2009年 12月 29日
Händel: Arias@Sandrine Piau |
今年は後半戦が多忙となり、近頃ではとても音楽を聴いていられる状態ではなくなってしまった。しかし、そんななか寸暇を惜しんで楽しんでいるのがこのCD。naiveの秋の新譜で、当代切っての美声ソプラノ、サンドリーヌ・ピオーが選曲・構成したという極上のアリア集だ。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3655260
Sandrine Piau: Between Heaven & Earth (Handel Arias)
1. La Resurrezione | Aria ‘Disserratevi, o porte d’Averno’
2. Theodora | Recitative ‘O Thou bright Sun!’
3. Theodora | Aria ‘With darkness deep as is my woe'
4. A song for St Cecilia’s day | Aria ‘What passion cannot music raise and quell’
5. Messiah | Aria ‘Rejoice greatly’
6. Theodora | Largo
7. Alexander Balus | Aria ‘O take me from this hateful light’
8. Alexander Balus | Recitative ‘Forgive, O queen’
9. Alexander Balus | Accompagnato ‘Calm thou my soul’
10. Alexander Balus | Aria ‘Convey me to some peaceful shore’
11. Joseph and his brethren | Recitative ‘Art thou not Zaphnath? Is not Egyptsav’d?’
12. Joseph and his brethren | Aria ‘Prophetic raptures swell my breast’
13. L’allegro, Il penseroso, ed Il moderato | Duet ‘As steals the morn upon the night’
14. Solomon | Symphony (‘The Arrival of the Queen of Sheba')
15. L’allegro, il penseroso, ed il moderato Accompagnato | 'First and chief on golden wing’
16. L’allegro, il penseroso, ed il moderato Accompagnato | Aria 'Sweet bird'
17. Concerto Grosso in B Flat Major, op.3 no.2 | Largo
18. Samson | Aria ‘Let the bright seraphims'
19. Il Trionfo del Tempo e del Disinganno | Accompagnato ‘Pure del cielo’
20. Il Trionfo del Tempo e del Disinganno | Aria ‘Tu del Ciel ministro eletto'
Sandrine Piau (Sop) サンドリーヌ・ピオー
Topi Lehtippu (Tenor) トピ・レーティプー
Accademia Bizantina, Stefano Montanari(Cond)
アカデミア・ビザンチーナ、ステファノ・モンタナーリ(指揮)
ピオーは非常に美しい声の持ち主であり、かつ天才的超絶技巧の発声術を使いこなすソプラノだ。今まで聴いてきたアルバムでは、例えばガイヤールのボッケリーニ/ファンダンゴ、アクセンタスのブラームス/ドイツレクイエムやフォーレ/レクイエムなどでソリストを務めていて、その傑出したパフォーマンスには目を、いや耳を奪われてしまう。
ここに収録されているヘンデルの曲は大部分が英語歌詞だが、最初と最後はイタリア語、そして、8トラックと13トラックにはテナーが重唱としてはいる以外はアカデミア・ビザンチーノをバックとしたピオー独唱となっている。
冒頭1トラック目、「開くことだ、地獄の門よ」(~オラトリオ「復活」HWV 47 )からぶっ飛んでしまう。この小編成バロック・オケの敏捷な先導に伍してのっけからアクセル全開で激しいアップダウンを付けて歌い込んでくる。
5トラック目、メサイアのアリア「リジョイス・グレートリー~」は圧巻。細くて純度の高い声質なのに深みのある詠唱となっているのは貫禄だ。
白眉は12トラック、アリア「預言者の言葉が私の胸を狂喜させる」(「ヨセフとその兄弟」HWV59)で、8分を超える長いアリアを超絶的な音程維持能力で、しかも超高速パッセージばかりのこの難曲を難なく歌いきってしまう。続く13トラックはこのアルバムで唯一、テナーと本格デュエットする曲なのだが、一転してしっとり艶っぽい詠唱にうっとりさせられてしまう。テナーもまたメローで優しく包み込むような声質である。
度肝を抜かれるのは16トラックの「Sweet Bird」だ。この曲はオケをバックとした独奏フルートとソプラノの重唱(重奏)なのだが、途中でどちらがフルートでどちらが肉声だか判別が付かないほど渾然一体となったポリフォニーを形成するのだ。勿論、言葉があるパッセージには明確に分かるが、それでも長いフェルマータやスキャット風に伸ばす歌詞部分ではフルートと完全に溶け合って訳が分からない。この曲は、要は鳥の囀りを模したトリルを主体とした旋律が特徴となっているのだが、最後の方は本当に2羽の小鳥がステージに現れて飛び回っている雰囲気になる。恐るべし、ピオーのソプラノ・・。
(録音評)
naive OP30484、通常CD。録音は2008年12月、イタリアのThe Church of San Girolamo, Bagnacavalloとある。録音機材はマイク:DPA 4041,4003,Neumann,Schoeps、マイクアンプ:DMP HMA500,Millenia HV-3D、コンソール:SONY DMX-R100、録音編集機:Merging Technologies Pyramix。音質は目が覚める音と言えば間違いはないだろう。音色は正真naiveなのだが、プレイ・ボタンを押した瞬間から空気の鮮度が以前とは明らかに異なっている。音場の作り方はDSDと区別が付かない稠密で面接触かつ滑らかなもので、そして空間全体が薫る。これは新世代naiveと言って良いだろう。もう、ここまで来るとSACDの必要性は感じないほどだ。
(あとがき)
ここまでなかなか時間がとれないで来たが、年明けして暫くすると仕事の方も一段落する予定なのでまたピッチを従前に戻したいと思う。バックログが溜まりに溜まっているのでMusicArena Awards 2009は一月後半に選定・発表の予定。
※ 音楽日記は恐らくこれで今年最後となります。今年一年間のご愛顧に感謝致します。あくる年が皆様にとって素晴らしい年になりますよう祈念致しております。
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http://www.hmv.co.jp/product/detail/3655260
Sandrine Piau: Between Heaven & Earth (Handel Arias)
