2009年 03月 24日
Mahler: Sym#6@MTT/SFSO |
このところ自分的にはマイブームなMTT/SFSOの2002年リリースのマラ6を買った。いっぺんに買い揃えようかとも思ったのだが取り敢えず一枚買い足した。例によって自主制作SFS Media(英国Avieレーベル)のSACDハイブリッド。

http://www.hmv.co.jp/product/detail/620608
マーラー:交響曲第6番『悲劇的』
マイケル・ティルソン=トーマス指揮
サンフランシスコ交響楽団
このマラ6はMTT/SFSOにとってナンバー付きマーラー交響曲チクルスの最初のリリースだったようだ。しかもあの悲劇的なSep.11の直後のライブだそうで、ただでさえ重苦しい作品なのだが更になにやら陰鬱な暗示が見え隠れする企画だ。
そう言えばゲルLSOのマーラー・チクルスも6番が皮切りだったし、ブーレーズのチクルスもVPOと録った6番が皮切りだった。偶然だと思うがなにか謂われがあるのだろうか?
あまり分析的な聴き方をしても面白くはないが、ここまで大地の歌と5番、6番と聴いてきたなかで共通する印象を挙げるなら、
・クールで理知的で、過度な情感を排した解釈
・スピード感に満ちたドラマティックな展開
・丹念で精緻、細密なディテールの描き込み
・起伏に富み色彩感溢れる生き生きとした表現
と出来ようか。これをもたらしている要素はなにか? は、各楽章の演奏時間と実際に聴いた時の印象を比べると見えてくるものがある。同じ6番と言えば最近ではゲルLSOの鮮烈な演奏が想起されるが、これは彼独特の爆速(=ショルティ並)なのであまり参考にはならない。そこでブーレーズVPO盤(以下「P.B」という。)と各楽章ごとの所要時間(iTunes上のトラック実測)を比較してみる。
P.B: 23:07-12:19-14:47-29:10 TOTAL: 79:23
MTT: 24:32-14:02-17:26-31:21 TOTAL: 87:21
どの楽章も演奏時間の上ではP.Bの方が早足であり、MTTは他の演奏に比べてもちょっと遅い位なのだが、実際に聴くとどの楽章もMTTの方がテンポが圧倒的に速く聞こえてしまう。この理由はMTTに共通する独自セオリーにあるようでポケットスコアを読みながら聴き進めるとこのメカニズムがよく分かる。即ち、
・強奏部(f~ff)では速めに演奏する
・弱奏部(p~pp)では遅めに演奏する
・緩徐部はより緩徐に演奏し、少数楽器(ex.木管)を際立たせる
・アチェレランドはより急峻に加速する
・リタルダンドはより時間をかけて減速する
・いかなる場面においてもアインザッツ/リリースは厳密に揃える
という指揮法により疾駆感と繊細さを両立させているようだ。実際には十分な時間をかけて演奏しているのだが、くどくなりがちな強奏部を歩を速めて駆け抜けることで加速度とダイナミズムを獲得し、そして弱奏部や緩徐部ではSFSOの細密な演奏技巧を十二分に引き出した描き込みを施している。
P.B/VPOと聴き比べると明らかなのだが、P.Bの指揮は鈍重で起伏が少ない、強奏部の爆裂は凄まじいエネルギーだがくどい、細部はサラサラと流れるが印象としては後に残らない・・、と言う風に、わりと平坦で淡々とした演奏に聞こえてしまうのだ(だからといってP.Bの解釈が駄目という訳ではないが)。
こういった長大な曲は聴く側の辛抱が強いられ、興行的にはとかく飽きられがちという不利条件が付いて回るが、この指揮法では概ね飽きることなく音楽の中味に十二分に浸って楽しむことが出来る可能性が高いのではないだろうか。やはりMTTの指揮はクールで理知的なのであった。
(録音評)
SFS Media(Avieレーベル)82193600012、録音は2001年9月12-15日と、まさにSep.11の直後だ。SACDレイヤーはここで改めてコメントするのが憚られるほど音質は良い。CDレイヤーも素晴らしい。
(あとがき)
クールでラショナルなマーラーならMTT/SFSOをお薦めしたいと思う。音質も非常に素晴らしいのであるが、その品質を遺憾なく発揮させられる装置/システムはそう多くはないかも知れない。動物的なワイルド系、そして疾駆感に重点を置くならゲルLSOやショルティCSOも選択としては悪くはないと思うが。ブーレーズVPOの立ち位置が微妙だ。これに関しては再度ゆっくりと聴き返してみたいと思う。
1日1回、ここをポチっとクリック ! お願いします。

http://www.hmv.co.jp/product/detail/620608
マーラー:交響曲第6番『悲劇的』
マイケル・ティルソン=トーマス指揮
サンフランシスコ交響楽団
このマラ6はMTT/SFSOにとってナンバー付きマーラー交響曲チクルスの最初のリリースだったようだ。しかもあの悲劇的なSep.11の直後のライブだそうで、ただでさえ重苦しい作品なのだが更になにやら陰鬱な暗示が見え隠れする企画だ。
そう言えばゲルLSOのマーラー・チクルスも6番が皮切りだったし、ブーレーズのチクルスもVPOと録った6番が皮切りだった。偶然だと思うがなにか謂われがあるのだろうか?
