2009年 01月 22日
Gershwin/Ravel Cycle 1@Rogé, De Billy/RSO Wien |
今日は新譜ではなく2004年にリリースされたOEHMSのガーシュイン/ラヴェルだ。これは昨年度の優秀録音盤でMusicArena Awardsにも入ったラプソディー・イン・ブルー/パリのアメリカ人/ラヴェル左手のPコンとチクルスを成す第一弾で、頼んでいたものがようやく届いたところ。

http://www.hmv.co.jp/product/detail/1810994
The Gershwin/Ravel Cycle
Gershwin: Piano Concerto In F
Ravel: Piano Concerto in G major
Pascal Roge (piano)
RSO Wien, Betrand de Billy
チクルスの二枚目を先に聴いて気を良くし、それで後から一枚目を求めたというパターンだが、確かにこうやって聴くと納得の一枚目だ。
このラヴェルの両手のPコンは1、3楽章が完全なマルカートで演奏される歯切れの良いものだ。リズムの揺らぎは全くなく心地よい疾駆感が味わえる。ロジェのピアノは例によって非常に巧く、一音一音を丁寧に紡ぎ出す姿勢は不変。それでいて強奏部の音量は大きくしかも荒れたり乱れたりせず純粋で透明度の高い音を保っているのはさすがだ。2楽章のメローな旋律はレガートだがへろへろに酔っぱらうような弾き方ではなくちゃんと芯が通っている。
全体を通してド・ビリーの解釈はディテールを細かく彫り込んでいくやり方で、速いパッセージにも遅いパッセージにも高い明晰さを要求している。そのためか音の数がやたら多く感じられ別の版のスコアではなかろうかと勘ぐるくらいだ。
ガーシュインのPコンは俗にコンチェルト・イン・エフと呼ばれている作品で、個人的にはラプソディー~やパリ~より優れた作品だと思っている。この曲を耳にするのは実に久し振りで鮮烈だった。
この曲にまつわる話しがある。高校の時、この曲の吹奏楽版がブラバンの夏の定期演奏会のメインプログラムに決まった。他の学校がやらない個性的なものを、というのが皆の意見だったためだ。夏の定演が終わると翌9月から次の夏にやる曲を決めて早速練習に入る。パート譜を青焼きして配り、次の夏を目指して譜読み・個人練習、パート練習と進めたのだが、一楽章がどうにも難しくて殆どのパートが瓦解、展開部までも辿り着けないのだ。特に木管隊とユーフォが総崩れで目を覆うものがあった。2ヶ月が過ぎて合わせ練習をやったがまるで演奏にならない。この惨状を見て当時の部長と顧問の先生は危険だがメインの差し替えを決断したのであった(代わりに選んで突貫工事に入ったのは吹奏楽版・展覧会の絵)。結局コンチェルト・イン・エフは平易で元気な3楽章だけを仕上げ、前座で演奏し好評を博した。
他のCDと比べてはいないのでこのロジェ/ド・ビリー/RSOWのコンチェルトが巧いのか下手なのかはよく分からないのだが、とても楽しめる演奏だったのは事実。もうちょっとインプロヴィゼーション的な遊びやメローでアンバー・カラーの展開であっても楽しいとは思う。しかし一応クラシック音楽としての体裁を成すにはレイショナルな解釈だし、ロジェのピアノはもうちょっと暴れて欲しいと思う反面、こっそりとヴィルトゥオーシティを主張している箇所もあったりして、これはこれで良い。
どちらのPコンもなかなかに楽しめる演奏で、これは久し振りに反復して何度も何度も聴き返し、それでは食い足りずiPodに入れて電車の中でも楽しんでいる。
(録音評)
OEHMS OC601、SACDハイブリッド。音質は非常に良い。ディテールが非常に細かい微粒子で構成されていて楽器の一挺一挺が見え透いてしまうような録音だ。のっけからホーンセクションのビーム直進性が強くて凄まじい臨場感に襲われる。
チクルス第二弾は割と遠い客席から俯瞰するような捉え方だったが、この第一弾は一階席前方というパースペクティブであり奏者の息遣いが聞こえる様な距離とマイクアングルだ。
CDレイヤーの方はやや硬質な印象で高域の隈取りもちょっときつめに感じる。また、自然な音場感はSACDレイヤーの方が勝っている。その他で気になるところは特になく、CDレイヤーもよく健闘している方だ。
1日1回、ポチっとクリック ! お願いします。

http://www.hmv.co.jp/product/detail/1810994
The Gershwin/Ravel Cycle
Gershwin: Piano Concerto In F
Ravel: Piano Concerto in G major
Pascal Roge (piano)
RSO Wien, Betrand de Billy
チクルスの二枚目を先に聴いて気を良くし、それで後から一枚目を求めたというパターンだが、確かにこうやって聴くと納得の一枚目だ。
