J.S.Bach: The Well-Tempered Clavier, Book 1@Pollini |
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・J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻 BWV846-869
マウリツィオ・ポリーニ(ピアノ)
ポリーニはその出自がショパン・コンクール優勝という印象が強烈すぎて永らくは中~後期ロマン派専門のピアニストだとのレッテルを貼ってきたがここ晩年に入ってからはシューベルトやバッハ、モーツァルトなども積極的に録音してきた。そして、ここへ来てバッハを初録音、それも平均律だそうで、果たしてどんな出来映えなのだろうか?
なかなかに静かで求道的な平均律で、ロマン派作品を得意としてきたポリーニの演奏としては意表を突く普通で淡々としたものだった。とはいうもののヴィルトゥオーゾとしての側面がまるっきり消し切れているかというとそうではなく、例えば転調を伴う3声フーガ・BWV853での高速な鍵盤捌きは常人では無理な技法と言え、流石と言わざるを得ない箇所は所々見られる。そういった職人技に近い部分が垣間見えることを除けばアゴーギクもデュナーミクもごく控えめで、速度的にも中庸+α程度を保った律儀かつレイショナルな解釈だ。
他のショパン作品などでは当たり前のロマン派的解釈による感情表出は殆ど見られないが、例外的に2枚目の16トラック目以降、特にBWV866(3声フーガ)変ロ長調 、BWV867(5声フーガ)変ロ短調あたりではなにかこうこみ上げてくるものがあるというか、ポリーニがなにかを訴求して懸命に弾きながら語りかけてくるのが強く感じられるパートだ。
ロマン派ピアニストがその集大成としてか、何故かバッハへ回帰していく例は幾つかあって、それについてはシフのパルティータのところでも書いたと思う。このポリーニの平均律もまた、そういった中にあって産まれた秀作の一つと言って良いだろう。
(録音評)
DGのユーロ輸入盤、4778078、通常CD。DGのここのところの新譜の音質は数年前とは大きく変わってきていて、この盤も平たく言えばその範疇に入る。高域のプレゼンス強調が皆無で、ちょっと渋く沈み込んだような音調なのだが若干、高域プレゼンスが欠落しているように感じられるという具合なのだ。3~4年前までのソニーBMGの通常CD録音と似通った地味でデッドな音質と言えようか。
ピアノ調製にはAngelo Fabbriniの名がクレジットされている。このまろび出る音は恐らくは別製ベーゼンドルファーだろう。録音はミュンヘンのヘルクレスザール、トーンマイスターはKlaus Heimannとある。ピアノの定位は判然とはせず、音はバッフル全面から散乱してリスナーを包み込むような音作りである。
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