あまり分析的な聴き方をしても面白くはないが、ここまで大地の歌と5番、6番と聴いてきたなかで共通する印象を挙げるなら、
・クールで理知的で、過度な情感を排した解釈
・スピード感に満ちたドラマティックな展開
・丹念で精緻、細密なディテールの描き込み
・起伏に富み色彩感溢れる生き生きとした表現
と出来ようか。これをもたらしている要素はなにか? は、各楽章の演奏時間と実際に聴いた時の印象を比べると見えてくるものがある。同じ6番と言えば最近ではゲルLSOの鮮烈な演奏が想起されるが、これは彼独特の爆速(=ショルティ並)なのであまり参考にはならない。そこでブーレーズVPO盤(以下「P.B」という。)と各楽章ごとの所要時間(iTunes上のトラック実測)を比較してみる。
P.B: 23:07-12:19-14:47-29:10 TOTAL: 79:23
MTT: 24:32-14:02-17:26-31:21 TOTAL: 87:21
どの楽章も演奏時間の上ではP.Bの方が早足であり、MTTは他の演奏に比べてもちょっと遅い位なのだが、実際に聴くとどの楽章もMTTの方がテンポが圧倒的に速く聞こえてしまう。この理由はMTTに共通する独自セオリーにあるようでポケットスコアを読みながら聴き進めるとこのメカニズムがよく分かる。即ち、
・強奏部(f~ff)では速めに演奏する
・弱奏部(p~pp)では遅めに演奏する
・緩徐部はより緩徐に演奏し、少数楽器(ex.木管)を際立たせる
・アチェレランドはより急峻に加速する
・リタルダンドはより時間をかけて減速する
・いかなる場面においてもアインザッツ/リリースは厳密に揃える
という指揮法により疾駆感と繊細さを両立させているようだ。実際には十分な時間をかけて演奏しているのだが、くどくなりがちな強奏部を歩を速めて駆け抜けることで加速度とダイナミズムを獲得し、そして弱奏部や緩徐部ではSFSOの細密な演奏技巧を十二分に引き出した描き込みを施している。
P.B/VPOと聴き比べると明らかなのだが、P.Bの指揮は鈍重で起伏が少ない、強奏部の爆裂は凄まじいエネルギーだがくどい、細部はサラサラと流れるが印象としては後に残らない・・、と言う風に、わりと平坦で淡々とした演奏に聞こえてしまうのだ(だからといってP.Bの解釈が駄目という訳ではないが)。
こういった長大な曲は聴く側の辛抱が強いられ、興行的にはとかく飽きられがちという不利条件が付いて回るが、この指揮法では概ね飽きることなく音楽の中味に十二分に浸って楽しむことが出来る可能性が高いのではないだろうか。やはりMTTの指揮はクールで理知的なのであった。
(録音評)
SFS Media(Avieレーベル)82193600012、録音は2001年9月12-15日と、まさにSep.11の直後だ。SACDレイヤーはここで改めてコメントするのが憚られるほど音質は良い。CDレイヤーも素晴らしい。
(あとがき)
クールでラショナルなマーラーならMTT/SFSOをお薦めしたいと思う。音質も非常に素晴らしいのであるが、その品質を遺憾なく発揮させられる装置/システムはそう多くはないかも知れない。動物的なワイルド系、そして疾駆感に重点を置くならゲルLSOやショルティCSOも選択としては悪くはないと思うが。ブーレーズVPOの立ち位置が微妙だ。これに関しては再度ゆっくりと聴き返してみたいと思う。
1日1回、ここをポチっとクリック ! お願いします。
by primex64
| 2009-03-24 11:54
| Symphony
|
Trackback
|
Comments(2)
お世話様です。マーラーの全集はバーンスタインくらいしか持って
いません。、MTTのは音も良いsacdというので、全集が安い値段で
出ないかな?と一枚も買わずに待ってます(爆
出ないかな???
ではでは。
いません。、MTTのは音も良いsacdというので、全集が安い値段で
出ないかな?と一枚も買わずに待ってます(爆
出ないかな???
ではでは。
0
KOYAMA さん
MTTのマーラー解釈はレニーのものとは180度違う趣向ですね。クールで引き締まった演奏が超高音質SACDで楽しめるというおまけ付きです。
自主制作レーベルなので全集として改めて出し直すと言うことはあんまり考えられないですけれどね・・・。まずは番か6番あたりから如何ですか?www
MTTのマーラー解釈はレニーのものとは180度違う趣向ですね。クールで引き締まった演奏が超高音質SACDで楽しめるというおまけ付きです。
自主制作レーベルなので全集として改めて出し直すと言うことはあんまり考えられないですけれどね・・・。まずは番か6番あたりから如何ですか?www




