Schubert: Winterreise D911@Mark Padmore,Paul Lewis |
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3696844
・シューベルト:歌曲集『冬の旅』全曲D911
おやすみ
風見の旗
凍った涙
かじかみ
菩提樹
溢れる涙
川の上で
回想
鬼火
憩い
春の夢
孤独
郵便馬車
霜おく頭
からす
最後の希望
村で
あらしの朝
幻覚
道しるべ
宿屋
勇気
幻の太陽
辻音楽師
マーク・パドモア(テノール)
ポール・ルイス(スタインウェイ・ピアノ)
冬の旅の歌い手はバリトンが良いのか、はたまたテノールが良いのか・・・? それは永遠に葛藤する命題だ。個人的には野太く哀愁の漂うバリトンで、例えば伝統的にはディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ、最近でいえばマティアス・ゲルネの冬の旅などは非常に好みではある。
パドモアの歌う冬の旅は暗鬱とは言い切れない、敢えて言うなら別離の後には必ずや新しい出逢いが待っていることを予見させるようなポジティブな歌であって絶望と自暴自棄の淵へ蹴落とされるような救い無き世界ではない。それは軽い歌声と質量感の少ない声帯から生み出されるベルベット・ボイスによるものなのかも知れないが、元々はシューベルトが楽天的性格ゆえか、歌詞を読んでも決して悲愴的ではなくて所々暗喩で揶揄を挿入しつつ淡々と綴っている歌曲集なのだから、この方が寧ろナチュラルな解釈なのかも知れない。リンデンバウム(日本では「菩提樹」として名高い)を聴けば分かるが、とても明るくてフェザータッチな歌い手なのである。
(録音評)
HarmoniaMundi USA、HMU907484、このレーベルとしては珍しく通常CDだが、実はSACDハイブリッドも並行リリースされている可能性がある。がっかりする可能性があるので調べてはいないが・・。録音は2008年11、12月、場所はロンドン・Air Studio, Lyndhurst Hall、プロデューサーは例によってRobina G.Youngとある。ピアノがメーカーが特別に調製・準備したスタインウェイのコンサート・グランドだけあって、フォルテピアノなどの規模感とは段違いのダイナミックレンジを誇る伴奏だ。音質は極めて現代的で静寂、漆黒のバックグラウンドにパドモアが屹立し、そしてポール・ルイスが揺るぎない伴奏で支えている。声もピアノも完璧に近い捉え方がされており素晴らしい出来映え。HarmoniaMundi USAらしい高解像度でありながら過度に突出したエッジは微塵も感じられない大人のサウンド。
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