2009年 08月 24日
PRIMO@Mayuko Kamio |
いよいよ日本人ソリストの三人目は神尾真由子。レーベルはRCA Red Seal(SONY BMG Masterworks)で、これがCDデビュー盤と言うことらしい。一年ほど前のリリース。

http://www.hmv.co.jp/product/detail/2708491
DVD付きはこちら↓

神尾真由子/PRIMO(プリモ)
・フランツ・ワックスマン:カルメン幻想曲
・チャイコフスキー:ワルツ・スケルツォOp.34
・シマノフスキ:神話-3つの詩Op.30
・チャイコフスキー:瞑想曲Op.42-1~なつかしい土地の想い出Op.42 No.1
・ショーソン:詩曲Op.25
・ストラヴィンスキー:イタリア組曲
(バレエ「プルチネルラ」より作曲家自身&S.ドュシュキン編曲)
神尾真由子(ヴァイオリン)
ヴァディム・グラドゥコフ(ピアノ)
神尾真由子は2007年のチャイコフスキー国際コンクールのVn部門の優勝者で当時は話題になった。その後の凱旋公演は概ね好評でNHKで放映されたりしたし、事実、その年のミューザ川崎の東京響のフェスタにも出ていて聴きに行った。そしてその堂々たる弾きっぷりに大いに驚嘆したものだった。しかし、その当時から去年までCDは全然出していなかったらしく、これが一枚目とはちょっと驚きだ。
しかし驚くべきはそのことではなく、このCDのプログラム内容と出来映えなのだ。曲目はどれもがロマンの香り高い佳作揃いでしかも解釈も演奏も簡単ではないものばかりを並べている。
カルメン幻想曲は松田理奈の盤とは違ってワックスマン編曲のもので、サラサーテ編よりも更にアクロバティックで気性の激しい内容だ。もうのっけからやられてしまう。ワルツ・スケルツォは若年期から弾いていたと言うだけあって隙のない悠然とした演奏だ。次のシマノフスキの神話は弾くのも聴くのもちょっと難しい作品だ。霞や靄が立ちこめるような茫洋とした背景に幽玄な旋律が噎ぶ難曲なのだが神尾独特のたゆたうようなアーディキュレーションで包み込むように弾き進んでいく。
なつかしい土地の想い出は冒頭のメディテーションだけ収録されていて第二曲のスケルツォが入っていないのは画竜点睛を欠く感じで非常に残念。だが、どういう具合に引き倒すのかは聴くまでもなく容易に想像できてしまうところが神尾の個性が強烈ゆえだ。次回の楽しみが増えた。
ショーソンのポエムも前出のシマノフスキと類似の霞たなびく難しい曲なのだがバックのヴァディム・グラドゥコフの好サポートを得て伸びやかにそしてスケール豊かに弾き切っている。ショーソンのこの作品はイザベル・ファウストの演奏(オケ伴奏版)が陰影が濃くて白眉だったのだがどうしてなかなか、この神尾の演奏もベタつかない大人の雰囲気で良い出来映えだ。最後、イタリア組曲の諧謔で奔放な曲想に関しても神尾はその根底ポリシーを完全に掌握しきっているようで堂々たる弾きっぷりだ。
前出の二人(松田、枝並)は未来のヴィルトゥオーゾの卵としての可能性を見いだせるこれからのソリストという感じであった。いっぽう、神尾のVnは音量が大きくて楽器の響かせ方も極めて豊か、ステージ映えする激しい抑揚と思い切りの良い感情の起伏、盤石で華麗なテクニック、少し硬質でクールなアーティキュレーションなど、どこをとっても既に完成されたヴィルトゥオーゾと言って良い。
(録音評)
RCA Red Seal(SONY BMGマスターワークス)、BVCC34165、通常CD、録音は2008年3月16-19日、チューリヒ、ZKO-ハウスとある。音色は地味で艶消しなのはこのレーベル特有の特徴だが、このCDには以前ほど極端な暗さはない。しかし、華美な演色は抑えられていて神尾のVnがひたすら咆哮するシーンを克明に捉えている。またグラドゥコフの弾く柔和で暖色傾向のベーゼンドルファーが気品に満ちていて秀逸な収録だ。演奏内容は素晴らしいが音質も一線級であり、多くの音楽ファンやオーディオファンにお勧めできるCDだ。但し、細部をえぐり出して微視的に拡大するような超高解像度録音ではないし、元々そう言った狙い方を意図した調音ではない。