このラヴェルの両手のPコンは1、3楽章が完全なマルカートで演奏される歯切れの良いものだ。リズムの揺らぎは全くなく心地よい疾駆感が味わえる。ロジェのピアノは例によって非常に巧く、一音一音を丁寧に紡ぎ出す姿勢は不変。それでいて強奏部の音量は大きくしかも荒れたり乱れたりせず純粋で透明度の高い音を保っているのはさすがだ。2楽章のメローな旋律はレガートだがへろへろに酔っぱらうような弾き方ではなくちゃんと芯が通っている。
全体を通してド・ビリーの解釈はディテールを細かく彫り込んでいくやり方で、速いパッセージにも遅いパッセージにも高い明晰さを要求している。そのためか音の数がやたら多く感じられ別の版のスコアではなかろうかと勘ぐるくらいだ。
ガーシュインのPコンは俗にコンチェルト・イン・エフと呼ばれている作品で、個人的にはラプソディー~やパリ~より優れた作品だと思っている。この曲を耳にするのは実に久し振りで鮮烈だった。
この曲にまつわる話しがある。高校の時、この曲の吹奏楽版がブラバンの夏の定期演奏会のメインプログラムに決まった。他の学校がやらない個性的なものを、というのが皆の意見だったためだ。夏の定演が終わると翌9月から次の夏にやる曲を決めて早速練習に入る。パート譜を青焼きして配り、次の夏を目指して譜読み・個人練習、パート練習と進めたのだが、一楽章がどうにも難しくて殆どのパートが瓦解、展開部までも辿り着けないのだ。特に木管隊とユーフォが総崩れで目を覆うものがあった。2ヶ月が過ぎて合わせ練習をやったがまるで演奏にならない。この惨状を見て当時の部長と顧問の先生は危険だがメインの差し替えを決断したのであった(代わりに選んで突貫工事に入ったのは吹奏楽版・展覧会の絵)。結局コンチェルト・イン・エフは平易で元気な3楽章だけを仕上げ、前座で演奏し好評を博した。
他のCDと比べてはいないのでこのロジェ/ド・ビリー/RSOWのコンチェルトが巧いのか下手なのかはよく分からないのだが、とても楽しめる演奏だったのは事実。もうちょっとインプロヴィゼーション的な遊びやメローでアンバー・カラーの展開であっても楽しいとは思う。しかし一応クラシック音楽としての体裁を成すにはレイショナルな解釈だし、ロジェのピアノはもうちょっと暴れて欲しいと思う反面、こっそりとヴィルトゥオーシティを主張している箇所もあったりして、これはこれで良い。
どちらのPコンもなかなかに楽しめる演奏で、これは久し振りに反復して何度も何度も聴き返し、それでは食い足りずiPodに入れて電車の中でも楽しんでいる。
(録音評)
OEHMS OC601、SACDハイブリッド。音質は非常に良い。ディテールが非常に細かい微粒子で構成されていて楽器の一挺一挺が見え透いてしまうような録音だ。のっけからホーンセクションのビーム直進性が強くて凄まじい臨場感に襲われる。
チクルス第二弾は割と遠い客席から俯瞰するような捉え方だったが、この第一弾は一階席前方というパースペクティブであり奏者の息遣いが聞こえる様な距離とマイクアングルだ。
CDレイヤーの方はやや硬質な印象で高域の隈取りもちょっときつめに感じる。また、自然な音場感はSACDレイヤーの方が勝っている。その他で気になるところは特になく、CDレイヤーもよく健闘している方だ。
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by primex64
| 2009-01-22 09:20
| Concerto - Pf
|
Trackback
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Comments(6)
こんにちは。
トラックバックをありがとうございました。
ガーシュウィンの方はすでに聴いていたのですが、ラヴェルは今日聴いてみました。録音条件の違いもあるのでしょうが、デュトワ指揮で弾いたときよりも、ロジェのピアノはしっとりと濃い叙情感があるように感じます。以前はもっと軽やかに弾いていましたが、この録音では表現が緻密になっているように思います。
伴奏はとてもカラフルで、確かに音の密度が高いですね。ガーシュウィンもシンフォニックで躍動感があって、オケ伴奏のガーシュウィンの中でもかなり良い演奏なのではないでしょうか。
私はもっぱらカッチェン&マントヴァーニを聴いているので、ロジェのピアノがちょっと重たい気はしますがクラシックらしい真面目な品の良さがあるように思います。
トラックバックをありがとうございました。
ガーシュウィンの方はすでに聴いていたのですが、ラヴェルは今日聴いてみました。録音条件の違いもあるのでしょうが、デュトワ指揮で弾いたときよりも、ロジェのピアノはしっとりと濃い叙情感があるように感じます。以前はもっと軽やかに弾いていましたが、この録音では表現が緻密になっているように思います。
伴奏はとてもカラフルで、確かに音の密度が高いですね。ガーシュウィンもシンフォニックで躍動感があって、オケ伴奏のガーシュウィンの中でもかなり良い演奏なのではないでしょうか。
