Berg, Beethoven: Vn-Con@Arabella Steinbacher,Andris Nelsons/WDR |
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・ベルク:ヴァイオリン協奏曲
・ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 op.61
アラベラ・美歩・シュタインバッハー(ヴァイオリン)
西部ドイツ放送・ケルン放送交響楽団
(WDR Sinfonieorchester Köln)
アンドリス・ネルソンス(指揮)
まず、WDRはさすがの高性能オケであると言うこととネルソンズというこの若手指揮者の高速かつ贅肉を削ぎ落とした精悍なリードは非常に好感できる。現代指揮者の中には復古調のポリシーを持った若手もいるようであるがこのネルソンズは典型的な現代っこ指揮者と言えよう。才能に溢れているとは素晴らしいことである。
それに加えてシュタインバッハーの瑞々しくも淡麗辛口のVnがあまりに鮮烈だ。この若竹の様な屈託のないVnはヒラリー・ハーンがデビューした時に覚えた一種の目眩のようなものを再度思い起こさせてくれると言っても過言ではない。いやはや、こういう人物が現れてくることは誠に喜ばしく、女流Vnソリストのマーケットはこれから先もずっと潤沢であり続けるのであろう。
アルバン・ベルクは解釈が難しく情感の入れどころに苦慮する難曲であるが、実に自然かつ勇壮、かと思えば静謐な瞑想ありととても闊達で瑞々しい演奏だ。芯がピシッと通った堂々たる演奏で聴くものの耳を掴んで離さない。
次のベトVnコンだが、一転してオーソドックスなこの作品をいとも簡単にさらりとまとめている。事大がかることなくフェザータッチで、それでいて野太いメロディーラインは聴いていてなぜか安心出来て、往年のヴィルトゥオーゾ的な貫禄さえも感じられるのである。ディテールの細やかさとハイスピードなE線から明らかにストラディバリと分かるのであるが、なぜかA線とG線がちょっと掠れたような感じで一種特異な渋さがあって、ちょっとガダニーニ的な趣なのだ。どうもこの音色は初めて聴く感じではなくどこか懐かしい。楽器はストラディバリ「Booth」という名器で日本音楽財団からの貸与品だ。この楽器の愛称には聞き覚えがある。そう・・、これはユリア・フィッシャーがペンタトーン時代に愛用していた楽器なのだ。そしてシュタインバッハーもペンタトーンへ移籍したと言うし、何か不思議な縁を感じる。
蛇足だが、シュタインバッハーはドイツ人の父親と日本人の母親を持つドイツ国籍のソリストであり、昨今になって日本公演も実現したようだ。日本側プロモーターがミドルネームを付した「アラベラ・美歩・シュタインバッハー」を用いているのは興行的な効果を狙ったものであろう。しかし、ライナーや公式Webサイトにおいてはそのミドルネームは一切現れない。
(録音評)
ORFEOレーベル、778091、CD-TEXT付きの通常CD。なんと高性能なCD-DAであろうか。こんな録音が普通に店頭に並んでいること自体尋常ではない事と思うのであるが、どうやらクラシック音楽CDの録音現場は着実に地殻変動を起こしているのだと思う。昨今の水準は飛躍的に高まっているのは事実のようだ。
深く重厚に奥へと展開するサウンドステージのど真ん中にポッっと屹立するシュタインバッハーの姿があまりにリアルでゾクゾクする。ちょっと小さめにキリリと結ぶその音像は生コンサートの印象そのものであって過度な息遣いが適度に抑制されていることを除けば臨場感は満点である。アルバンベルクで多用される低域、超低域系楽器の吹きすさぶ風とVnの渋い嘶きはオーディオ的に見ても大いに楽しめるし、第一に演奏が素晴らしいことはなににも増して重要なポイントだ。
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