2010年 04月 26日
Chopin: Complete Waltzes@Alice Sara Ott |
DGの年末の輸入新譜で、今をときめくアリス=紗良・オットの二枚目ということになる。予測通りショパンのワルツ全集だった。KK IV系列(クリスティナ・コビラインスカによる作品番号)が付いた遺作まで含んだ力作といえるだろうか。

http://www.hmv.co.jp/product/detail/3708652
国内盤はこちら
(ボーナストラック=ノクターン#20付き
ジャケ写真は国内撮影、その他特典多し)
↓

ショパン:ワルツ全集
1. 『華麗なる大円舞曲』変ホ長調 作品18
2. ワルツ 変イ長調 作品34の1
3. ワルツ イ短調 作品34の2
4. ワルツ ヘ長調 作品34の3
5. ワルツ 変イ長調 作品42
6. ワルツ 変ニ長調 作品64の1
7. ワルツ 嬰ハ短調 作品64の2
8. ワルツ 変イ長調 作品64の3
9. ワルツ 変イ長調 作品69の1遺作
10. ワルツ ロ短調 作品69の2遺作
11. ワルツ 変ト長調 作品70の1遺作
12. ワルツ ヘ短調 作品70の2 遺作
13. ワルツ 変ニ長調 作品70の3 遺作
14. ワルツ 変イ長調 遺作 KK IVa-13
15. ワルツ 変ホ長調 遺作 KK IVb-10
16. ワルツ 変ホ長調 遺作 KK IVa-14
17. ワルツ ホ長調 遺作 KK IVa-12
18. ワルツ ホ短調 遺作 KK IVa-15
19. ワルツ イ短調 遺作 KK IVb-11
アリス=紗良・オット(ピアノ)
録音時期:2009年8月
録音場所:ベルリン、テルデックス・スタジオ
録音方式:デジタル(セッション)
前作のデビュー盤はリストの超絶技巧と非常にチャレンジングだったのだが、今回は日本公演でも好んで取り上げていた得意のショパン・ワルツ、それも全集だ。まず、第一印象だが、非常に綺麗な調律を施されたスタインウェイであり、こんなにも整っていてしかも奏者の特徴に合わせた音色を作れるとは一種の驚愕を覚える。こんな調律師がいるんだ・・、と、まずは感心ひとしお。
このアルバムの主題は、Finding the true "Smell" of Chopin's Waltzes とある。なるほど・・。で、演奏だが、作曲当初のショパンの心情と薫りを慮るという趣向とすればクエスチョンマークを付けざるを得ない。これはオットの独自かつこの到達年齢時点で可能な限りのロマンチシズムの実験的試験的解釈と言わざるを得ないだろう。
強奏部の明瞭な和音やオクターブ打鍵、および弾ける様なスケールは見事なブリリアンスで今日的なテクニックと言えるし、何よりピアノ自体の音が美しくて歪感が皆無なのは傑出している。反面、弱音部や緩徐部のディテールが判然とせず実にモゴモゴなのだ。ショパンの場合はワルツに限らず弱音部の強靱なコントロールが肝となる。巧い演奏の場合、弱音部になればなるほど透徹され明瞭さを増すパッセージが印象に強く残るのである。そこがピアノを学ぶ多くの人たちにとっての永年のそして永遠の命題なのだと改めて納得させられた。
ワルツの巧い若めの人と言えばフリッターの数曲が強く印象に残る。昨今では、このアルバムの使用楽器とは趣を大きく違えたエラール製フォルテピアノによるこの演奏が大きく突出していて到底忘れることが出来ない衝撃だった。オットのこの演奏が劣っているかというとそうではないだろうが、やはりショパン演奏/録音は数多あって、マーケットで戦って行くにはなかなかに難しい分野ではある。
一番聴き応えがあって、そして「そういう心境だったのかも、ショパンは・・」と思わされたのは唯一、最終トラックのワルツ・イ短調(遺作 KK IVb-11)だろうか。
(録音評)
DG、4778095、通常CD。トーンマイスターはRainer Maillardで前作と同じ。テルデックス・スタジオの美点を上手く引き出した割とまとまりの良い録音だ。ピアノの調律が傑出しているのは前述の通りだが、録音も破綻無く美しくまとめている。但し、テルデックスでは普通はあり得ない広大なサウンドステージが形成されているのはやりすぎだ。ピアノ独奏のスタジオ録音を敢えてステージ(ホール)録音に似せる必要性は殆ど感じないのだが。
1日1回、ここをポチっとクリック ! お願いします。

