2009年 01月 29日
Schnittke: Va-Con,Shostakovich: Va Sonata@Tamestit, Kitayenko/Warsaw PO. |
Ambroisie(アンブロワジー=naiveの別ブランド)レーベルの新譜から、売り出し中の気鋭ヴィオリスト=アントワーヌ・タメスティが弾くシュニトケの協奏曲とショスタコのソナタ。

http://www.hmv.co.jp/product/detail/2767623
Alfred Schnittke (1934-1998):
Concerto for viola and orchestra (1985)
1. Largo
2. Allegro molto
3. Largo
Dmitri Shostakovich (1906-1975):
Sonata for viola and piano opus 147 (1975)
4. Moderato
5. Allegretto
6. Adagio
Antoine Tamestit(Va), Markus Hadulla(Pf)
Warsaw Philharmonic Orchestra, Dmitrij Kitajenko(Cond)
シュニトケ: ヴィオラ協奏曲
ショスタコーヴィチ: ヴィオラソナタ Op.147
アントワーヌ・タメスティ(Va)、マルクス・ハドゥラ(Pf)
ドミトリー・キタエンコ(指揮)、ワルシャワ・フィル
タメスティは色んなコンクールや音楽祭への露出が増えてきているヴィオラ奏者で LFJなど来日公演をしたこともあるらしい。
この曲集は珍しく二つともヴィオラのために書かれたオリジナル曲でこのカップリングは珍しいのではないか。なんとも陰鬱で重たいアルバムだ。
シュニトケは新ウィーン楽派(シェーンベルク、ウェーベルン、ベルク)とは関係がない旧ソ連圏の人物。シュニトケ=多様式主義(polystylism)と言われるのであるが、しかしどう聴いても新ウィーン楽派からの強い影響を見て取れるわけで、作風は12音技法に極めて近いと思われる。
多様式主義とは何なのかというと、これは実は定義がよくわからないのである。色々と調べて自分なりにまとめてみると、まず12音技法とトーン・クラスターという現代音楽の定石技法をベースにしていて、そこにバッハの時代の対位法(コントラプンクトゥス)的な表現やその後の古典派/ロマン派/近現代と続く時代のソナタ形式・三部形式・ロンド形式のような構成方法、旋律展開、そして不協和音のみならず他の著名作品から引用した綺麗な協和音の断片などをミックスする一種のポートフォリオ技法と考えられるのだ。
そう言う点ではカップリングされているショスタコ辞世の作品=ヴィオラ・ソナタもそれに近い音型を持ち、協和音とも不協和音ともつかないパートを交互に塗り重ねているし、拍子が連続的に変化したりベートーヴェンの著名ソナタから主題をコラージュしたりと、非常に多様といえば多様だ。最晩年、死の直前に書かれただけあってこと切れる前に静かに停止に向かう心臓の鼓動のような音型がそこかしこに出現する、というのは考えすぎだろうが・・。
例によってこの演奏がうまいのか下手なのかは判別できないが、ヴィオラという陰影に富んだ楽器の音の奥深さ、表現幅のブロードさに強く感じ入る。今井信子や井上祐子を聴いてもそれは感じるのだが、このタメスティという人のこの演奏は伝統的な規範には束縛されない自由闊達でハイスピードな切れ味も同時に感じさせてくれる。
シュニトケのコンチェルトの二楽章は変形ソナタ形式(即ち提示部に明確な第二主題がなく再現部に突如無関係と思われる第二主題?が出現する)または大きな三部形式とみなされる形態を取るのであるが、いずれにせよ中間部に現れる3拍子(または6拍子?)のメロゥで優しく綺麗に弾かれる純粋協和音に包まれた旋律が印象的だ。夢心地で聴いているとドロドロとした第一主題が劈くように切り込んで来て安眠はディスターブされるのであるが・・。
(録音評)
Ambroisie、AM168、通常CD。 このところnaive系の新譜が最初うまく鳴らない現象が頻発しているが、これもそうらしい。何度か鳴らしていたらやっぱり急に視界が開けてきた。最初はどんなものなのか? と疑っていたのだが、やはり今までにないパターンの音だったようで馴染むまである程度の時間は掛かった。
シュニトケの方はVaソロが始まると結構長くて、ついつい無伴奏曲のつもりで聴いているといきなりバックからホルンやらペットやらティンパニやらが出現してぎょっとするくらい焦る。なんだか巧妙な舞台照明が音響的にも明滅しているようでソロVaの時はステージ前方、オケが入るとずっと奥の方まで明るく照らされる感じだ。パーカッションの音が異様に微細に録られていてどきどきする。凄まじいディテールだ。
ショスタコの方はもう少し狭いスタジオでのセッション録音だが残響は自然に録られていてバランスは凄く良い。ここではタメスティのVaがちょっと強調気味、即ちオンマイク気味で録られていてガザゴソ、ゴリゴリと唸りをあげるリアルなVaが楽しめる。純粋な楽器音だけを狙った録音ではなく、あちこちに上部雑音や奏者の唸り声なんかもちゃっかり入っている。
