2009年 08月 20日
Après un Rêve@Chika Edanami |
日本人ソリストの二人目は枝並千花で、レーベルはなんとオーディオマニア御用達?のMAレコーディングス・ジャパンだ。アルバム・タイトルはAprès un Rêveで、これはフォーレの「夢のあとに」という歌曲の名前である。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3573872
・フォーレ=ミッシャ・エルマン編:夢のあとに
・フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調
・フォーレ:ヴァイオリン・ソナタ第2番 Op.108
枝並千花(Vn)、長尾洋史(Pf)
枝並千花もオフィシャルBlogを書いていて、やはりBlogランキングに参加している。順位はMusicArenaと似たような位置で、だいたい20~50位くらいだ。
この人のバイオグラフィーを見ると、前回取り上げた松田理奈と年齢的にも近く(2歳違い?)、なんと同じコンクールに出ていた事が分かる。それは1998年の第52回全日本学生音楽コンクールというコンペティションで、枝並は中学生の部全国第1位、松田は大阪大会の中学生の部第1位だった。その後、この二人は再び同じコンペティション=第10回日本モーツァルト音楽コンクール(2001年)で顔を合わせている。この時は松田が最年少優勝を果たし、枝並は3位だった。
さて、このCDのプログラムは大変にチャレンジングだ。なにせ年齢的に若いこのヴァイオリニストにしてフランクとフォーレの2番という超有名ソナタを二つ並べてきたとは恐れ入る。アルバム・タイトルはAprès un Rêveではなく、Franck & Fauré: Sonatas for Vn & Pf として欲しかった。
この人のVnは実に伸びやかで良く歌う。スケールも大きく、なにより直進性の強い表現が特徴で、天に向かって直角に伸びる若竹のような清々しさが好印象だ。
空前絶後の傑作=フランクのイ長調ソナタは結論的に言えば大健闘していてなかなかよろしいし、フォーレの2番も解釈が難しい曲ではあるがこれはこれでなかなかの出来映えだ。
フランクのソナタは若い人が弾いても薄っぺらになりがちで、やはり齢を重ねてきたロングキャリアのソリスト達の解釈と演奏(例えばシュワルツベルク+アルゲリッチ、デュメイ+ピリス )にはなかなかかなわないのが現実だが、若きハチャトリヤン姉弟の演奏は非常に素晴らしかったし(2008 MusicArena AwardsのSpecial Encouraging Prize獲得!)、この枝並の演奏は情感の襞や起伏に未熟さは認められるものの、反面、直截的な曲想で潔いものだ。
但し、一つだけ苦言を呈するなら長尾洋史のピアノが黒子に徹しすぎているという点。この曲は日本語ではVnソナタとされるが、原題は「Sonate Pour Violin et Piano」とある通り、これはVnとPfのためのリチェルカーレ&カノンと見なせる作品なのだ。つまり、両方が対等に掛け合ってこそ初めて完全な音楽になるということ。このCDでは枝並のVnが際立って大きく増幅されている点がちょっと残念。誤解無きよう申し添えるが、長尾はピアノが巧い。しっとりと丁寧、静謐で穏やかな音を出す優秀なピアニストなのだが。
フォーレの方は例によって霞棚引く不可思議系サウンドのオンパレードなのだが割とがっちりとした骨格で図太く弾いているのは好印象。ここでも直進性の強い、それでいてのびのびとした気持ちの良い浮遊感を醸すことに成功している。長尾のピアノがこの浮遊を静謐かつ精緻にサポートしている。この静謐な浮遊感からは小林美恵+パスカル・ロジェのフォーレを想起させられた。
(録音評)
MAレコーディングス・ジャパン、MAJ-506、通常CD。録音時期は2008年7月、場所は秩父ミューズパーク音楽堂、ディレクターは野田智子、エンジニアは例によってMAの社長、タッド・ガーフィンクルとなっている。なんとミキサーを使わない純粋なワンポイントDSD録音だ。
最終メディアがCD-DAであるにも拘わらず音は完全にDSDそのもので、面で構築された音像が三次元的なサウンドステージに透過的に浸透している。MAレコーディングスのCDにはちょっとハイエンドっぽい光沢が乗っていることが多いのだが、このCDに関して言えばそれは殆ど感じられない。各楽器の音が極めて正確にそして自然に捉えられている。
このMAにみられる独特の光沢はマイクケーブルやインコネに必ず用いられているCrystal Cable(純金と純銀の超高級ハイブリッド電線)のせいだと思っていたのだがどうもそうではなさそうだ。
