富山へ |
昼過ぎの便で羽田を発ったが、富山県地方も悪天候で、着陸出来ない場合には小松へ向かうか羽田へ引き返すという条件付きの出発だった。
富山空港は全国で最も貧弱な河川敷ジェット空港であり、着陸自動誘導電波のうちグライドスロープと呼ばれる進入角を示す波を出す施設が作れない。従ってパイロットが有視界で着陸を試みるのであるが、雨や雪、霧などで滑走路の誘導灯が視認できない場合には着陸は許可されないのだ。
羽田・富山便が冬季にたびたび欠航するのはそういった設備上の理由からだ。
時間が無くて昼食をとらずに羽田に向かった。天候調査で出発が遅れることが分かったのでこれ幸いと搭乗ゲート近くのANAショップでカツカレーを掻き込み、ちょっとだけホッとした。
随分と遅れて機内へと案内され離陸したのは定刻から30分以上経過した後だった。離陸してから旋回・上昇中には強い北風に煽られて相当に揺れたが、横田・八王子を過ぎて水平飛行に移ってからはつかの間の平穏が訪れ奇跡的に飲み物がサーブされた。松本市上空から立山連邦・黒部湖上空を越えて富山湾に進入、旋回して高度を下げながら一路富山空港を目指す。
窓外は厚い雲に覆われて夜のように暗く、しかも機体は錐揉み状態で激しく上下動を繰り返した。
機は強い北風による揚力を確保するため滑走路南側からの着陸を試みる。八尾(やつお)上空で180度旋回した頃の上下左右の揺れは最高潮に達し乗客の中には軽い悲鳴を上げる者もいた。
これほど揺れたフライトは過去にも例がないほどだった。風は強いが地表の視界は良好だったようで程なく着陸した。家族に出迎えてもらい実家へ向かう。富山の市街地は早くもライトアップ準備に入っており、街路樹たちは昼なのに高輝度LEDによる華やかな光を発していた。雨は小降りだが風は強く、関東地方よりも肌寒い感じだった。
帰京の日の富山県地方の天候は悪く、空港に着くと南風が強く吹いていた。それでも離陸には支障はなく定刻で出発。機内のテレビでは羽田までの飛行経路を案内していた。どういう訳か松本、上田を経由して羽田まで一気に南下することになっている。
滑走路北端までタキシングしてから南風に向かって離陸。
そのまま高度を上げてアルプス越えかと思ったが旋回して一旦北上し富山湾上空で北東へと進路を変える。機内の経路案内とは異なり通常通り新潟・福島上空を通って茨城県・大子のレーダーを経由するようだ。佐渡の辺りで気流は安定するかとも思ったのだがこの日の揺れも激しく収まる気配がない。
飲み物サービスが行われない旨、早々にアナウンスがされた。揺れる機内を足元がおぼつかないまま乗務員がキャンディーを配る。
窓外には筋雲の雲海が一面に拡がる。福島を掠めて機は徐々に高度を下げ、大子を過ぎてすぐに南西に機首を向けた。
厚い雲の中を降下する時の揺れは更に激しく、揺れが収まったのは霞ヶ浦が眼下に広がる辺りだった。
房総半島を挟み東京湾に夕日が映えて美しい。東京上空は雲が切れているようだった。木更津からアクアライン・海ほたるを跨いて羽田に着陸したのはほぼ定刻であった。
1日1回、ここをポチっとクリック ! お願いします。