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(ボーナストラック=ノクターン#20付き
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ショパン:ワルツ全集
1. 『華麗なる大円舞曲』変ホ長調 作品18
2. ワルツ 変イ長調 作品34の1
3. ワルツ イ短調 作品34の2
4. ワルツ ヘ長調 作品34の3
5. ワルツ 変イ長調 作品42
6. ワルツ 変ニ長調 作品64の1
7. ワルツ 嬰ハ短調 作品64の2
8. ワルツ 変イ長調 作品64の3
9. ワルツ 変イ長調 作品69の1遺作
10. ワルツ ロ短調 作品69の2遺作
11. ワルツ 変ト長調 作品70の1遺作
12. ワルツ ヘ短調 作品70の2 遺作
13. ワルツ 変ニ長調 作品70の3 遺作
14. ワルツ 変イ長調 遺作 KK IVa-13
15. ワルツ 変ホ長調 遺作 KK IVb-10
16. ワルツ 変ホ長調 遺作 KK IVa-14
17. ワルツ ホ長調 遺作 KK IVa-12
18. ワルツ ホ短調 遺作 KK IVa-15
19. ワルツ イ短調 遺作 KK IVb-11
アリス=紗良・オット(ピアノ)
録音時期:2009年8月
録音場所:ベルリン、テルデックス・スタジオ
録音方式:デジタル(セッション)
前作のデビュー盤はリストの超絶技巧と非常にチャレンジングだったのだが、今回は日本公演でも好んで取り上げていた得意のショパン・ワルツ、それも全集だ。まず、第一印象だが、非常に綺麗な調律を施されたスタインウェイであり、こんなにも整っていてしかも奏者の特徴に合わせた音色を作れるとは一種の驚愕を覚える。こんな調律師がいるんだ・・、と、まずは感心ひとしお。
このアルバムの主題は、Finding the true "Smell" of Chopin's Waltzes とある。なるほど・・。で、演奏だが、作曲当初のショパンの心情と薫りを慮るという趣向とすればクエスチョンマークを付けざるを得ない。これはオットの独自かつこの到達年齢時点で可能な限りのロマンチシズムの実験的試験的解釈と言わざるを得ないだろう。
強奏部の明瞭な和音やオクターブ打鍵、および弾ける様なスケールは見事なブリリアンスで今日的なテクニックと言えるし、何よりピアノ自体の音が美しくて歪感が皆無なのは傑出している。反面、弱音部や緩徐部のディテールが判然とせず実にモゴモゴなのだ。ショパンの場合はワルツに限らず弱音部の強靱なコントロールが肝となる。巧い演奏の場合、弱音部になればなるほど透徹され明瞭さを増すパッセージが印象に強く残るのである。そこがピアノを学ぶ多くの人たちにとっての永年のそして永遠の命題なのだと改めて納得させられた。
ワルツの巧い若めの人と言えばフリッターの数曲が強く印象に残る。昨今では、このアルバムの使用楽器とは趣を大きく違えたエラール製フォルテピアノによるこの演奏が大きく突出していて到底忘れることが出来ない衝撃だった。オットのこの演奏が劣っているかというとそうではないだろうが、やはりショパン演奏/録音は数多あって、マーケットで戦って行くにはなかなかに難しい分野ではある。
一番聴き応えがあって、そして「そういう心境だったのかも、ショパンは・・」と思わされたのは唯一、最終トラックのワルツ・イ短調(遺作 KK IVb-11)だろうか。
(録音評)
DG、4778095、通常CD。トーンマイスターはRainer Maillardで前作と同じ。テルデックス・スタジオの美点を上手く引き出した割とまとまりの良い録音だ。ピアノの調律が傑出しているのは前述の通りだが、録音も破綻無く美しくまとめている。但し、テルデックスでは普通はあり得ない広大なサウンドステージが形成されているのはやりすぎだ。ピアノ独奏のスタジオ録音を敢えてステージ(ホール)録音に似せる必要性は殆ど感じないのだが。
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by primex64
| 2010-04-26 22:25
| Solo - Pf
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