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http://www.hmv.co.jp/product/detail/2767623
Alfred Schnittke (1934-1998):
Concerto for viola and orchestra (1985)
1. Largo
2. Allegro molto
3. Largo
Dmitri Shostakovich (1906-1975):
Sonata for viola and piano opus 147 (1975)
4. Moderato
5. Allegretto
6. Adagio
Antoine Tamestit(Va), Markus Hadulla(Pf)
Warsaw Philharmonic Orchestra, Dmitrij Kitajenko(Cond)
シュニトケ: ヴィオラ協奏曲
ショスタコーヴィチ: ヴィオラソナタ Op.147
アントワーヌ・タメスティ(Va)、マルクス・ハドゥラ(Pf)
ドミトリー・キタエンコ(指揮)、ワルシャワ・フィル
タメスティは色んなコンクールや音楽祭への露出が増えてきているヴィオラ奏者で LFJなど来日公演をしたこともあるらしい。
この曲集は珍しく二つともヴィオラのために書かれたオリジナル曲でこのカップリングは珍しいのではないか。なんとも陰鬱で重たいアルバムだ。
シュニトケは新ウィーン楽派(シェーンベルク、ウェーベルン、ベルク)とは関係がない旧ソ連圏の人物。シュニトケ=多様式主義(polystylism)と言われるのであるが、しかしどう聴いても新ウィーン楽派からの強い影響を見て取れるわけで、作風は12音技法に極めて近いと思われる。
多様式主義とは何なのかというと、これは実は定義がよくわからないのである。色々と調べて自分なりにまとめてみると、まず12音技法とトーン・クラスターという現代音楽の定石技法をベースにしていて、そこにバッハの時代の対位法(コントラプンクトゥス)的な表現やその後の古典派/ロマン派/近現代と続く時代のソナタ形式・三部形式・ロンド形式のような構成方法、旋律展開、そして不協和音のみならず他の著名作品から引用した綺麗な協和音の断片などをミックスする一種のポートフォリオ技法と考えられるのだ。
そう言う点ではカップリングされているショスタコ辞世の作品=ヴィオラ・ソナタもそれに近い音型を持ち、協和音とも不協和音ともつかないパートを交互に塗り重ねているし、拍子が連続的に変化したりベートーヴェンの著名ソナタから主題をコラージュしたりと、非常に多様といえば多様だ。最晩年、死の直前に書かれただけあってこと切れる前に静かに停止に向かう心臓の鼓動のような音型がそこかしこに出現する、というのは考えすぎだろうが・・。
例によってこの演奏がうまいのか下手なのかは判別できないが、ヴィオラという陰影に富んだ楽器の音の奥深さ、表現幅のブロードさに強く感じ入る。今井信子や井上祐子を聴いてもそれは感じるのだが、このタメスティという人のこの演奏は伝統的な規範には束縛されない自由闊達でハイスピードな切れ味も同時に感じさせてくれる。
シュニトケのコンチェルトの二楽章は変形ソナタ形式(即ち提示部に明確な第二主題がなく再現部に突如無関係と思われる第二主題?が出現する)または大きな三部形式とみなされる形態を取るのであるが、いずれにせよ中間部に現れる3拍子(または6拍子?)のメロゥで優しく綺麗に弾かれる純粋協和音に包まれた旋律が印象的だ。夢心地で聴いているとドロドロとした第一主題が劈くように切り込んで来て安眠はディスターブされるのであるが・・。
(録音評)
Ambroisie、AM168、通常CD。 このところnaive系の新譜が最初うまく鳴らない現象が頻発しているが、これもそうらしい。何度か鳴らしていたらやっぱり急に視界が開けてきた。最初はどんなものなのか? と疑っていたのだが、やはり今までにないパターンの音だったようで馴染むまである程度の時間は掛かった。
シュニトケの方はVaソロが始まると結構長くて、ついつい無伴奏曲のつもりで聴いているといきなりバックからホルンやらペットやらティンパニやらが出現してぎょっとするくらい焦る。なんだか巧妙な舞台照明が音響的にも明滅しているようでソロVaの時はステージ前方、オケが入るとずっと奥の方まで明るく照らされる感じだ。パーカッションの音が異様に微細に録られていてどきどきする。凄まじいディテールだ。
ショスタコの方はもう少し狭いスタジオでのセッション録音だが残響は自然に録られていてバランスは凄く良い。ここではタメスティのVaがちょっと強調気味、即ちオンマイク気味で録られていてガザゴソ、ゴリゴリと唸りをあげるリアルなVaが楽しめる。純粋な楽器音だけを狙った録音ではなく、あちこちに上部雑音や奏者の唸り声なんかもちゃっかり入っている。

by primex64
| 2009-01-29 12:21
| Concerto - others
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