1. La Resurrezione | Aria ‘Disserratevi, o porte d’Averno’
2. Theodora | Recitative ‘O Thou bright Sun!’
3. Theodora | Aria ‘With darkness deep as is my woe'
4. A song for St Cecilia’s day | Aria ‘What passion cannot music raise and quell’
5. Messiah | Aria ‘Rejoice greatly’
6. Theodora | Largo
7. Alexander Balus | Aria ‘O take me from this hateful light’
8. Alexander Balus | Recitative ‘Forgive, O queen’
9. Alexander Balus | Accompagnato ‘Calm thou my soul’
10. Alexander Balus | Aria ‘Convey me to some peaceful shore’
11. Joseph and his brethren | Recitative ‘Art thou not Zaphnath? Is not Egyptsav’d?’
12. Joseph and his brethren | Aria ‘Prophetic raptures swell my breast’
13. L’allegro, Il penseroso, ed Il moderato | Duet ‘As steals the morn upon the night’
14. Solomon | Symphony (‘The Arrival of the Queen of Sheba')
15. L’allegro, il penseroso, ed il moderato Accompagnato | 'First and chief on golden wing’
16. L’allegro, il penseroso, ed il moderato Accompagnato | Aria 'Sweet bird'
17. Concerto Grosso in B Flat Major, op.3 no.2 | Largo
18. Samson | Aria ‘Let the bright seraphims'
19. Il Trionfo del Tempo e del Disinganno | Accompagnato ‘Pure del cielo’
20. Il Trionfo del Tempo e del Disinganno | Aria ‘Tu del Ciel ministro eletto'
Sandrine Piau (Sop) サンドリーヌ・ピオー
Topi Lehtippu (Tenor) トピ・レーティプー
Accademia Bizantina, Stefano Montanari(Cond)
アカデミア・ビザンチーナ、ステファノ・モンタナーリ(指揮)
ピオーは非常に美しい声の持ち主であり、かつ天才的超絶技巧の発声術を使いこなすソプラノだ。今まで聴いてきたアルバムでは、例えばガイヤールのボッケリーニ/ファンダンゴ、アクセンタスのブラームス/ドイツレクイエムやフォーレ/レクイエムなどでソリストを務めていて、その傑出したパフォーマンスには目を、いや耳を奪われてしまう。
ここに収録されているヘンデルの曲は大部分が英語歌詞だが、最初と最後はイタリア語、そして、8トラックと13トラックにはテナーが重唱としてはいる以外はアカデミア・ビザンチーノをバックとしたピオー独唱となっている。
冒頭1トラック目、「開くことだ、地獄の門よ」(~オラトリオ「復活」HWV 47 )からぶっ飛んでしまう。この小編成バロック・オケの敏捷な先導に伍してのっけからアクセル全開で激しいアップダウンを付けて歌い込んでくる。
5トラック目、メサイアのアリア「リジョイス・グレートリー~」は圧巻。細くて純度の高い声質なのに深みのある詠唱となっているのは貫禄だ。
白眉は12トラック、アリア「預言者の言葉が私の胸を狂喜させる」(「ヨセフとその兄弟」HWV59)で、8分を超える長いアリアを超絶的な音程維持能力で、しかも超高速パッセージばかりのこの難曲を難なく歌いきってしまう。続く13トラックはこのアルバムで唯一、テナーと本格デュエットする曲なのだが、一転してしっとり艶っぽい詠唱にうっとりさせられてしまう。テナーもまたメローで優しく包み込むような声質である。
度肝を抜かれるのは16トラックの「Sweet Bird」だ。この曲はオケをバックとした独奏フルートとソプラノの重唱(重奏)なのだが、途中でどちらがフルートでどちらが肉声だか判別が付かないほど渾然一体となったポリフォニーを形成するのだ。勿論、言葉があるパッセージには明確に分かるが、それでも長いフェルマータやスキャット風に伸ばす歌詞部分ではフルートと完全に溶け合って訳が分からない。この曲は、要は鳥の囀りを模したトリルを主体とした旋律が特徴となっているのだが、最後の方は本当に2羽の小鳥がステージに現れて飛び回っている雰囲気になる。恐るべし、ピオーのソプラノ・・。
(録音評)
naive OP30484、通常CD。録音は2008年12月、イタリアのThe Church of San Girolamo, Bagnacavalloとある。録音機材はマイク:DPA 4041,4003,Neumann,Schoeps、マイクアンプ:DMP HMA500,Millenia HV-3D、コンソール:SONY DMX-R100、録音編集機:Merging Technologies Pyramix。音質は目が覚める音と言えば間違いはないだろう。音色は正真naiveなのだが、プレイ・ボタンを押した瞬間から空気の鮮度が以前とは明らかに異なっている。音場の作り方はDSDと区別が付かない稠密で面接触かつ滑らかなもので、そして空間全体が薫る。これは新世代naiveと言って良いだろう。もう、ここまで来るとSACDの必要性は感じないほどだ。
(あとがき)
ここまでなかなか時間がとれないで来たが、年明けして暫くすると仕事の方も一段落する予定なのでまたピッチを従前に戻したいと思う。バックログが溜まりに溜まっているのでMusicArena Awards 2009は一月後半に選定・発表の予定。
※ 音楽日記は恐らくこれで今年最後となります。今年一年間のご愛顧に感謝致します。あくる年が皆様にとって素晴らしい年になりますよう祈念致しております。
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by primex64
| 2009-12-29 19:19
| Vocal
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