J.S.Bach: Partitas Nos.1-6 BWV825-830@András Schiff |
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J.S.バッハ:パルティータ全集
CD1
1.パルティータ第5番ト長調BWV.829
2.パルティータ第3番イ短調BWV.827
3.パルティータ第1番変ロ長調BWV.825
4.パルティータ第2番ハ短調BWV.826
CD2
1.パルティータ第4番ニ長調BWV.828
2.パルティータ第6番ホ短調BWV.830
アンドラーシュ・シフ(ピアノ)
このところ店頭には著名ピアニストによるバッハがいくつも並んでいて、どうしたことか? 今年はバッハ・イヤーだったか? という感じもするのだが違うようだ。関係ないと思うが今年のLFJのテーマはバッハだった。立て続けにバッハ作品がリリースされている状況については YoshimiさんのBlog: 気ままな生活に詳しい。
巨匠と言われる人たちが後年また最晩年になってバッハに回帰していくというのは稀な話しではない。ことこのパルティータに関してはアラウの未完の遺作がいまだに鮮烈に心に残っていて一種のトラウマとなっているのだが。
この二枚組は曲の配列がバッハ作品番号順になっていない。どうやら調性の順序で並べてあるようで、G→a→B♭→c→D→e と昇順になっている。順序が普通ではないがこの調性の順番で聴かされると確かに腑に落ちるところもある。
この演奏はひとことで言うと現代ピアノで弾くバッハとしてはある種の理想型を構築している。バッハのクラヴィーア曲を現代ピアノで弾くことの功罪に関してはゴルドベルグ変奏曲の記事などで何度も述べてはきたが、このシフの演奏はそういった議論を待たない洗練された域に達している数少ないピアノによるパルティータだ。
マルカート基調のノンレガート、ペダリング極小にして運指は高速かつ精密、デュナーミクを可能な限り控えスタッカートとテヌートの出し入れ(=アゴーギク)によって実現される強弱表現はまるでチェンバロ演奏を聴いているように求道的・瞑想的な展開でミニマル系に引き込まれるのと類似のトランス作用がもたらされる。さりとてシフ天性の色彩感と超絶技巧は所々顔を出していて、これをもって老成の域に達した、とは言えないようだ。
選択されたピアノは中型のグランドピアノらしく音調には派手さがなく、しっとりとした味わいでコンパクトなまとまりを見せている。なかなか良い演奏だ。
(録音評)
ECM New Series、4766991、通常CD、録音は少し前のライブで2007年9月21日、ノイマルクトとある。ECMの典型である透過度の高い澄み渡った音質だ。ホールはどこかの礼拝堂かどこかで残響が極めて豊かだ。シフのピアノはノンレガートなのにサスティン・ペダルを多用していると誤解をしそうなくらい持続音が長く響き渡る。ピアノの定位はオフでもオンでもなく中庸を行く。ピアノは通常のフルコンではないと思われ、ちょっと古風な響きを纏っている。優秀録音盤である。
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