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http://www.hmv.co.jp/product/detail/2708491
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神尾真由子/PRIMO(プリモ)
・フランツ・ワックスマン:カルメン幻想曲
・チャイコフスキー:ワルツ・スケルツォOp.34
・シマノフスキ:神話-3つの詩Op.30
・チャイコフスキー:瞑想曲Op.42-1~なつかしい土地の想い出Op.42 No.1
・ショーソン:詩曲Op.25
・ストラヴィンスキー:イタリア組曲
(バレエ「プルチネルラ」より作曲家自身&S.ドュシュキン編曲)
神尾真由子(ヴァイオリン)
ヴァディム・グラドゥコフ(ピアノ)
神尾真由子は2007年のチャイコフスキー国際コンクールのVn部門の優勝者で当時は話題になった。その後の凱旋公演は概ね好評でNHKで放映されたりしたし、事実、その年のミューザ川崎の東京響のフェスタにも出ていて聴きに行った。そしてその堂々たる弾きっぷりに大いに驚嘆したものだった。しかし、その当時から去年までCDは全然出していなかったらしく、これが一枚目とはちょっと驚きだ。
しかし驚くべきはそのことではなく、このCDのプログラム内容と出来映えなのだ。曲目はどれもがロマンの香り高い佳作揃いでしかも解釈も演奏も簡単ではないものばかりを並べている。
カルメン幻想曲は松田理奈の盤とは違ってワックスマン編曲のもので、サラサーテ編よりも更にアクロバティックで気性の激しい内容だ。もうのっけからやられてしまう。ワルツ・スケルツォは若年期から弾いていたと言うだけあって隙のない悠然とした演奏だ。次のシマノフスキの神話は弾くのも聴くのもちょっと難しい作品だ。霞や靄が立ちこめるような茫洋とした背景に幽玄な旋律が噎ぶ難曲なのだが神尾独特のたゆたうようなアーディキュレーションで包み込むように弾き進んでいく。
なつかしい土地の想い出は冒頭のメディテーションだけ収録されていて第二曲のスケルツォが入っていないのは画竜点睛を欠く感じで非常に残念。だが、どういう具合に引き倒すのかは聴くまでもなく容易に想像できてしまうところが神尾の個性が強烈ゆえだ。次回の楽しみが増えた。
ショーソンのポエムも前出のシマノフスキと類似の霞たなびく難しい曲なのだがバックのヴァディム・グラドゥコフの好サポートを得て伸びやかにそしてスケール豊かに弾き切っている。ショーソンのこの作品はイザベル・ファウストの演奏(オケ伴奏版)が陰影が濃くて白眉だったのだがどうしてなかなか、この神尾の演奏もベタつかない大人の雰囲気で良い出来映えだ。最後、イタリア組曲の諧謔で奔放な曲想に関しても神尾はその根底ポリシーを完全に掌握しきっているようで堂々たる弾きっぷりだ。
前出の二人(松田、枝並)は未来のヴィルトゥオーゾの卵としての可能性を見いだせるこれからのソリストという感じであった。いっぽう、神尾のVnは音量が大きくて楽器の響かせ方も極めて豊か、ステージ映えする激しい抑揚と思い切りの良い感情の起伏、盤石で華麗なテクニック、少し硬質でクールなアーティキュレーションなど、どこをとっても既に完成されたヴィルトゥオーゾと言って良い。
(録音評)
RCA Red Seal(SONY BMGマスターワークス)、BVCC34165、通常CD、録音は2008年3月16-19日、チューリヒ、ZKO-ハウスとある。音色は地味で艶消しなのはこのレーベル特有の特徴だが、このCDには以前ほど極端な暗さはない。しかし、華美な演色は抑えられていて神尾のVnがひたすら咆哮するシーンを克明に捉えている。またグラドゥコフの弾く柔和で暖色傾向のベーゼンドルファーが気品に満ちていて秀逸な収録だ。演奏内容は素晴らしいが音質も一線級であり、多くの音楽ファンやオーディオファンにお勧めできるCDだ。但し、細部をえぐり出して微視的に拡大するような超高解像度録音ではないし、元々そう言った狙い方を意図した調音ではない。

by primex64
| 2009-08-24 16:54
| Compilation
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