Prokofiev: P-Con#2,3, Sonata#2@F.Kempf,Litton/Bergen PO. |
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プロコフィエフ:
・ピアノ協奏曲第2番ト短調 Op.16
・ピアノ協奏曲第3番ハ長調 Op.26
・ピアノ・ソナタ第2番ニ短調 Op.14
フレディ・ケンプ(ピアノ)
ベルゲン・フィルハーモニー
アンドリュー・リットン(指揮)
プロコのPコンはいずれも解釈の難しい前衛的な作品でありながら、いつ聴いても新たな鮮度や爽やかさがあって聴き飽きない。アルゲリッチやキーシンの古典的名作も良いのだがフレディ・ケンプのこのBIS新譜はなかなかに鮮烈だ。
ケンプの録音では展覧会の絵が光っていたが、このプロコもかなりの線を行く。高速パッセージが基調となっているのは前作と同様だが、そこに連続的・衝撃的なタッチが加わり聴き手の耳をグリップする。音色自体はタイトで引き締まったメタリックな鈍色だが、渋い輝きを放散する箇所も多々ある。解釈が難しいこれらの曲を、ドライでありながらメロゥなやるせなさを織り交ぜながら実に巧みにリードして行く。とはいうものの、細部の描き込みを執拗に繰り返すような偏執狂的なメロゥさではない点が好感度大、要するに必要以上に聴き手に媚びない、ある種男性的な突き放し方なのだ。
真ん中に配されたソナタは音数が多くて堂々たる弾きっぷり。ソ連的な陰鬱な和声に拍子が一部破綻したような不安定な旋律と対旋律が交錯してショスタコにも共通する独特の曲想と音世界を現出する。間(ま)の取り方が絶妙であり消え入る音符の消失点を見据えたかのような空間デザインが素晴らしい名演だ。
最後のPコン3番は圧倒するオーケストレーションとケンプの凛々しいピアニズムが綯い交ぜに爆発する傑作だ。3楽章フィナーレの劇的で起伏に富んだプロコらしいパートに関しては昨今の同曲録音としては出色の出来映えだ。高揚しつつも夢遊する様なやるせなく美しい中間部を挟んで、急ぎ気味のケンプのピアノが鋼のように冷たく光る。オケの各パートの精密な音連携も完璧で特にパーカッション隊の高速リアルタイムなアタックは胸が空く快感だ。
(録音評)
BISレーベル、BISSA1820、SACDハイブリッド。録音は2008年7月、Nybrokajen 11、スウェーデン、ストックホルム(ソナタの方)、2008年8月、グリーグ・ホール、ノルウェイ、ベルゲン(Pコン)とある。機器はノイマン、RMEのA/D、Protools(ソナタ)、ヤマハ20R96デジタルミキサー(Pコン)、Pyramix DSDワークステーションという今風のラインナップ。
音質はいずれのトラックも先鋭なもので、特に両Pコンの空間の広さと奥行きは特筆ものだ。楽器の配置とバランス、定位も抜群で理想的な狙い方。特にPコン#3の方の低域の捉えられかたは異常とも言えるリニアリティで、グランカッサが鳴動する度に部屋の空気が激しく攪拌され、それがディレイして壁面に伝わり建家全部が微振動を起こし、これが恐怖を覚えるほどのリアルさなのだ。
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