Schubert: Sonata A-min D.821 Etc@Fabio Di Càsola, Alena Cherny |
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・シューベルト:アルペジオーネ・ソナタ イ短調 D.821(Cl版)
・ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番ト長調 Op.78『雨の歌』(Cl版)
・プロコフィエフ:フルート・ソナタ ニ長調 Op.94(Cl版)
ファビオ・ディ・カソラ(クラリネット)
アレナ・チェルニー(ピアノ)
この3曲はいずれもクラリネットのために書かれた曲ではなく、他の独奏楽器のために書かれたソナタをクラリネット用に編曲したものだ。このようなトランスクリプション版は、往々にして当該ソリストのヴィルトゥオーシティを誇示するために使われることが多く、例えば独奏楽器としては出番が少ないVaやFg、Ob、Cbなどのために編曲された作品は数多い。しかし、この三曲のトランスクリプション演奏に関してはそう言った技巧面のアクロバティックな要素よりかは音楽的な鑑賞価値が高いものであり、この三人の作家の特質をよく表している。
シューベルトのこのソナタは1800年代初頭に考案されたアルペジオーネという弦楽器のために書かれた曲なのだが、当のアルペジオーネはその演奏機構上、また技巧上の問題からすぐに廃れてしまい今や絶滅楽器の一つとなっている。楽器の外形はチェロを小型にした様なもので、フィンガーボードはフレットを備え調弦は現代のギターと酷似したものだったようで、別名ギター・チェロとも呼ばれていた。この形状と特徴からは完全なヴィオール属(例えばバス・ド・ヴィオール=ヴィオラ・ダ・ガンバ)かと思われるのだが、ルーツは全く異なるようだ。
このアルペジオーネ・ソナタはオリジナル楽器の音域に当てはめてVcやVaで弾かれることが多く、また一つ上の音域のFlでの演奏も時折見られるが、このCDのこのクラリネット向け編曲は帯域的にはFlと同等と言って良い。シューベルトのストレートかつ牧歌的な形質を色濃く残す第一楽章の演奏は素晴らしい。ずっと聴いているとこの闊達で明るい展開部のパッセージはクラリネットにとても似合っていると思い始めるので不思議なものだ。VcやVaには見られないハイスピードで直線的な旋律進行は聴いていて気持ちがよいし、屈託のない、それでいてどことなくユーモラスな音の膨らみが白眉だ。
次のブラームスの名作ソナタ・雨の歌だが、これは三楽章冒頭の主題が自らの同名歌曲から採られているのでその名が付いている。そのためか編曲による単純な焼き直し作品と思われがちだが、これは全く新しい純粋な器楽アンサンブル作品と言って良い。ブラームスはクラリネット初め希少な独奏楽器のための曲を数多く作曲した人物だが、何故かこのCDで取り上げたのはVnのソナタの編曲版だ。ブラームスはこのVnソナタを他の楽器用に演奏されることを推奨していた向きがあって、自身が好んで演奏したナチュラルホルンへの編曲も一部行った形跡があるという。このアンニュイで優美な作品はこのカソラのClにかかると呪術的な深みを帯びた現代的な演奏に様変わりする。
(録音評)
SONY BMG Classical、8869732433-2、SACDハイブリッド。録音はRadiostudio Zurich Switzerland、2007/12/10-12、Producer: Peter Laengerとある。
このSACDは驚くほど音が良く、従来のSONY系列とは似ても似つかない素晴らしい出来映えだ。録音担当はTritonus Musikproduktion GmbH とあって、外部のレコーディング・ファームを使っている。このページのAwardsの欄を見るとこの会社は2007年度のグラミー賞を獲得していて、その対象作品はMTT/SFSOのマーラー7番という。なるほど、この高音質の謎は解けた。
CDレイヤーの音はSACDレイヤーのそれとはかなり異なる。CDレイヤーのClはその胴が一回り細くなった感じのメタリックでソリッドなプレゼンスとなる。一方のSACDレイヤーの楽器/奏者の実在感は凄まじく、バッフル面後方1メートルでClが実際に鳴っているような錯覚に囚われる。
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先日のPさんちのオフ会でも、このCDの録音は抜群でした。どうやらこのCDも、ソニーが絡んでそうですが。
発注済みですがまだ入手できず。。。
どちらにせよ、高音質ソフトが増えるのは、喜ばしいことです。
買われましたか。なかなか晴れ晴れとしてよろしいでしょ?ww たまには室内楽をマッタリ聴くのもオツですよね。