2009年 08月 19日
Carmen@Lina Matsuda |
普段は高価な国内盤を聴くことはまずない。そのため日本国内や日本人演奏家、特に若いソリスト達の趨勢にはかなり疎いのだ。そこで、店頭で目立つように陳列してあったソリストの国内版を数枚買ってきた。
まず初めは、松田理奈という20代のヴァイオリニストの二枚目のアルバムでCarmenと題されたコンピレーション盤だ。ちょうど一年ほど前のリリースになる。

http://www.hmv.co.jp/product/detail/2761985
DVD付きはこちら↓

メロディ (グルック)
カルメン幻想曲 (サラサーテ)
タイスの瞑想曲 (マスネ)
アヴェ・マリア (カッチーニ)
序奏とロンド・カプリチオーソ (サン=サーンス)
トロイメライ (シューマン)
ヴォカリーズ (ラフマニノフ)
アンダンテ・カンタービレ (チャイコフスキー)
ツィガーヌ (ラヴェル)
松田理奈(Vn)、パーヴェル・ギリロフ(Pf)
松田理奈はMusicArenaも参加しているBlogランキングでは常に上位の一角を占めるオフィシャルBlogを書いていてなかなか人気があるようだ。出身は横浜で、芸大の附属高校を経て桐朋へ進み、現在はニュールンベルクのマスタークラスに在籍中とのこと。経歴だけ見れば将来を嘱望されるヴィルトゥオーゾ予備軍の一人と言えようか。
このCDには誰もが知っているポピュラーな小品が並んでいる。アルバム・タイトルにもなっているカルメン幻想曲はサラサーテ作の方だ。このカルメン幻想曲と言えば若き日のムターの録音を思い出す。
結論から言うとこのVn奏者はへたではない。操弦技術(フィンガリング)も操弓技術(ボウイング)も一定水準以上と見て取れ、かなりの難度までこなせる。また、ガダニーニとは思われないほど軽量で純音に振れたこの楽器の音は非常に綺麗で上部雑音も殆ど聴き取ることが出来ないほど静かだ。
では、それ以上なにが特徴なのか、と問われると返答に窮してしまうほど普通なのだ。カルメン幻想曲は若き日のムターの演奏と比較してはならない。全く違う曲と言って良いほどプレゼンスが異なるからだ。松田理奈は譜読みした通り忠実に弦を操り弓を引いているのだが、やはり抑揚であるとかスケール感であるとか情感の込め具合であるとかが後退して聞こえる。そう、全体にこぢんまりとまとまってしまっている感じが否めない。ピアノはマイスキーの盟友=パーヴェル・ギリロフが担当。蛇足だがこのピアノの巧さが随所で光って聞こえる。
但し、最後のツィガーヌだけは例外で、これは乗りが良く、ダイナミックで活き活きした解釈と演奏であり、楽器の音自体がまるで別物に感じられるくらい硬軟の使い分け、濃淡のつけ具合も巧妙、そして超絶技巧が効果的に発揮されている。松田自身のこの曲への習熟度は相当に高いと見た。アルバム・タイトルのカルメン幻想曲はツィガーヌと差し替えた方が良いのでは? と思った。
この人の場合、Vnソリストとして今後どういった個性と特徴、そして音楽に対する方向性を打ち出していくのかが課題だろう。
(録音評)
ビクター・エンタテインメント、VICC-60660、通常CD。初回限定DVDバンドルという製品もあったようだがこれは単盤で普通のCDだ。DVDを付録させるということはビジュアル系で売り出そうという意図があったということか。録音は2008年5月6日~8日ベルリンのアンドレアス教会とある。ロケーションは割と長い残響を伴う音の良い礼拝堂と思われるが、電気リバーブではなかろうか、というほど豊かなエコーだ。VnやPfの定位はピンポイント・フォーカスではないもののまずまず良好。サウンドステージの奥行きは中庸程度。
ツィガーヌ以外のトラックの楽器の音は少々細身で端正、そして純度の高い綺麗な音であることは前述の通り。ツィガーヌのVnの音は時に太く朗々と鳴り、時にふくよか、実はガット弦を張っているのではなかろうかと思うほど柔らかく鳴る。
国内制作盤としては出来映えは上々だと思う。といっても録音スタッフは殆どが欧米人の様だが。
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まず初めは、松田理奈という20代のヴァイオリニストの二枚目のアルバムでCarmenと題されたコンピレーション盤だ。ちょうど一年ほど前のリリースになる。

