2009年 09月 03日
The Art of CHIKASHI TANAKA@Chikashi Tanaka |
正月明けに我が国Vn界の重鎮・田中千香士が逝去したのは記憶に新しい。その後、夏になって若杉も亡くなっているし、今年はちょっと寂しい。キングレコードから若かりし日に録って残していた田中千香士の音源が追悼盤という形で世に出た。

http://www.hmv.co.jp/product/detail/3588633
田中千香士の芸術
CD1
・フォーレ:ヴァイオリン・ソナタ第1番イ長調op.13
・ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ ト短調
・ドビュッシー:レントより遅く
CD2
・タルティーニ:ヴァイオリン・ソナタ ト短調「悪魔のトリル」
・ドビュッシー:亜麻色の髪の乙女
・ドヴォルザーク:ユーモレスク
・リムスキイー=コルサコフ:くまんばちの飛行
・クライスラー:愛の喜び
・クライスラー:愛の悲しみ
・ドルドラ:思い出
・サラサーテ:サパテアードop.23
・ヴィエニャフスキ:伝説曲op.17
・マスネ:タイスの瞑想曲
田中千香士(ヴァイオリン)
近江康夫(ピアノ)CD1
寺島輝治(ピアノ)CD2
田中の略歴は他のサイトに詳しいのでここでは述べない。田中はフランス留学の後に帰国して京都市響のコンマスに就任、そしてその後はN響のコンマスに転ずる。このCDにはN響に移って4~5年経過した頃にキングレコード音羽スタジオで録られた音源が収められている。田中が30歳を過ぎたばかりの頃の録音と言うことになる。どういった経緯でN響コンマスが単独でレコードを吹き込んだ(古い言い方だが・・)のかは不明だが、今となっては貴重だ。
1枚目には近代フランスの3大ソナタのうち2つが並んでいて圧巻だ。なんとも瑞々しく朗々としたVnだろうか。フォーレだが、噎ぶように、また時に揺らめくように変幻自在に弦を捌いている。
姉の田中希代子もそうだったのだがフランス印象派の中でもサン=サーンス~フォーレ~ドビュッシーと続く系譜を随分と得意としていて、しかもこれらの作品に特徴的な旋法とアーティキュレーション表出は日本人離れしたところがある。時代が時代ならばヴィルトゥオーゾ・ソリストとして世界の舞台で大成功を収められたのではないか、と思わされる二つのソナタである。
田中は結局はオケ奏者としての道を歩みつつ慎ましいソロ活動の傍ら、弦楽合奏の発展をも志し、晩年は後進の指導へと身を投じた訳だが、その功績は大きく、江藤俊哉、海野義男とともに我が国のVn教育レベル向上のための真の功労者と言えよう。しかし、姉と同様、その本来的なソリストとしての才能を表舞台において大きく開花させることはなかった。
2枚目には著名Vn小品が並んでいて、曲目リストだけ眺めるとその辺のお嬢様Vn奏者のデビュー盤という感じがする。しかし、どれもが安定した技巧と豊かな曲想、鋭敏な感性に支えられた素晴らしい力作であることはすぐに分かるのだ。全編で細かくヴィブラートを塗(まぶ)しているあたりには時代の変遷を感じるわけだが、それでも40年近く前の録音とは思われない現代的でクール、かっちりした演奏だ。
これは大変に貴重な音源であり、田中希代子の一連の音源(これもキングレコード)と併せて大切に聴いていきたい盤である。
(録音評)
キングレコード、KICC786/7、通常CD。録音:1971年6月4日(DISC 1・・1) 、1971年5月28日(DISC 1・・2,3)、1970年7月22日(DISC 2・・1,6)、1970年7月29日(DISC 2・・2,8)、1970年7月12日(DISC 2・・3-5,7,9,10)、場所はキングレコード音羽スタジオ。明記はないが年代的にはアナログ録音だ。音質は現代最高峰のデジタル録音には劣るがモニター的なフラット基調で安心出来る出来上がりだ。ノイズが殆ど聞こえないことからドルビーAかdbxといったNRシステムで録られていたか、はたまたDSPなどによってリマスタ処理を行っているものと思われる。田中のVnはスタジオでのセッション録音らしい明晰な音像を正面中央に結ぶ。
