2009年 06月 30日
The Piazzolla Project@Artemis Quartet/Jacques Ammon |
英国Virgin Classicsの新譜でアルテミス四重奏団のピアソラ集。例によって制作はEMIとなっていて、一部がORF(オーストリア放送協会)との共同制作だ。

http://www.hmv.co.jp/product/detail/3569501
ASTOR PIAZZOLLA 1921-1992
The Piazzolla Project
1. Concierto para Quinteto for Piano Quintet 9.48
五重奏のためのコンチェルト
2-5. Estaciones Porteñas (Seasons in Buenos Aires) for Piano Trio 25.46
ブエノス・アイレスの四季(ピアノ三重奏のための)
6. Fuga y Misterio for Piano Quintet 4.25
フーガと神秘(ピアノ五重奏のための)
7-10. Suite del Angel (Angel Suite) for String Quartet* 19.53
天使の組曲(弦楽四重奏のための)
All arrangements by Eckart Runge & Jacques Ammon (celloproject)
Artemis Quartet:
Natalia Prischepenko(Vn)
Gregor Sigl(Vn)
Heime Müller(Vn)
Friedemann Weigle(Va)
Volker Jacobsen(Va)
Eckart Runge(Vc)
Jacques Ammon(Pf)
アルテミス四重奏団がピアソラとはちょっと意外に思って手にしたCDだが、これがなかなか良い出来映えだ。ちょっとダルで頽廃ムードの漂うピアソラ解釈が主流の中、この演奏は筋肉質のバリバリの初期ロマン派解釈と言って良い。アルテミスの演奏ではこれが記憶に残る佳作だったが、今回のテーマはクロスオーバーの先駆けと言えるピアソラに挑戦と言うこと。
律儀できっちりとした譜読みがなされていて、必要以上のルバートも過激なデュナーミクも入らず奇を衒ったところがまるでない。ではつまらないのかというとむしろ逆で、高速かつ精密な速射砲のように小節の頭の出だしや小刻みなパウゼ、そしてコーダのリリースも面白いようにビシバシ決まるのだ。基本を用いて感情に訴える演奏とはこのことだろう。ジャック・アモンのピアノも高速で正確無比、ダイナミックな演奏だ。
どれも鮮烈で聴き応えのある、しかし温度感が低いクールな演奏なのだが、あえて白眉というならばブエノス・アイレスの四季だろう。なんとも切なく憂いに満ちたメロディーだろうか。そして何にも媚びない孤高のピアソラがここにある。
(録音評)
Virgin Classics、2672920、通常CD。曲ごとに録音年月と場所が異なっていて、五重奏のためのコンチェルトとフーガと神秘が昨年の6月(Großer Saal del Musikhochschule Lübeck)、ブエノス・アイレスの四季がちょっと古くて2004年の6月(Der Angelika-Kaufmann-Saal in Schwarzenberg)、そして天使の組曲が2004年の7月(Schubertiade Schwarzenberg)となっている。最後の天使の組曲はORFとの共同制作でライブ録音とある。録音時期が古いトラックは、実は既に別の盤でリリースされている音源なのかも知れない。
それぞれ録音時期が異なるのだがトラックごとの音質差は極めて少なく、統一された仄暗い音調であり、まさに大人の艶消しブラックだ。漆黒の広い背景にアルテミスの面々、そしてアモンが陣取り、闊達な演奏を繰り広げる様が明確に定位する。残響成分は極めて自然で過度のアンビエントや乱れは感じられない。レンジは一聴すると広くないように感じる。なぜなら輪郭強調が少なくてアナログ的な調音が施されているからだ。しかし、実際の周波数レンジは広く、PfやVcの最低音からVnの最高音までブロードに無理なく捉えられている。
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http://www.hmv.co.jp/product/detail/3569501
ASTOR PIAZZOLLA 1921-1992
The Piazzolla Project
1. Concierto para Quinteto for Piano Quintet 9.48
五重奏のためのコンチェルト
2-5. Estaciones Porteñas (Seasons in Buenos Aires) for Piano Trio 25.46
ブエノス・アイレスの四季(ピアノ三重奏のための)
6. Fuga y Misterio for Piano Quintet 4.25
フーガと神秘(ピアノ五重奏のための)
7-10. Suite del Angel (Angel Suite) for String Quartet* 19.53
天使の組曲(弦楽四重奏のための)
All arrangements by Eckart Runge & Jacques Ammon (celloproject)
Artemis Quartet:
Natalia Prischepenko(Vn)
Gregor Sigl(Vn)
Heime Müller(Vn)
Friedemann Weigle(Va)
Volker Jacobsen(Va)
Eckart Runge(Vc)
Jacques Ammon(Pf)
アルテミス四重奏団がピアソラとはちょっと意外に思って手にしたCDだが、これがなかなか良い出来映えだ。ちょっとダルで頽廃ムードの漂うピアソラ解釈が主流の中、この演奏は筋肉質のバリバリの初期ロマン派解釈と言って良い。アルテミスの演奏ではこれが記憶に残る佳作だったが、今回のテーマはクロスオーバーの先駆けと言えるピアソラに挑戦と言うこと。
律儀できっちりとした譜読みがなされていて、必要以上のルバートも過激なデュナーミクも入らず奇を衒ったところがまるでない。ではつまらないのかというとむしろ逆で、高速かつ精密な速射砲のように小節の頭の出だしや小刻みなパウゼ、そしてコーダのリリースも面白いようにビシバシ決まるのだ。基本を用いて感情に訴える演奏とはこのことだろう。ジャック・アモンのピアノも高速で正確無比、ダイナミックな演奏だ。
どれも鮮烈で聴き応えのある、しかし温度感が低いクールな演奏なのだが、あえて白眉というならばブエノス・アイレスの四季だろう。なんとも切なく憂いに満ちたメロディーだろうか。そして何にも媚びない孤高のピアソラがここにある。
(録音評)
Virgin Classics、2672920、通常CD。曲ごとに録音年月と場所が異なっていて、五重奏のためのコンチェルトとフーガと神秘が昨年の6月(Großer Saal del Musikhochschule Lübeck)、ブエノス・アイレスの四季がちょっと古くて2004年の6月(Der Angelika-Kaufmann-Saal in Schwarzenberg)、そして天使の組曲が2004年の7月(Schubertiade Schwarzenberg)となっている。最後の天使の組曲はORFとの共同制作でライブ録音とある。録音時期が古いトラックは、実は既に別の盤でリリースされている音源なのかも知れない。
それぞれ録音時期が異なるのだがトラックごとの音質差は極めて少なく、統一された仄暗い音調であり、まさに大人の艶消しブラックだ。漆黒の広い背景にアルテミスの面々、そしてアモンが陣取り、闊達な演奏を繰り広げる様が明確に定位する。残響成分は極めて自然で過度のアンビエントや乱れは感じられない。レンジは一聴すると広くないように感じる。なぜなら輪郭強調が少なくてアナログ的な調音が施されているからだ。しかし、実際の周波数レンジは広く、PfやVcの最低音からVnの最高音までブロードに無理なく捉えられている。

by primex64
| 2009-06-30 11:52
| Ensemble
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