾向にあるのだが、この演奏の場合は何故かテンポが遅くは感じられず、寧ろ冒頭の3番変ホ長調の一楽章Allegro con spiritoの主題部から中間部まで、それとコーダまでの末尾部分のアチェレランドの速さは目を見張るものがある。
クロイツェルの一楽章はAdagio sostenuto - Presto - Adagioという構成で、主題部はPrestoとハイピッチ設定なのであるが、動機と導入部が緩やかな出だしのせいか温度感の低さが強調され、フォルテピアノの無光沢サウンドも手伝って旋律の太さが格別な安定感を演出している。そう思う間もなく咳き込む様なE線とA線の交錯、そして疾駆するピチカートがツィンバロンの様なフォルテピアノのトレモロと重畳されて何とも言えない速度感と一体感が醸される。
二楽章はAndanteでこのアルバム中、唯一息抜き出来るパートである。ベズイデンホウトのキータッチの美しさと和声展開の旨さが光る場面が多く、たっぷりとフォルテピアノを聴かせられるのである。
最終楽章はまたまたPresto設定でこれまた息つく暇もない緊迫感と密度感が凄い。冷涼感溢れるガダニーニが満喫できる一方、ここを聴く限りはガット弦であると言うことを忘れさせてくれる繊細かつ伸びやかな軽量感が前面に出ており、ムローヴァの操弦技術の高さと多面的な表現能力に脱帽せざるを得ない。
ガット弦を張ったJ.B.ガダニーニとフォルテピアノのポロンポロンという音色のマッチ感は絶妙で、作曲当時の楽器事情を推し量るにこれが独奏楽器と伴奏楽器の本来の棲み分け方だったと思い知らされるし、敢えてこのスタイルでクロイツェルを録ったムローヴァの意図も汲み取れるというもの。演奏も音色も素晴らしいのひとこと。
(録音評)
ONYXレーベル、ONYX4050、通常CD、録音は2009年12月14~16日、Wyastone Leysとある。この場所は英国ロンドンの西方、カーディフとブリストルの近郊にある古城らしい。音質はこのレーベルらしい穏健かつ刺激音の少ない滑らかなもので殊更に解像度や輪郭を強調したものではない。さりとて音像定位や空間展開は明晰な優秀録音である。安心して長時間鑑賞していられる大人の調音だ。
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http://www.hmv.co.jp/product/detail/3798835
ベートーヴェン:
・ヴァイオリン・ソナタ第3番変ホ長調Op.12-3
・ヴァイオリン・ソナタ第9番イ長調Op.47 ”クロイツェル”
ヴィクトリア・ムローヴァ(ヴァイオリン)
クリスティアン・ベズイデンホウト(フォルテピアノ)
ムローヴァの無伴奏パルティータ+ソナタ全集は正に新世紀の金字塔、そして時代的名演の一つに挙げて良く、とても素晴らしい出来だったことは万人が認めるところだと思う。そして蛇足ながら拙Blogのプライベート・プライズMusicArena Awards 2009 グランプリも獲得した。
ここのところずっと、J.B.ガダニーニにガット弦+ヴィンテージ弓と、ピリオド系の攻め方を継続してきていたムローヴァだが、いよいよ古典派時代の作品をもこのスタイルを敷衍して弾き始めたようである。そして今回は伴奏にフォルテピアノを持ってきているところが彼女の完璧主義をより完全なものとして仕上げるキーだ。フォルテピアノは若き名手で進境著しいクリスティアン・ベズイデンホウトを起用している。2007年、病欠した名手アンドレアス・シュタイアーの代役としてフライブルク・バロックオーケストラで弾いたのが大成功で、その名を知られる様になったそうだ。
針を降ろしてまず気付くのがピッチの低さである。A=440Hzの標準値に対して6~7Hz低い気がする(周波数カウンタで正確に測定したわけではないが・・)。そのためか密度感と太さはずば抜けている。通常はピッチを落とすと歩が遅く、ピッチを上げると歩が速まって聞こえる傾向にあるのだが、この演奏の場合は何故かテンポが遅くは感じられず、寧ろ冒頭の3番変ホ長調の一楽章Allegro con spiritoの主題部から中間部まで、それとコーダまでの末尾部分のアチェレランドの速さは目を見張るものがある。
クロイツェルの一楽章はAdagio sostenuto - Presto - Adagioという構成で、主題部はPrestoとハイピッチ設定なのであるが、動機と導入部が緩やかな出だしのせいか温度感の低さが強調され、フォルテピアノの無光沢サウンドも手伝って旋律の太さが格別な安定感を演出している。そう思う間もなく咳き込む様なE線とA線の交錯、そして疾駆するピチカートがツィンバロンの様なフォルテピアノのトレモロと重畳されて何とも言えない速度感と一体感が醸される。
二楽章はAndanteでこのアルバム中、唯一息抜き出来るパートである。ベズイデンホウトのキータッチの美しさと和声展開の旨さが光る場面が多く、たっぷりとフォルテピアノを聴かせられるのである。
最終楽章はまたまたPresto設定でこれまた息つく暇もない緊迫感と密度感が凄い。冷涼感溢れるガダニーニが満喫できる一方、ここを聴く限りはガット弦であると言うことを忘れさせてくれる繊細かつ伸びやかな軽量感が前面に出ており、ムローヴァの操弦技術の高さと多面的な表現能力に脱帽せざるを得ない。
ガット弦を張ったJ.B.ガダニーニとフォルテピアノのポロンポロンという音色のマッチ感は絶妙で、作曲当時の楽器事情を推し量るにこれが独奏楽器と伴奏楽器の本来の棲み分け方だったと思い知らされるし、敢えてこのスタイルでクロイツェルを録ったムローヴァの意図も汲み取れるというもの。演奏も音色も素晴らしいのひとこと。
(録音評)
ONYXレーベル、ONYX4050、通常CD、録音は2009年12月14~16日、Wyastone Leysとある。この場所は英国ロンドンの西方、カーディフとブリストルの近郊にある古城らしい。音質はこのレーベルらしい穏健かつ刺激音の少ない滑らかなもので殊更に解像度や輪郭を強調したものではない。さりとて音像定位や空間展開は明晰な優秀録音である。安心して長時間鑑賞していられる大人の調音だ。
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by primex64
| 2010-07-10 14:18
| Solo - Vn
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