Holst: The Planets Op.32 Etc.@Paavo Jarvi/Cincinnati SO |
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3670852
国内盤はこちら↓
・ホルスト:組曲『惑星』作品32
・ブリテン:青少年のための管弦楽入門~パーセルの主題による変奏曲とフーガ作品34
シンシナティ交響楽団
パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)
父親ネーメの古風で事大がかった(=決して悪い意味で言っているのではない)オーソドックスな指揮とは対照的なパーヴォのタクトは切れ味鋭くそしてドライで端正な細密画を描く。元々は北欧系やフランス印象派を得意としているけれど、このホルストやブリテンなど素朴系統の英系をやらせるとちょっとどうなんだろうか? と思っていた。結果はホルストの方は予想した通りにまずまず、ブリテン(青少年-は再発カップリングらしいが・・)は抜群ということだ。
ホルストの惑星は規模の大きな写実的・実写的(勿論、宇宙とはどういった光景を伴った場所なのかが解明されない時代に作曲されているのでおかしな言い回しだ・・)な巨大スペクタクルであることは今更論を待たないわけであるが、パーヴォのバトンは少々慎重に過ぎる気がするのだ。譜読みとしては破綻のない折り目正しい正攻法で、演奏にも非の打ち所はないが盛り上がりと浮遊感の演出においては成功しているとは言えないだろう。ただ、現代における惑星としてのスタンダードとしてはこれはこれであり得る解釈であり、この作品に対してベタベタな旅愁を求めない場合には案外すっきりしていて良いかも知れない。
個人的な話しだが、ブリテンの青少年のための管弦楽入門に関しては幼少期から少年期に掛けて思い出の深い作品である。この作品との出逢いは2度あった。一度目は小学校高学年で参加していたブラスバンドの発表会用作品として吹奏楽版の抜粋を取り上げられたこと。自分はコルネット担当であった。重々しくてどこか勇気を掻き立てられるパーセルの主題が好きで同じフレーズを何度も何度も練習したものだ。二度目の出会いは、地元アマチュアの非常設フルオケへトランペット担当として招集された高校一年。この時はオケ版全曲をやりあげたが、終わった後の達成感は非常に大きかった。ご存知のようにB♭管のコルネットとフリューゲルホルンは同じくB♭管のトランペットと音域が全く同じでありマウスピース形状も同じということで互換性が高いのである。細かなことを言わなければフレンチホルンやメロフォンも行けてしまうのである。
ということもあり、この作品をCDで聴く時はある種のノスタルジーとドキドキする期待感を持ってしまうのだ。このパーヴォの演奏はひとことで言うと素晴らしい。堂々としていてたゆたうような安定した低域および打楽器隊の上層にVcから上の弦楽4部をくっきりと配置した明晰な解釈でとても正攻法。パーセルの主題が徐々に崩されて変奏部を重ねるごとに乗りが良くなっていき、シンシナティSOの高性能ぶりが徐々に姿を現してくる。この辺に関してはカンゼル指揮の一連のポップス・シリーズと共通したアップテンポで破綻のない超絶技となっており、聴いていて非常に楽しい。
(録音評)
TELARC CD80743、通常CD。録音は2008年11月23-24日(ホルスト)、2006年1月22-23日(ブリテン)、場所はシンシナティのミュージック・ホール。テラークお得意のDSD録音。音質は超が付くくらいの高音質である。音的には惑星の方が洗練された現代サウンドであるがブリテンの方のリアルで少々荒れたステージ展開も凄く、グランカッサの大嵐がこれでもか?! と、てんこ盛りで入っていて、ウーファーやサブウーファーの動作点検にはうってつけだ。演奏(=特にブリテン)も良く、音質も非常に良く、高音質音楽ファンにはお勧めの一枚。
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