2009年 05月 18日
Journey to the New World@Sharon Isbin |
ソニー・クラシカルの新譜で、アメリカの国民的ギタリスト=シャロン・イズビンが自ら企画制作したアルバムから。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3544131
Journey to the New World
1 -4. FOUR RENAISSANCE LUTE WORKS
- Transcribed/edited by Sharon Isbin
5-6. ENGLISH FOLKSONGS
- Traditional/arranged for solo guitar by Edward Flower
7. ANDECY - Andrew York
8. WAYFARING STRANGER (with Joan Baez)
Traditional/arranged by Carlos Barbosa-Lima
9-15. JOAN BAEZ SUITE, Opus 144 - John Duarte
- Written for Sharon Isbin*
16. GO ‘WAY FROM MY WINDOW - John Jacob Niles (with Joan Baez)
17-29. STRINGS & THREADS SUITE - Mark O’Connor
(with Mark O’Connor - violin)
Violin & Guitar adaption written for Sharon Isbin.
World Premiere Recording*
Sharon Isbin (guitar)
このアルバムの特徴はHMVサイトに載っているソニーのコメンタリーが全てを物語っているが、実際に聴くと文字で読む論評以上に深い感動と癒しが得られる素晴らしいアルバムだ。特に、英国をルーツとする多くの米国民にとってはどこか耳に懐かしい、そして古き佳き時代を思い出すアルバム構成、そして曲たちではないだろうか。私たち日本人にとっても1960年代に一世を風靡したジョーン・バエズが歌ったフォーク(=カントリー&ウェスタン的な要素も含み)の温もりが再び伝わってくる演出であり、ボブ・ディランやPPMなども連想させてくれるなかなかに聴き応えのあるアルバムだ。
アルバム・タイトルのJourney to the New Worldというテーマだが、この場合のNew Worldはドヴォルザーク9番のNew Worldと同じアメリカ大陸を指す。どこに対してNew Worldなのかというと、これは言うまでもないが英国なのだ。それでアルバム冒頭にはイズビン自身の編曲による英国ルネッサンス~バロック期の作品が並んでいて有名なダウランドの曲もある。ダウランドやその他英国のこの時期の作品は昨今では良く取り上げられECMレーベルなどは特別企画を組むくらいだ。この仄暗い影を纏った独特の旋律とシンプルな和声は、例えばパーセルの作品集などにも共通して感じられる特徴だ。英国由来の曲はグリーンスリーブズで終わる。
そしてアルバムの中盤にはThe Drunken SailorやWild Mountain Thymeが入っていて、なんとも言えない憂愁をそそる旋律は英国作品からの連綿性を強く感じさせられるのだ。そしてフォーク系スタンダードのWayfaring Stranger(さすらいの旅人)を、シャロン・イズビンのギター伴奏を背景にジョーン・バエズ自身が噎ぶように歌うのだ。この辺がこのアルバムの圧巻で、更にイズビンが書き下ろしたというジョーン・バエズ組曲というオマージュ作品へと入っていく。最後はマーク・オコナーのよりモダンな作品群で終わるわけだが、ここへきても冒頭英国のフォーク・古楽の系譜がなおも息づいていることが感じ取れる。そして、聴き終わってみて、このアルバムはアメリカ・フォークの源流を原点から辿るというテーマにしたものだったのだと改めて認識させられるのだった。
(録音評)
SONY Classical、88697454562、通常CD。ジャケット表面にはソニー・レコードの赤白のロゴがなく、背表紙に「SONY」の文字がごく小さく刻まれているだけで、一見しただけではソニーのCDと分からない趣向になっている。
元々の音質自体は良好なのだが、アルバムのテーマ性に従ったイコライジングが施されていて仄暗くアナログ的な調音となっている。敢えてワイドレンジ感を減退させ、ナローレンジを演出しているあたりは完全に確信犯だ。超ハイファイ・サウンドで耳が痺れっぱなしで疲れた時、ふとAMラジオのナローな音が恋しくなる時があるが、この音質はまさにそんな癒し効果を狙ったものだ。原音再生だとか高解像度などというオーディオ的視点で捉えてはならない、調音のみで芸術の域を目指したハイセンスな録音と言える。グラミー賞ノミネートは必至と見た。
1日1回、ここをポチっとクリック ! お願いします。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3544131
Journey to the New World
1 -4. FOUR RENAISSANCE LUTE WORKS
- Transcribed/edited by Sharon Isbin
5-6. ENGLISH FOLKSONGS
- Traditional/arranged for solo guitar by Edward Flower
7. ANDECY - Andrew York
8. WAYFARING STRANGER (with Joan Baez)
Traditional/arranged by Carlos Barbosa-Lima
9-15. JOAN BAEZ SUITE, Opus 144 - John Duarte
- Written for Sharon Isbin*
16. GO ‘WAY FROM MY WINDOW - John Jacob Niles (with Joan Baez)
17-29. STRINGS & THREADS SUITE - Mark O’Connor
(with Mark O’Connor - violin)
Violin & Guitar adaption written for Sharon Isbin.