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http://www.hmv.co.jp/product/detail/3573872
・フォーレ=ミッシャ・エルマン編:夢のあとに
・フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調
・フォーレ:ヴァイオリン・ソナタ第2番 Op.108
枝並千花(Vn)、長尾洋史(Pf)
枝並千花もオフィシャルBlogを書いていて、やはりBlogランキングに参加している。順位はMusicArenaと似たような位置で、だいたい20~50位くらいだ。
この人のバイオグラフィーを見ると、前回取り上げた松田理奈と年齢的にも近く(2歳違い?)、なんと同じコンクールに出ていた事が分かる。それは1998年の第52回全日本学生音楽コンクールというコンペティションで、枝並は中学生の部全国第1位、松田は大阪大会の中学生の部第1位だった。その後、この二人は再び同じコンペティション=第10回日本モーツァルト音楽コンクール(2001年)で顔を合わせている。この時は松田が最年少優勝を果たし、枝並は3位だった。
さて、このCDのプログラムは大変にチャレンジングだ。なにせ年齢的に若いこのヴァイオリニストにしてフランクとフォーレの2番という超有名ソナタを二つ並べてきたとは恐れ入る。アルバム・タイトルはAprès un Rêveではなく、Franck & Fauré: Sonatas for Vn & Pf として欲しかった。
この人のVnは実に伸びやかで良く歌う。スケールも大きく、なにより直進性の強い表現が特徴で、天に向かって直角に伸びる若竹のような清々しさが好印象だ。
空前絶後の傑作=フランクのイ長調ソナタは結論的に言えば大健闘していてなかなかよろしいし、フォーレの2番も解釈が難しい曲ではあるがこれはこれでなかなかの出来映えだ。
フランクのソナタは若い人が弾いても薄っぺらになりがちで、やはり齢を重ねてきたロングキャリアのソリスト達の解釈と演奏(例えばシュワルツベルク+アルゲリッチ、デュメイ+ピリス )にはなかなかかなわないのが現実だが、若きハチャトリヤン姉弟の演奏は非常に素晴らしかったし(2008 MusicArena AwardsのSpecial Encouraging Prize獲得!)、この枝並の演奏は情感の襞や起伏に未熟さは認められるものの、反面、直截的な曲想で潔いものだ。
但し、一つだけ苦言を呈するなら長尾洋史のピアノが黒子に徹しすぎているという点。この曲は日本語ではVnソナタとされるが、原題は「Sonate Pour Violin et Piano」とある通り、これはVnとPfのためのリチェルカーレ&カノンと見なせる作品なのだ。つまり、両方が対等に掛け合ってこそ初めて完全な音楽になるということ。このCDでは枝並のVnが際立って大きく増幅されている点がちょっと残念。誤解無きよう申し添えるが、長尾はピアノが巧い。しっとりと丁寧、静謐で穏やかな音を出す優秀なピアニストなのだが。
フォーレの方は例によって霞棚引く不可思議系サウンドのオンパレードなのだが割とがっちりとした骨格で図太く弾いているのは好印象。ここでも直進性の強い、それでいてのびのびとした気持ちの良い浮遊感を醸すことに成功している。長尾のピアノがこの浮遊を静謐かつ精緻にサポートしている。この静謐な浮遊感からは小林美恵+パスカル・ロジェのフォーレを想起させられた。
(録音評)
MAレコーディングス・ジャパン、MAJ-506、通常CD。録音時期は2008年7月、場所は秩父ミューズパーク音楽堂、ディレクターは野田智子、エンジニアは例によってMAの社長、タッド・ガーフィンクルとなっている。なんとミキサーを使わない純粋なワンポイントDSD録音だ。
最終メディアがCD-DAであるにも拘わらず音は完全にDSDそのもので、面で構築された音像が三次元的なサウンドステージに透過的に浸透している。MAレコーディングスのCDにはちょっとハイエンドっぽい光沢が乗っていることが多いのだが、このCDに関して言えばそれは殆ど感じられない。各楽器の音が極めて正確にそして自然に捉えられている。
このMAにみられる独特の光沢はマイクケーブルやインコネに必ず用いられているCrystal Cable(純金と純銀の超高級ハイブリッド電線)のせいだと思っていたのだがどうもそうではなさそうだ。
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by primex64
| 2009-08-20 17:42
| Solo - Vn
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