Perahia plays Chopin@Murray Perahia - Disc 2 |

http://www.hmv.co.jp/product/detail/3761838
CD2
ショパン:
・ピアノ・ソナタ第2番変ロ短調Op.35『葬送』
・ピアノ・ソナタ第3番ロ短調Op.58
さて、この二枚目には有名ソナタが二つ入っている。ショパンはピアノの詩人という異名をとるほどピアノに特化した作家だったわけだが、何故かPソナタは3曲しか書いていない。そのうちの1番は習作として書かれたものゆえ完成度というかショパンらしさは殆ど無く、演奏も録音機会も少ない。つまり、Pソナタとして概して世に露出しているのは2~3番の二つだけと言うことである。ショパン同様にピアノ特化型作家であったリストもまたPソナタは僅か一つしか書いておらず(しかも単楽章形式ソナタという型破りな超傑作)、これまた意外な事実なのだ。
Pソナタ2番はショパン作品の中でも最右翼に位置する激烈で色彩感のどぎつい熱情タイプの作品だ。各楽章の連関性は殆どない割にはちぐはぐ感が感じられず不思議と調和しているのはショパンの異彩のなせる技か。3楽章はあの有名な葬送行進曲そのものとなっており、このため愛称を葬送(Funeral March)とされている。ペライアの静謐にして時にドラマティックなピアニズムはかなり完璧で聴き手の耳をグリップする。マルカート基調なのにとてもしなやかで滑らか、端正な弾きっぷりはこの人の最大の美点だ。
そして3番だが、この作品は純粋なピアノソナタというよりはピアノ四重奏向け、いや小規模交響詩くらいまでは拡張可能な構想で書かれた和声重視の曲だ。そういった点においては前出の2番だけがショパンの生粋Pソナタ作品と言えなくはないのだ。この3番は温度感の低い均整の取れたスケール、および意外性の少ない、割と平坦で平静な和声を中心とした淡々とした作品である。しかしペライアの鋭い譜読みと静謐なタッチはそういったなにげのない音符と音符の隙間にある襞を見つけ出してマグニファイして聴かせてくれる。そのためありとあらゆる場所の瞬間瞬間がドキドキの連続で、この3番に匹敵する様な解釈と演奏はちょっと思い当たらない。
(録音評)
SONY Classical、88697648232、通常CD 5枚組。録音は1973年5月30日(ステレオ)とある。プロデューサーはPaul Myers、ロンドンのCBSスタジオでの収録。軽いヒスノイズが乗っているのでアナログテープ録音だろう。音質はソリッドな中域に僅かなブリリアンスを纏ったハードパーマロイの形質で、恐らくレコーダーはスカーリーだ。これまた全盛期のCBSソニーの音で、LPレコード爛熟期を彷彿とさせるゴージャスな音色。テープの保存状態は良好で回転ムラやドロップアウトは僅少だ。
