J.S.Bach: Magnificat BWV243@Philippe Pierlot/Ricercar Consort |
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Bach - Magnificat BWV243
Bach, J S:
Magnificat in D major, BWV243
Fuga sopra il Magnificat 'Meine Seele erhebt den Herren', BWV733
Mass in G minor, BWV235
Prelude & Fugue in G major, BWV541
Carlos Mena(Alt), Maria Keohane(Sop), Anna Zander(Sop),
Hans-Jörg Mammel(Ten) & Stephan MacLeod(Bas)
François Jacob(Org)
Ricercar Consort, Philippe Pierlot
マニフィカトはラテン語典礼文を中心に組み立てられたキリスト教の祭礼歌/聖歌の一種で、どちらかというと明るい歓喜を歌い上げるポジティブな内容が多く、メンデルスゾーンなども同名の曲を書いている。このBWV243も大規模、かつ明瞭に歓喜のテキストを歌い上げるという賛美歌的作品で、ソプラノ2+コントラルト+テノール+バスの歌唱隊に当時の作品としては大規模な古楽アンサンブルがジョインしている。
一方のト短調ミサはしっとりとした静謐感を基調とした祈祷の曲であり、優しさと慈しみに満ちた美しい旋律と直進的で明確な和声が印象的だ。その後の時代の大規模ミサやレクイエムとは異なって最小構成のアンサンブルで紡がれるこの作品は華美な装飾/演出を極限まで削ぎ落としたシンプル化の極致を地で行く名作と言える。
ピエルロ/リチェルカーレ・コンソートの躍動的で明晰な解釈/演奏はブリュッヘン/18世紀オーケストラの僅かな翳りを纏った重厚で本格的なバッハ演奏とは路線が違う。軽やかだけれど精緻さを失わず、さりとてちゃらちゃらとした享楽的バロックとは無縁、そして深遠な到達点を目指しているかの崇高さも随所に感じられるなかなか気鋭の指揮者/古楽オケだ。
二つの歌唱作品を通してキーとなっているのは切々と、かつ朗々と歌い上げるコントラルト声域なのだが、実はこのCDで当該声域を担当しているのは男声アルトのカルロス・メナという人物。男子の高めの声域というとファルセットによるカウンター・テナーと一般的にはされているが、彼のこの声はファルセットではなく、そのままアルト帯域を受け持っている様だ。女声コントラルトよりは明らかに線が太く、そして声量も多い。
和声とテキストがどこまで美しくバランスするのか、という究極のテーマがこの二つの作品解釈に課せられていると推察されるが、このいずれの演奏もその課題に対する回答をきちんと出していると判断できる素晴らしい出来映えだ。リチェルカーレの面々が弾くバロックVnやVa、Vc、フラウト・トラベルソ、バロック・オーボエなど、器楽的な完成度はもとより楽器の音色自体とその響きが何とも憂愁に満ちていて良い。
途中挿入されているオルガンの演奏も申し分のない完璧な演奏で、とても瞑想的でありながら他方闊達さも感じられる素晴らしい出来映えだと思う。
(録音評)
MIRARE、MIR102、通常CD+DVD。録音は2009年4月、l'église du Bouclier de Strasbourg ・・ストラスブールの聖ブクリエ教会の礼拝堂。音質はMIRARE伝統のピラミッドバランスで素晴らしい描写力を誇る。各パートが自然な音場の中にさりげなく精緻に並べられた構図はいつものMIRAREの円熟した技法そのものだ。
DVDには興味深いシーンがいっぱい出てくる。ミキサーとプロデューサーが指揮者やメンバーと話し合って、音像の定位の大きさは具合がよいか、声楽パートの明瞭度、大きさは問題ないか、音場空間が広すぎないか狭すぎないか、左右に拡がりすぎではないか、残響が多すぎないか少なすぎないか・・、など、事細かな確認をしつつセッションを録り進めていくのである。MIRAREの品質が常に高次元でバランスしているのが良く分かる現場映像である。DVDの音声自体は16bit LPCMだがモノラル音声。あまり書くとネタバレになるのでこれくらいにしておく。
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