Schubert: Trout, Cramer: P-Quintet Op.79@Riko Fukuda/Nepomuk Fortepiano Quintet |
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・J.B.クラーマー:ピアノ五重奏曲Op.79
・シューベルト:ピアノ五重奏曲D.667『ます』
ネポムク・フォルテピアノ五重奏団、福田理子(FortePiano)
ネポムク・フォルテピアノ五重奏団とは、福田理子という欧州で広く活動するフォルテピアノに専念しているピアニストが1999年に設立したフォルテピアノ五重奏団で、他にこの器楽構成で活動している団体は知らない。ネポムクとは、多作で有名な(それでいて名はあまり知られていない)作曲家=フンメルのミドルネームで、恐らくそれに因んだものと思われる。
その名が表すとおり、福田理子とこの五重奏団は世にあまり知られていない名作を発掘して演奏・CD録音することを主な活動テーマとしているようだ。このCDの前半には知る人ぞ知る作曲家・クラーマーの五重奏曲が納められているが、この曲の原曲は抽象的なクラヴィーア=鍵盤楽器(即ち現代においては現代ピアノで演奏されることを暗黙裏に示すもの)ではなくフォルテピアノとの指定がされている珍しい曲だ。
クラーマーはピアノ作品、即ち当時で言うとフォルテピアノのための曲を多く書いた作家で、ピアノを習っている人ならばクラーマー=ビューロー60番練習曲集でその名をよく知っているであろう。即ち、クラーマーが書いたフォルテピアノ向けの膨大な習作・練習曲から、歴史的名指揮者兼ピアニスト(=BPOの初代常任指揮者)であったハンス・フォン・ビューローが60曲を厳選して編纂した練習曲集で有名だ。
クラーマーのこの曲を聴くのは初めてだが、何とも清潔で凛とした明るく端正な曲で、弦楽4部+フォルテピアノが実に帯域バランス良く馴染んだ作品。一方、後ろに入っている鱒は伸び伸びした好演で、なおかつフォルテピアノの渋く大人しく密やかな響きが典雅で古風な風情を醸している。当時の楽器の構成は恐らくはこのスケール、もしくはこれにとても近いものだったものと推測され、そういった点ではオリジナル復元演奏としての価値も高い演奏だ。
しかし、今年は鱒の新譜CDを結構聴いた。トリオ・ショーソン+井上典子、それとズーカーマン・アンサンブルも元気で秀逸だったが、ピリオド系アプローチのこのCDもなかなか楽しめた。
(録音評)
ブリリアント、BRL93771、通常CD。全体に強めのアンビエントで音色はどちらかというと暖色系、フォルテピアノの音色に合わせたセピア系の調音が施されていると考えられる。現代の超高音質録音か? と問われれば答えはノーだが、サロン的な雰囲気がたっぷりと味わえる音楽性豊かな録音だ。
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