World Premiere Recording*
Sharon Isbin (guitar)
このアルバムの特徴はHMVサイトに載っているソニーのコメンタリーが全てを物語っているが、実際に聴くと文字で読む論評以上に深い感動と癒しが得られる素晴らしいアルバムだ。特に、英国をルーツとする多くの米国民にとってはどこか耳に懐かしい、そして古き佳き時代を思い出すアルバム構成、そして曲たちではないだろうか。私たち日本人にとっても1960年代に一世を風靡したジョーン・バエズが歌ったフォーク(=カントリー&ウェスタン的な要素も含み)の温もりが再び伝わってくる演出であり、ボブ・ディランやPPMなども連想させてくれるなかなかに聴き応えのあるアルバムだ。
アルバム・タイトルのJourney to the New Worldというテーマだが、この場合のNew Worldはドヴォルザーク9番のNew Worldと同じアメリカ大陸を指す。どこに対してNew Worldなのかというと、これは言うまでもないが英国なのだ。それでアルバム冒頭にはイズビン自身の編曲による英国ルネッサンス~バロック期の作品が並んでいて有名なダウランドの曲もある。ダウランドやその他英国のこの時期の作品は昨今では良く取り上げられECMレーベルなどは特別企画を組むくらいだ。この仄暗い影を纏った独特の旋律とシンプルな和声は、例えばパーセルの作品集などにも共通して感じられる特徴だ。英国由来の曲はグリーンスリーブズで終わる。
そしてアルバムの中盤にはThe Drunken SailorやWild Mountain Thymeが入っていて、なんとも言えない憂愁をそそる旋律は英国作品からの連綿性を強く感じさせられるのだ。そしてフォーク系スタンダードのWayfaring Stranger(さすらいの旅人)を、シャロン・イズビンのギター伴奏を背景にジョーン・バエズ自身が噎ぶように歌うのだ。この辺がこのアルバムの圧巻で、更にイズビンが書き下ろしたというジョーン・バエズ組曲というオマージュ作品へと入っていく。最後はマーク・オコナーのよりモダンな作品群で終わるわけだが、ここへきても冒頭英国のフォーク・古楽の系譜がなおも息づいていることが感じ取れる。そして、聴き終わってみて、このアルバムはアメリカ・フォークの源流を原点から辿るというテーマにしたものだったのだと改めて認識させられるのだった。
(録音評)
SONY Classical、88697454562、通常CD。ジャケット表面にはソニー・レコードの赤白のロゴがなく、背表紙に「SONY」の文字がごく小さく刻まれているだけで、一見しただけではソニーのCDと分からない趣向になっている。
元々の音質自体は良好なのだが、アルバムのテーマ性に従ったイコライジングが施されていて仄暗くアナログ的な調音となっている。敢えてワイドレンジ感を減退させ、ナローレンジを演出しているあたりは完全に確信犯だ。超ハイファイ・サウンドで耳が痺れっぱなしで疲れた時、ふとAMラジオのナローな音が恋しくなる時があるが、この音質はまさにそんな癒し効果を狙ったものだ。原音再生だとか高解像度などというオーディオ的視点で捉えてはならない、調音のみで芸術の域を目指したハイセンスな録音と言える。グラミー賞ノミネートは必至と見た。
1日1回、ここをポチっとクリック ! お願いします。
by primex64
| 2009-05-18 10:39
| Compilation
|
Trackback(1)
|
Comments(2)
Tracked
from 23 blog
at 2009-06-14 23:15
タイトル : 【オーディオ】 オフ会 その1
本日は我が家に、MusicArena の Primex64 さんとPさんに来ていただいた。 私の「いっぱい音楽を聴きたい」という要望のもと、今回もPrimex64さんが、たくさんディスクを持ってきてくれた。(^^) まずぎ..... more
本日は我が家に、MusicArena の Primex64 さんとPさんに来ていただいた。 私の「いっぱい音楽を聴きたい」という要望のもと、今回もPrimex64さんが、たくさんディスクを持ってきてくれた。(^^) まずぎ..... more
Commented
by
jillart
at 2009-05-23 22:34
x
この盤を含めてprimex64 さんの最近のおすすめを何枚か買い込みました。(^^v
これは実に懐の深いアルバムですね。初めて聴くのにどこか懐かしい曲の数々。今風の「癒し」という言葉でと表現するのが憚られるような深遠さがあると思いました。録音もその意図を汲んだような深い音色が印象的です。
いつも良い盤をご紹介いただきありがとうございます。また期待して参ります。
これは実に懐の深いアルバムですね。初めて聴くのにどこか懐かしい曲の数々。今風の「癒し」という言葉でと表現するのが憚られるような深遠さがあると思いました。録音もその意図を汲んだような深い音色が印象的です。
いつも良い盤をご紹介いただきありがとうございます。また期待して参ります。
0
Commented
by
primex64 at 2009-05-25 09:18