Stravinsky: Pulcinella@Boulez/CSO |
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3728384
ストラヴィンスキー:
・3楽章の交響曲 (1942-45)
・オーケストラのための4つのエチュード (1914-1928)
・バレエ音楽『プルチネッラ』全曲 (1920)
ロクサーナ・コンスタンティネスク(メゾ・ソプラノ)
ニコラス・ファン(テノール)
カイル・ケテルセン(バス・バリトン)
シカゴ交響楽団
ピエール・ブーレーズ(指揮)
前座として入っている、3楽章の交響曲とオーケストラのための4つのエチュードは、ストラヴィンスキー作品の中でも群を抜く前衛的な作品で、拍子はなんとか保ってはいるものの、一方の調性の方は非常に危うくて、殆ど崩壊していると言っても過言ではない。
3楽章の交響曲は目眩くレンジ感とパーカッションの殴打、そして炸裂する上下音階の破壊力を縦横に楽しみたい作品。グランカッサの連打がリスナーの体を揺するのは生演奏会での雰囲気を彷彿とさせる臨場感だ。ブーレーズの引き締まった鋼の様な解釈は余りにスリムでマッチョ、そして緊張感の漂うものだ。
4つのエチュードは、ちょっと題名が微妙であるけれども面白い展開の曲集で、どちらかというと諧謔さを身上とする作品。どろどろした感情面を可笑しく風刺した様な旋律の組立はペトルーシュカを更に奇妙に変形した様な斬新さだ。ここでのブーレーズは多少のデュナーミクを織り交ぜながら不調和の中の「せめてもの」調和を追求していて、ともすればダルで不可解なこの作品を鮮やかな断面で切り取って見せている。勿論、CSOの弦・管ともにこれに十二分に応えていて鋭く精密なビームを発し続けている。
プルチネッラは壮大でかつ美しい作品であるが、ここでのブーレーズの解釈とドライブの仕方はまさに中堅以降のブーレーズのやり方そのものであり素晴らしくハイスピードで隙のないものだ。これはいわゆるドライで透徹された演奏であるが、三人のソリストの活かし方が秀逸で、彼女らにたっぷりと謡わせている間のオケへの悠然とした操作は流石と言わざるを得ない距離感だ。これを聴いているとどうしてもマーラーの歌唱付き交響曲作品におけるブーレーズを想起してしまうのである。それほど劇的かつクール&ドライでありながらディテールの掘り下げが精緻なのである。
もうかなり高齢であるから、大きな演奏会に出向く機会は激減するであろうが、まだまだ軒昂なそのセンスを是非とも多く披露し、録音に残して欲しいものだ。
(録音評)
CSO Resoundレーベル、CSOR901918、通常CD。録音は2009年2月26-28日、3月3,5-7日、場所はCSOの本拠、シカゴのシンフォニーセンター、オーケストラ・ホール。録音は例によってPolyhymnia International BVが担当。しかし、いつものポリヒムニアとは異なりなんとも地味暗くしかも透徹された超高音質には舌を巻いてしまう(=ペンタトーンの様な可憐でスマートな音作りは一切なし)。どこまでも奥へ奥へと引き下がって展開される広大でクリーンな音場空間は歴代のシンフォニーセンター録音の中でも例外中の例外と言えるほど優れたものである。レンジ感ももの凄く、ストラヴィンスキー+ブーレーズといえば定番のグランカッサの咆哮がこれでもか! と生々しく捉えられていて凄い。ちょっと音量を上げると部屋全体が振動板となってしまって恐怖を覚えるほど。
この盤を買ってきて後から残念だったのは、実は同じ内容でSACDハイブリッドが同時リリースされていると言うこと(CSOR901920)。うーん、またまた確認不足であった。しかし、この出来映えならばDSDとの差異は殆ど聴き取れないのではないかと負け惜しみを言ってみたりする・・。
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