Boulez: Ravel Works - 1 |
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CD1
ラヴェル:
・古風なメヌエット(録音時期:1974年)
・ラ・ヴァルス(録音時期:1974年)
・『ダフニスとクロエ』全曲(録音時期:1975年)
カメラータ・シンガーズ
ニューヨーク・フィルハーモニック
ピエール・ブーレーズ(指揮)
CD2
・『シェエラザード』序曲(録音時期:1976年)
・スペイン狂詩曲(録音時期:1970年)
・高雅にして感傷的なワルツ(録音時期:1973年)
・『マ・メール・ロワ』全曲(録音時期:1974年)
ニューヨーク・フィルハーモニック
ピエール・ブーレーズ(指揮)
クリーヴランド管弦楽団
ピエール・ブーレーズ(指揮)
若い頃のブーレーズならばパリの香り高く雅(みやび)な演奏だろうと想像しつつ針を降ろした。遠い昔に聴いていたLPレコードの感想はとうの昔にけし飛んでいて覚えていないのだ。あの頃はバーンスタイン/NYPOに凝っている時期で、ブーレーズなんてその助手的な立場だ・・、位にしか思っていなかったからだろうか。
一枚目の最初の曲は今も昔もブーレーズの嗜好には向いていないと思われる作風の曲で、やはりドライであっさりすっきりした演奏だ。ヴァルスは悪くはないが生硬な感じは否めない。それがダフクロが始まるやいなやまるで別人別オケに交代したかの躍動感で驚いた。恐らくこの演奏はLPレコードでも聴いたことはない。LPならばダフクロだけで2枚組の都合3面を使うことになったであろう。これに限らずLP時代のクラシック愛好家は盤を頻繁に掛け替えることを強いられたものだが、こういった長編を鑑賞する時にはCDとはつくづく便利な媒体だと感じる。
閑話休題。ダフクロのような効果音とも情景描写ともつかないような霞たなびく表現方式に関し、ブーレーズは若年~壮年期にかけて既に完成された解釈と感性を持っていたようで、瑞々しくストレートなタクト捌きが小気味よい。NYPOのかつての鮮烈なパワーがここで鮮やかに聴き取れてちょっと感動もの。
2枚目のシェエラザードはラヴェルの方の作品で、同名のあの傑作とは違う曲。こういった前衛的な旋律運びになるとブーレーズの独壇場と言えるかも知れない。細やかかつ神経質なほど細部に拘ったタクトだ。次のスペイン狂詩曲は昔のクリーヴランド。サウンドでとてもゴージャスでご機嫌な出来映え。
高雅で感傷的なワルツはNYPOのもので少々ソリッドだがブラスが柔らかく太いので重層的でよろしい。ブーレーズは10年ほど前にクリーヴランドと同曲を録っているが、こちらの方がやはり年齢のためか急ぎ気味でタイトな表現だ。マ・メール・ロワはダフクロと同様に唸らされる表現であり、昨今のDG録音よりも老獪さはないものの鮮烈度は上だ。
しかし、ダフクロとマ・メール・ロワがバンドルされた2枚組でも上等というのに更に2枚加わっていて超お買い得。かつてのNYPO時代のブーレーズがアナログにこれだけの演奏群を残していたのは嬉しい限りだし、当時のCBS音源を引っ張り出してきて徹底リマスタしたソニーも気が効いている。
(続く)
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