私はもっぱらカッチェン&マントヴァーニを聴いているので、ロジェのピアノがちょっと重たい気はしますがクラシックらしい真面目な品の良さがあるように思います。
0
yoshimiさん
突然のTBを差し上げ失礼を致しました。
なるほど、確かに近年のロジェって、ソロの録音(例えば何度目かのドビュッシーとかも)では以前よりも高速スケールがほとばしらずしっとりしている気がします。
カッチェンってNJ生まれの天才肌で、残念ながら夭逝した人ですよね。演奏は聴いたことはありませんが・・。
またおいで下さいませww
突然のTBを差し上げ失礼を致しました。
なるほど、確かに近年のロジェって、ソロの録音(例えば何度目かのドビュッシーとかも)では以前よりも高速スケールがほとばしらずしっとりしている気がします。
カッチェンってNJ生まれの天才肌で、残念ながら夭逝した人ですよね。演奏は聴いたことはありませんが・・。
またおいで下さいませww
作曲とヴァイオリン演奏の玉木宏樹です。
私儀、このたび「クラシック埋蔵金、発掘指南書」(出版芸術社¥1800)を上梓致しました。
不当にも埋もれてしまった名曲150曲を紹介していますが、今回、
http://8724.teacup.com/justint/bbsの掲示板を建て、作曲家名と作品名をお知らせしています。
一度ご覧になられてご意見,感想を賜れば幸甚でございます。
NPO法人 純正律音楽研究会のホームページもリニューアルしました。
http://just-int.com/
以上,よろしくお願い致します。
玉木宏樹
http://8724.teacup.com/justint/bbs
私儀、このたび「クラシック埋蔵金、発掘指南書」(出版芸術社¥1800)を上梓致しました。
不当にも埋もれてしまった名曲150曲を紹介していますが、今回、
http://8724.teacup.com/justint/bbsの掲示板を建て、作曲家名と作品名をお知らせしています。
一度ご覧になられてご意見,感想を賜れば幸甚でございます。
NPO法人 純正律音楽研究会のホームページもリニューアルしました。
http://just-int.com/
以上,よろしくお願い致します。
玉木宏樹
http://8724.teacup.com/justint/bbs
こんばんは。
ガーシュウィンのコンチェルトを今日また聴いてみましたが、ロジェ/ド・ビリー/RSOWはかなり良い演奏だと思います。
オケは凄く上手いですね。シンフォニックだけれどスピード感もあってドラマティック。表情豊かでいろんな楽器の音がクリアに聴こえてきて面白いです。
ロジェの音色と響きも多彩で、音がとても綺麗ですし、冒頭のアンニュイな雰囲気や、華麗な第2楽章の終盤も良いですね。第3楽章も力感十分で良いのですが、個人的にはもう少しテンポの速い方が好みです。
ロジェのピアノがちょっと重たいと思ったのは、猛スピードでパワフルなカッチェン(ロジェのお師匠さんです)の演奏と比べるからであって、他のピアニストと比べたらそんなことはないのです。
このコンチェルトは何度聴いても素晴らしい曲ですね。たしかに、ラプソディ・イン・ブルーやパリのアメリカ人よりもずっと凝っていて、聴きごたえがあります。
ガーシュウィンのコンチェルトを今日また聴いてみましたが、ロジェ/ド・ビリー/RSOWはかなり良い演奏だと思います。
オケは凄く上手いですね。シンフォニックだけれどスピード感もあってドラマティック。表情豊かでいろんな楽器の音がクリアに聴こえてきて面白いです。
ロジェの音色と響きも多彩で、音がとても綺麗ですし、冒頭のアンニュイな雰囲気や、華麗な第2楽章の終盤も良いですね。第3楽章も力感十分で良いのですが、個人的にはもう少しテンポの速い方が好みです。
ロジェのピアノがちょっと重たいと思ったのは、猛スピードでパワフルなカッチェン(ロジェのお師匠さんです)の演奏と比べるからであって、他のピアニストと比べたらそんなことはないのです。
このコンチェルトは何度聴いても素晴らしい曲ですね。たしかに、ラプソディ・イン・ブルーやパリのアメリカ人よりもずっと凝っていて、聴きごたえがあります。
yoshimiさん、毎度です。
このオケは去年あたりから個人的に着目していますが、精緻で音が綺麗、それでいてダイナミックで良いです。昨今はベートーヴェン・チクルスなんかも録っていてなかなか意欲的です(筋肉質なベートーヴェンです)。
カッチェンというのがロジェの師匠とは知りませんでした。カッチェンはアメリカ人、ロジェがフランス人と言うことでガーシュウィンとラヴェルの関係に似ていますねww
このオケは去年あたりから個人的に着目していますが、精緻で音が綺麗、それでいてダイナミックで良いです。昨今はベートーヴェン・チクルスなんかも録っていてなかなか意欲的です(筋肉質なベートーヴェンです)。
カッチェンというのがロジェの師匠とは知りませんでした。カッチェンはアメリカ人、ロジェがフランス人と言うことでガーシュウィンとラヴェルの関係に似ていますねww




