Mahler: Sym#7@Mariss Jansons/BRSO |
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Mahler: Symphony No.7 in E minor
Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks
Mariss Jansons(Cond)
マラ7はなかなかに不可思議な曲で、指揮する方の解釈も聴く方の鑑賞もなかなかに難しい面がある曲。今まで数々のマーラー名演奏と言われるものが出現してきてはいるが、こと7番に関しては定番、いや定盤とされるものを絞り込んで選ぶのは難しい。
この演奏はヤンソンスらしさが前面、いや全面に出た怒濤のスペクタクルであり、RCO Liveの乗りをそのままバイエルンに持ち込んで来た様な演奏だ。マラ7は5楽章形式で変形された前後対称構造をしていて、楽譜上は急-緩-急-緩-急の形態を取る。真ん中にスケルツォを持ってきてその両側がいわゆる「夜の歌」だ。
ヤンソンスは譜面を更にデフォルメするかのように緩急だけではなく動-静-動-静-動の趣で構成していて、激しいところは笑ってしまうほど激烈、かつ高速でオケが破綻寸前まで悲鳴を上げさせているし、緩徐楽章では目一杯に糸を引くようにエモーショナルな情感でオケを鳴らしている。いわゆる夜の歌ではこのオケの美点である弦の艶消し感がたっぷりと楽しめる。終楽章のド派手さといったら前例がないくらいで、過度な疾駆感と絢爛豪華に重層化されたオーケストレーションがたっぷりと味わえる。全てのパートが怒濤のエネルギーを野放図に放散するのだ。
この解釈はこれで有りだと思うし、マラ7をここまで事大がかって演奏するケースは昨今では少ないのではないか。やはり流行なのはMTT/SFSOに見られるような透徹されたクールな解釈なのかも知れないがヤンソンスのこれはまるでその対極にあるリードと言って良い。前者をマーラーの芸術の再現と位置づけるなら後者はヤンソンスの芸能、と言えるかも知れない。これは決して悪く言っている訳ではなく彼一流のエンターテインメント性とオケ統率力のなせる技なのである。どこを振ってもヤンソンスの音になってしまうところが支配力の強さを物語っている。
(録音評)
BR KLASSIKレーベル、403571900101、SACDハイブリッド。2007年3月8~9日、München, The Philharmonie im Gasteig(ミュンヘン・ガスタイクのフィルハーモニー・ホール)でのライブ録音。
ガスタイクはムジークフェラインの様な甘ったるい残響ではなくタイトでクールな音場空間を作るホールだ。それが手に取るように丸ごと収録された優秀録音だ。例によって音色的には殆どカラーレーションがなく、そして刺激的な帯域も認められない完全フラットバランスでオケが俯瞰的に捉えられている。ブル7よりも数段クリアな音質であり、また超低域が笑ってしまうほど豊富に、しかも一切の遅延無しに含まれている。eAR1001の驚異のレギュレーション、そしてCS7.2のコヒーレント・ソース性能が遺憾なく発揮され、終楽章のトゥッティを迎える頃には部屋中にグランカッサの風が吹きすさぶ。
地味ながらオーディオ的快感を存分に噛み締めることができるハイブリッド盤だ。
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ところがこれでビビっと来たおかげでMTT/SFSO盤も「いいね~」となってきました。1枚で、1つのバージョンで諦めてはいけませんね。良いレーベルが出てきました