Liszt: Etudes d'exécution transcendante@Alice Sara Ott |
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(日本国内盤はこちら↓)
リスト:超絶技巧練習曲集(全12曲)
・第1番ハ長調『前奏曲』
・第2番イ短調
・第3番ヘ長調『風景』
・第4番ニ短調『マゼッパ』
・第5番変ロ長調『鬼火』
・第6番ト短調『幻影』
・第7番変ホ長調『英雄』
・第8番ハ短調『狩り』
・第9番変イ長調『回想』
・第10番ヘ短調
・第11番変ニ長調『夕べの調べ』
・第12番変ロ短調『雪あらし』
アリス=紗良・オット(ピアノ)
このピアニストは日本国内では昨今非常に人気があり、来日公演も執り行われているようだ。容姿はどう見ても日本人女性なのだが日本語は殆ど喋れないという。彼女のプロフィールなどは他サイトが詳しいので割愛。
大胆で起伏の激しい超絶技巧練習曲だ。往時のアグスティン・アニエバスの演奏を一瞬思い出した。若くしてこの超難度曲をここまで弾きこなしているのは大したものというべきか、はたまたまだまだ荒削りで今後の伸びしろに期待が持てるというべきか、ちょっと微妙な出来映えだ。この人の最大の美点は右手運指の速いこととブリリアンスに富んだ明確なタッチにある。どの曲も強いアゴーギクと、頻繁なデュナーミクによる強弱の出し入れが楽しい、そして乗りの良い演奏だ。
逆に最大の難点は左手腕力の脆弱さとテンポの統制力不足、旋律の制御能力欠如と言える。右手の巧さが鮮やかに光る一方、この左手のコントロール不足はこの練習曲集全体に茫洋とした影を落としている格好だ。
全曲を解説する時間はないので幾つかを取り上げると、まずマゼッパが巧くないのだ。中間部までの激しい伴奏部はスタッカートで弾くべきところレガートっぽいトレースとならざるを得ず、聴感上は団子のように重く、そして歯切れの悪い鈍い対旋律に終始する。それを補おうという意図からかサスティン・ペダルの踏み込みが深過ぎ・長過ぎで右手旋律の微細な輪郭までもが混濁する箇所が多い。
特徴的なのは10番で、これは左手と右手で連続性を持ったアルペジオ、分散和音のための練習テーマなのだが、左右で明らかな不連続点があって左手がとにかく弱く、そしてシンコペーションが潰れている。反面、右手の運指はかなり闊達でありその対比が激しいのだ。尚、この曲でのペダリングも過多だ。
アニエバスやクリダも凄いが、昨今で言えば温度感が低くて過度な揺らぎのない、そして隙のない完璧なこの演奏を想起する。比較するのは酷というものか・・。
(録音評)
DG、4778362、通常CD。録音は2008年6月、ハンブルク(デジタル)とある。トーンマイスターは久々のRainer Maillardだ。アレンジはオンマイク気味のアングルだがピアノは膨張せず、従って定位は良好だ。但し、サウンドステージが判然とせず音場情報がいびつに入っている。音色はちょっと雑駁な感じで演奏の傾向と同様に混濁が認められる。MIRAREやOHEMSのピアノ録音に見られるような純度の高い透明なピアノ録音ではない。小菅優の超絶技巧もソニーのよろしくない録音内容だったし、もうちょっと音質に気を遣って欲しいものだ。
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クラシック界にもアイドルのジャンルがあることを知りました(^^;
「超絶技巧練習曲」には名盤や迷盤がいろいろありますね。
私は打ち込みのように正確なテクニックよりも、多少ズレているほうが
好きだったりしますが・・・。
ジャケ買いのファンもいるんだろうな、きっと。
リスト以外のCDが出たら聴いてみたいと思います。
そうですね、リスト以外、例えばモーツァルトやショパン、シューマンあたりのスタンダード曲だと彼女の真の志向性が分かるかと思われますね。
近頃は、若手のピアニストがこの曲集を録音するのが流行りのようですが、技術的にはバリバリ弾く若手はさほど珍しくもないですから、音楽性を発揮して弾ける曲で聴いてみると、印象も全然変わってくるかもしれません。
小菅さんの演奏はとても軽やかですね。横山幸雄さんのようなパワフルさや凄みのようなものはありませんが、逆にやや柔らかめのタッチの丁寧な弾き方が綺麗でした。ご自分でも得意にしてせいか、リストやショパンなど技巧的難曲には向いているのだと思います。
試聴されましたか? ま、超絶技巧とパガニーニ大練習曲はデビュー盤として扱うには鬼門かと思いました。この人の芸風は、敢えて言うなら上原彩子的って感じましたが、判断は今後の「普通」の作品集を聴いてからでしょうかね? 次は、これまた以外にも誰かのPコンだったりする予感はアリアリですww