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http://www.hmv.co.jp/product/detail/3588633
田中千香士の芸術
CD1
・フォーレ:ヴァイオリン・ソナタ第1番イ長調op.13
・ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ ト短調
・ドビュッシー:レントより遅く
CD2
・タルティーニ:ヴァイオリン・ソナタ ト短調「悪魔のトリル」
・ドビュッシー:亜麻色の髪の乙女
・ドヴォルザーク:ユーモレスク
・リムスキイー=コルサコフ:くまんばちの飛行
・クライスラー:愛の喜び
・クライスラー:愛の悲しみ
・ドルドラ:思い出
・サラサーテ:サパテアードop.23
・ヴィエニャフスキ:伝説曲op.17
・マスネ:タイスの瞑想曲
田中千香士(ヴァイオリン)
近江康夫(ピアノ)CD1
寺島輝治(ピアノ)CD2
田中の略歴は他のサイトに詳しいのでここでは述べない。田中はフランス留学の後に帰国して京都市響のコンマスに就任、そしてその後はN響のコンマスに転ずる。このCDにはN響に移って4~5年経過した頃にキングレコード音羽スタジオで録られた音源が収められている。田中が30歳を過ぎたばかりの頃の録音と言うことになる。どういった経緯でN響コンマスが単独でレコードを吹き込んだ(古い言い方だが・・)のかは不明だが、今となっては貴重だ。
1枚目には近代フランスの3大ソナタのうち2つが並んでいて圧巻だ。なんとも瑞々しく朗々としたVnだろうか。フォーレだが、噎ぶように、また時に揺らめくように変幻自在に弦を捌いている。
姉の田中希代子もそうだったのだがフランス印象派の中でもサン=サーンス~フォーレ~ドビュッシーと続く系譜を随分と得意としていて、しかもこれらの作品に特徴的な旋法とアーティキュレーション表出は日本人離れしたところがある。時代が時代ならばヴィルトゥオーゾ・ソリストとして世界の舞台で大成功を収められたのではないか、と思わされる二つのソナタである。
田中は結局はオケ奏者としての道を歩みつつ慎ましいソロ活動の傍ら、弦楽合奏の発展をも志し、晩年は後進の指導へと身を投じた訳だが、その功績は大きく、江藤俊哉、海野義男とともに我が国のVn教育レベル向上のための真の功労者と言えよう。しかし、姉と同様、その本来的なソリストとしての才能を表舞台において大きく開花させることはなかった。
2枚目には著名Vn小品が並んでいて、曲目リストだけ眺めるとその辺のお嬢様Vn奏者のデビュー盤という感じがする。しかし、どれもが安定した技巧と豊かな曲想、鋭敏な感性に支えられた素晴らしい力作であることはすぐに分かるのだ。全編で細かくヴィブラートを塗(まぶ)しているあたりには時代の変遷を感じるわけだが、それでも40年近く前の録音とは思われない現代的でクール、かっちりした演奏だ。
これは大変に貴重な音源であり、田中希代子の一連の音源(これもキングレコード)と併せて大切に聴いていきたい盤である。
(録音評)
キングレコード、KICC786/7、通常CD。録音:1971年6月4日(DISC 1・・1) 、1971年5月28日(DISC 1・・2,3)、1970年7月22日(DISC 2・・1,6)、1970年7月29日(DISC 2・・2,8)、1970年7月12日(DISC 2・・3-5,7,9,10)、場所はキングレコード音羽スタジオ。明記はないが年代的にはアナログ録音だ。音質は現代最高峰のデジタル録音には劣るがモニター的なフラット基調で安心出来る出来上がりだ。ノイズが殆ど聞こえないことからドルビーAかdbxといったNRシステムで録られていたか、はたまたDSPなどによってリマスタ処理を行っているものと思われる。田中のVnはスタジオでのセッション録音らしい明晰な音像を正面中央に結ぶ。

by primex64
| 2009-09-03 11:48
| Compilation
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