Schubert: Arpeggione Sonata@Wispelwey, Giacometti |
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シューベルト:
・二重奏曲(ソナタ)イ長調D.574(ウィスペルウェイ編)
・アルペジョーネ・ソナタ イ短調D.821
・幻想曲ハ長調D.934(ウィスペルウェイ編)
ピーター・ウィスペルウェイ(チェロ/グァダニーニ1760)
パオロ・ジャコメッティ(フォルテピアノ)
確かに鬼才と言われるだけの事はある呪術的な節回しと歌心は独特なものがある。それとジャコメッティの超絶的で軽やかな伴奏はウィスペルウェイの軽妙洒脱な弦捌き、および古色蒼然とした枯れた音調と非常にマッチしている。それはそのはずで、ビンテージのガダニーニの音に合わせるべく特別なガット弦をフォルテピアノに張ったという希有な演奏だ。
二重奏曲の掛け合いは手に汗握るという展開ではないものの互いの旋律の出し入れが巧妙で息が合っている。アルペジオーネ・ソナタは現代調のドライで贅肉を削ぎ落としたような堂々とした解釈・演奏ではなく、サロンの隅でどこか哀愁を漂わせながらポロンポロンと弾いている風情がある。ウィスペルウェイのチェロはなんとメランコリックな響きなのか・・。一風変わった解釈で、ゆったりとしていて情感の襞が深く、そして暗鬱に傾きすぎない印象深い演奏だと思う。
ウィスペルウェイ自身が編曲したという幻想曲もまたビンテージ楽器の特徴を活かした掠れながら大きく上下動を繰り返す情感こもった演奏。アインザッツよりかはリリースに力点を置いた、つまり消え入り端、休符へ向かう瞬間瞬間がはっとするほど美しい演出だ。余談だが、この第三楽章アンダンティーノ冒頭の主題の頭3小節はモーツァルトK.331(=Pソナタだが・・)の第一楽章再現部の第一主題と殆ど同じ旋律&和声であり、第1変奏は同じくK.331の提示部第2変奏と非常によく似ている。他人の空似(空耳アワー?)かと思われるのだが、シューベルトはモーツァルトの楽曲、特に独奏や室内楽に傾倒していたこともあって主題を拝借した可能性は非常に大きいと、昔から個人的には思っている。
ピリオド・アプローチという枠を越えたアンシェント楽器によるコンパクトなシューベルトであり、趣という点、それと独特の鄙びたプレゼンスという点においては異色のアルバムに仕上がっている。
(録音評)
ONYXレーベル、ONYX4046、CD-TEXT付き通常CD。録音は2009年7月7-9日、場所はオランダ、アイントホーフェン、フリッツ・フィリップス音楽センターとある。マイクはショップスとB&K、録音機材はPyramixとある。殆どワンポイントに近い明晰で曇りのない優秀録音。チェロの定位は明確で中央前より、フォルテピアノはちょっと後ろで控えめな音像を結ぶ。アンビエント成分が多く、アンシェント楽器が放つ多彩な楽音と付帯ノイズを克明に拾い上げている。
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