http://www.hmv.co.jp/product/detail/2761985
DVD付きはこちら↓

メロディ (グルック)
カルメン幻想曲 (サラサーテ)
タイスの瞑想曲 (マスネ)
アヴェ・マリア (カッチーニ)
序奏とロンド・カプリチオーソ (サン=サーンス)
トロイメライ (シューマン)
ヴォカリーズ (ラフマニノフ)
アンダンテ・カンタービレ (チャイコフスキー)
ツィガーヌ (ラヴェル)
松田理奈(Vn)、パーヴェル・ギリロフ(Pf)
松田理奈はMusicArenaも参加しているBlogランキングでは常に上位の一角を占めるオフィシャルBlogを書いていてなかなか人気があるようだ。出身は横浜で、芸大の附属高校を経て桐朋へ進み、現在はニュールンベルクのマスタークラスに在籍中とのこと。経歴だけ見れば将来を嘱望されるヴィルトゥオーゾ予備軍の一人と言えようか。
このCDには誰もが知っているポピュラーな小品が並んでいる。アルバム・タイトルにもなっているカルメン幻想曲はサラサーテ作の方だ。このカルメン幻想曲と言えば若き日のムターの録音を思い出す。
結論から言うとこのVn奏者はへたではない。操弦技術(フィンガリング)も操弓技術(ボウイング)も一定水準以上と見て取れ、かなりの難度までこなせる。また、ガダニーニとは思われないほど軽量で純音に振れたこの楽器の音は非常に綺麗で上部雑音も殆ど聴き取ることが出来ないほど静かだ。
では、それ以上なにが特徴なのか、と問われると返答に窮してしまうほど普通なのだ。カルメン幻想曲は若き日のムターの演奏と比較してはならない。全く違う曲と言って良いほどプレゼンスが異なるからだ。松田理奈は譜読みした通り忠実に弦を操り弓を引いているのだが、やはり抑揚であるとかスケール感であるとか情感の込め具合であるとかが後退して聞こえる。そう、全体にこぢんまりとまとまってしまっている感じが否めない。ピアノはマイスキーの盟友=パーヴェル・ギリロフが担当。蛇足だがこのピアノの巧さが随所で光って聞こえる。
但し、最後のツィガーヌだけは例外で、これは乗りが良く、ダイナミックで活き活きした解釈と演奏であり、楽器の音自体がまるで別物に感じられるくらい硬軟の使い分け、濃淡のつけ具合も巧妙、そして超絶技巧が効果的に発揮されている。松田自身のこの曲への習熟度は相当に高いと見た。アルバム・タイトルのカルメン幻想曲はツィガーヌと差し替えた方が良いのでは? と思った。
この人の場合、Vnソリストとして今後どういった個性と特徴、そして音楽に対する方向性を打ち出していくのかが課題だろう。
(録音評)
ビクター・エンタテインメント、VICC-60660、通常CD。初回限定DVDバンドルという製品もあったようだがこれは単盤で普通のCDだ。DVDを付録させるということはビジュアル系で売り出そうという意図があったということか。録音は2008年5月6日~8日ベルリンのアンドレアス教会とある。ロケーションは割と長い残響を伴う音の良い礼拝堂と思われるが、電気リバーブではなかろうか、というほど豊かなエコーだ。VnやPfの定位はピンポイント・フォーカスではないもののまずまず良好。サウンドステージの奥行きは中庸程度。
ツィガーヌ以外のトラックの楽器の音は少々細身で端正、そして純度の高い綺麗な音であることは前述の通り。ツィガーヌのVnの音は時に太く朗々と鳴り、時にふくよか、実はガット弦を張っているのではなかろうかと思うほど柔らかく鳴る。
国内制作盤としては出来映えは上々だと思う。といっても録音スタッフは殆どが欧米人の様だが。

by primex64
| 2009-08-19 13:04
| Compilation
|
Trackback(1)
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Comments(2)

タイトル : 『カルメン幻想曲』 松田理奈
「ほとばしる情熱、卓越した技巧。松田理奈、待望の第2弾!!」と帯にありますが、ヴァイオリニスト松田理奈のデビュー2枚目のアルバムです。 すっかり彼女もクラシック界のアイドル扱いですね。 収録曲は、グルックの「メロディ」、サラサーテの「カルメン幻想曲」(表題曲ですな)、マスネ「タイスの瞑想曲」、カッチーニ「アヴェ・マリア」、サン=サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」、シューマン「トロイメライ」、ラフマニノフの「ヴォカリーズ」、チャイコフスキー「アンダンテ・カンタービレ」、そしてラヴェルの「...... more
「ほとばしる情熱、卓越した技巧。松田理奈、待望の第2弾!!」と帯にありますが、ヴァイオリニスト松田理奈のデビュー2枚目のアルバムです。 すっかり彼女もクラシック界のアイドル扱いですね。 収録曲は、グルックの「メロディ」、サラサーテの「カルメン幻想曲」(表題曲ですな)、マスネ「タイスの瞑想曲」、カッチーニ「アヴェ・マリア」、サン=サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」、シューマン「トロイメライ」、ラフマニノフの「ヴォカリーズ」、チャイコフスキー「アンダンテ・カンタービレ」、そしてラヴェルの「...... more
怖い耳を持っていますね。
若い人はあまり知りません。
ピアノのほうが旨いことはよく経験します。
最近現代音楽なるものが少なくなっているような気がします。
怪しげな音を作り出すのは簡単なことなので、私はあの手の音楽は
敬遠気味です。
音楽って、やっぱり人の心にしんみりしみいるものではないかと思っているのです。
もちろん12音がそのまま浸み込む人もいるのかもしれませんが
一時言われたほど一般的に通づる話ではないような気がします。
少し落ち着いたら、また下手な曲を作り始めます。
今日もスマイル
若い人はあまり知りません。
ピアノのほうが旨いことはよく経験します。
最近現代音楽なるものが少なくなっているような気がします。
怪しげな音を作り出すのは簡単なことなので、私はあの手の音楽は
敬遠気味です。
音楽って、やっぱり人の心にしんみりしみいるものではないかと思っているのです。
もちろん12音がそのまま浸み込む人もいるのかもしれませんが
一時言われたほど一般的に通づる話ではないような気がします。
少し落ち着いたら、また下手な曲を作り始めます。
今日もスマイル
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