辻井伸行氏、Van Cliburn Competitionを制する |

(読売新聞 - 06月08日 10:12)
世界的演奏家を多く出している「バン・クライバーン国際ピアノコンクール」の結果が7日(日本時間8日未明)、米テキサス州フォートワースで発表され、東京都在住の上野学園大3年、辻井伸行さん(20)が中国人ピアニストの張昊辰(ちょうこうしん)さん(19)と並んで1位となった。
辻井さんは全盲で、国際的なピアノコンクールを全盲ピアニストが制覇したのは極めて異例。
「まるで夢のよう。ショパンコンクールの時は本選に残りたいという欲があったが、今回は決勝でオーケストラと共演できればいい、という気持ちで臨んだのが良かったのかもしれない」。辻井さんは発表直後、関係者を通じて喜びを語った。
同コンクールは、ピアノコンクールとしてはチャイコフスキー国際コンクール、ショパン国際ピアノコンクールなどと並ぶ難関。過去の日本人入賞者は3人で、1969年の野島稔さんの2位が最高だった。辻井さんは書類選考で残った151人から、決勝の6人に残り、4日にショパンのピアノ協奏曲第1番、6日にラフマニノフの同第2番、7日はベートーベンのピアノ・ソナタ第23番<熱情>などを弾き、聴衆を熱狂させた。この模様はインターネットの公式サイトで流された。
辻井さんは生まれた時から全盲だったが、音の感覚が鋭敏で、ピアノの多彩な音色にひかれて、4歳から本格的に習い始めた。7歳で全日本盲学生音楽コンクール・ピアノの部で1位に。10歳でオーケストラと初共演してプロデビューした。今までに国内のほかアメリカ、ロシア、フランスなどでも演奏会を開いている。2005年にはショパン・コンクールで「批評家賞」を受賞し、注目を集めた。
授賞式を終えた直後の辻井さんは、読売新聞との電話インタビューに応じた。
「とても興奮している。セレモニーが終わって、落ち着いてきたが。お客さんが熱心に聴いてくれ、応援もしてくれたので、持てる力を存分に出し切ることができた。今は何よりも両親に感謝している。プロとしてスタートラインに立ったばかりなので、自分の音楽にさらに磨きをかけたい」
◆「天から降る」音色◆
辻井伸行さんのピアノは音が美しく、「天から降ってくるようだ」と指揮者の佐渡裕(ゆたか)さん(48)などから高く評されている。2007年に上野学園大学に入学。同年末から翌年3月にかけ、初の全国ツアーを行った。07年10月にCD「debut NOBUYUKI TSUJII」をエイベックスから発売している。
◆バン・クライバーン国際ピアノコンクール◆
第1回チャイコフスキー国際コンクールで優勝した米国人ピアニスト、バン・クライバーンの名前を冠し、1962年に始まった。
原則4年に1回開かれ、今年が13回目。過去にラドゥ・ルプー、アレクセイ・スルタノフ、アレクサンダー・コブリンらが優勝している。



熱情ソナタは響きが美しく凝縮力もある熱演でした。2曲のコンチェルトも大きなミスはあまりなかったと思いますが、さすがにラフマニノフの第2番は遅いテンポでしたが、厳しいものがありました。
シューマンの五重奏曲もとても良い演奏だったと思います。コンチェルトはソリストのテンポに合わせてくれますが、室内楽はそうはいかないので、全部暗譜した上に、速いテンポの楽章でもSQとピタッと合わせて、音楽としてちゃんと作って行けるのはまさに驚きです。
ライブ映像を見ると、彼のピアニストとしての能力の凄さが良くわかります。

彼は速いテンポで、指が良く回るし(でもミスタッチが散見されます)、表情づけも豊かで、派手で華麗な演奏なのですが、結構粗っぽいところがあって、さほど感動するものではありません。
同じ曲を辻井さんが弾いてますが、テクニックの切れや華やかさでは劣るのですが、とても丁寧に弾いていて、澄んだ響きが本当に綺麗です。切々と訴えかけてくるものがあって、抒情的な美しいショパンです。この演奏は結構感動ものでした。
聴衆のスタンディングオベーションがなかなか鳴り止まなかったのですが、その理由がよくわかります。
はい! 私は今日も帰宅してから暫くyoutubeで彼の演奏を聴いていましたが、ちょっと独特のエモーションに陥ってしまいました。巧いんですよね、技巧的じゃない所で・・。
>全部暗譜した上に、
彼の場合、譜面を見ながら弾くと言うことは100%無理なので仰る通りなのですが、一番仰天したのは、椅子に腰掛けた瞬間にピアノの真ん中の鍵穴が見えている? としか思えないくらいの正確で迷いのない打ち下ろしです。常人だって振り下ろしたら アレレ? ってことがあるのに・・。その後も擦り指(って表現があるかどうか・・?)になるのかっていうと全然そんな感じはなく、ガンガン行っちゃうのは普通ですよ。
個人的な感想では5年前の「みなとみらい」からは大幅な変化があって、あーー、彼も成人なんだな、と思いました。というのはラフに関しては彼はもうちょっと突っ込みたかったのかも知れないな~、と私は個人的に感じましたが、あれ以上の速度は彼には危険領域という気がしたんです。
彼とオケ・サポート隊がそれを各々わかっていた気がしますね。そうさせたのは彼の人徳(というと語弊があるかも知れませんが・・)、それと一小節ずつ噛み締めて着実に歩を進めるという強い信念がああいうテンポを「作らせた」という風に聴きました。あんまり言うべきじゃないですが、いかんせん腕力とスタミナ、そしてそれらが絡まり合って集中力が足りませんでした。でも言うほどじゃないですww
コンクールの動画以外にもyoutubeには赤裸々な映像&音声トラックが載っていて(著作権法上ほんとに大丈夫・・?)、風呂上がりで暑い時にショパンのop.10の冒頭4曲を聴いてしまいました。いつ頃の演奏なんだろう? はっきり分かりませんがそんな前じゃないです。音質は悪く、そしてミスタッチは割と多いのですがなぜか気にならないあの気迫はなんなんでしょうね?
で、もの足りなくなって、今はポリーニの若い頃のアナログ録音でOp.10&25を通しで聴いていますww 故あって明日の日記に書く予定です。音楽的な内容ではないので期待には添えませんが・・・。
ではでは・・w

コンクール公式HPの映像では、着座してピアノパートが始まる前に、両手を鍵盤の両端に置いてから、起点の鍵盤との距離を腕の長さで確認して、それから最初の打鍵ポジションへと、手を移動させています。どの演奏でもそうしてます。正確な位置を確認せずに最初の打鍵をするのは、いくらなんでも怖くてできないと思います。
演奏中も、打鍵時は鍵盤上と指の距離をできるかぎり縮めていますし、打鍵しない指も鍵盤からほとんど離していないように見えますので、鍵盤の位置を見失わないようしているのでしょう。彼の手・指の形と運指が独特なのはそのためです。音の配列によっては、鍵盤をさぐりながら弾いている感じがするので、テンポが上げられない部分もあります。
逆にそのタッチのせいか、彼の弾く音は柔らかで繊細な綺麗な響きがします。指が常に鍵盤に吸い付いているような状態なので、上部雑音が少ないからだと思います。
海外の音楽サイトのコンクール評をいくつか読んでみましたが、なかなか手厳しいものもありますね。コンクールはやはりスタート地点でしかないということを感じました。
いくらなんでもそりゃそうですよねぇ・・orz 家のPCで公式Webページでもう一度ノーカット版を見てみますね。(ここのネットワークにはストリーミングが通らないので・・)