2008年 12月 02日
Mahler: Das Lied von der Erde@MTT/SFSO. |
英国AVIEレーベルの秋の新譜からMTT(マイケル・ティルソン・トーマス)/SFSO(サンフランシスコ響)の大地の歌。年も押し迫ってきたが、夏~秋の新譜がいまだ消化できておらず少々焦り気味。
・マーラー:交響曲 大地の歌
スチュアート・スケルトン(テノール)
トーマス・ハンプソン(バリトン)
サンフランシスコ交響楽団
マイケル・ティルソン・トーマス(指揮)
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2770125
MTT/SFSOがマーラー・チクルスを録っているのは知っていたがなかなか手が回らずに放置していたところ店頭でこれを見つけて摘み食いした。このチクルスは千人の交響曲を残すだけ、もう少しで終了となるようだ。
あまり期待もせずに針を降ろしてみたが、これは結構良い演奏だ。一般的には2、4、6楽章をコントラルト独唱とするのが通例だが、このCDでは太く渋いバリトン独唱としている。スコア上はどちらでも可能という指示のようだ。女声特有のピーキーなビームが飛ばず落ち着いてしっとりした歌い込みはかなり良い。
SFSOは常任がブロムシュテットの時代から爽やかな直進性が特徴となる現代的なサウンドとプレゼンスを持ったオケなのだがMTTになってからも更にその美点が伸ばされている感があり、事実この録音でも少々細めだがビブラートを殆どかけない弦の純度は高く、そしてユニゾン/ポリフォニー共に極めて緻密だ。
MTTのリードは他の多くの大地の歌と違ってレガート基調で進行する。手近にあるブーレーズ/VPO盤と比較すると1楽章を除き演奏時間はどれも長めであり、6楽章に至っては3分近くも余計にかかっている。しかし実測のテンポとは相反して体感速度はMTT/SFSOの方が随分と速く感じられるのだ。この盤を何度も通して聴いているとブーレーズ盤は少々ダルで飽きて来てしまうくらいなのだ。
レガートが出色なのは3楽章、アジアン・テイストで短い楽章なのだが真っ青な大空を飛翔するような伸びやかなスケールと独特の和声がポップで華やか。また長い最終6楽章だが、ここではカウンター・パート(対旋律や裏和音)を担当する木管隊を大きくクローズアップした独特の解釈であり、まるで別の曲を聴いている風情だ。ここにバリトンが太く朗々と切り込んで来て分厚いテクスチャが完成するという油絵の重ね塗りのような技法は新鮮。音数が異様に多いことに圧倒される。
既リリースの他のマーラーも気になる一枚である。余裕があれば是非通しで聴いてみたいものだ。
(録音評)
AVIE Recordsレーベル、82193600192、SACDハイブリッド。録音は2007年9月26日~29日、サンフランシスコ、デイヴィス・シンフォニー・ホール。このレーベルはマイナーだがMTTと専属契約をしている関係上、昨今ではSFSOのプライベートレーベル専門という感じになっているようだ。
近年のライブ収録盤としては暗騒音/会場ノイズは比較的多めに入っている方で臨場感は良好。所々MTTが歌いながら主旋律とハモっている声が入っており、これはご愛敬だ。
音質はかなり良く、音色傾向やサウンドステージの作りとしてはOEHMSのオケ録音と酷似している。SFSOの美しく直進する弦が克明に捉えられ、また木管も金管も明晰なパースペクティブをもって収録されている。全体の見通しは恐ろしく良好で透明度は抜群。プレゼンスはSACDレイヤーがCDレイヤーを圧倒する。尚、一聴しただけだととても地味で特徴のない録音に聞こえるが、実は超高解像度録音なのであった。
1日1回、ポチっとクリック ! お願いします。


スチュアート・スケルトン(テノール)
トーマス・ハンプソン(バリトン)
サンフランシスコ交響楽団
マイケル・ティルソン・トーマス(指揮)
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2770125
MTT/SFSOがマーラー・チクルスを録っているのは知っていたがなかなか手が回らずに放置していたところ店頭でこれを見つけて摘み食いした。このチクルスは千人の交響曲を残すだけ、もう少しで終了となるようだ。
あまり期待もせずに針を降ろしてみたが、これは結構良い演奏だ。一般的には2、4、6楽章をコントラルト独唱とするのが通例だが、このCDでは太く渋いバリトン独唱としている。スコア上はどちらでも可能という指示のようだ。女声特有のピーキーなビームが飛ばず落ち着いてしっとりした歌い込みはかなり良い。
SFSOは常任がブロムシュテットの時代から爽やかな直進性が特徴となる現代的なサウンドとプレゼンスを持ったオケなのだがMTTになってからも更にその美点が伸ばされている感があり、事実この録音でも少々細めだがビブラートを殆どかけない弦の純度は高く、そしてユニゾン/ポリフォニー共に極めて緻密だ。
MTTのリードは他の多くの大地の歌と違ってレガート基調で進行する。手近にあるブーレーズ/VPO盤と比較すると1楽章を除き演奏時間はどれも長めであり、6楽章に至っては3分近くも余計にかかっている。しかし実測のテンポとは相反して体感速度はMTT/SFSOの方が随分と速く感じられるのだ。この盤を何度も通して聴いているとブーレーズ盤は少々ダルで飽きて来てしまうくらいなのだ。
レガートが出色なのは3楽章、アジアン・テイストで短い楽章なのだが真っ青な大空を飛翔するような伸びやかなスケールと独特の和声がポップで華やか。また長い最終6楽章だが、ここではカウンター・パート(対旋律や裏和音)を担当する木管隊を大きくクローズアップした独特の解釈であり、まるで別の曲を聴いている風情だ。ここにバリトンが太く朗々と切り込んで来て分厚いテクスチャが完成するという油絵の重ね塗りのような技法は新鮮。音数が異様に多いことに圧倒される。
既リリースの他のマーラーも気になる一枚である。余裕があれば是非通しで聴いてみたいものだ。
(録音評)
AVIE Recordsレーベル、82193600192、SACDハイブリッド。録音は2007年9月26日~29日、サンフランシスコ、デイヴィス・シンフォニー・ホール。このレーベルはマイナーだがMTTと専属契約をしている関係上、昨今ではSFSOのプライベートレーベル専門という感じになっているようだ。
近年のライブ収録盤としては暗騒音/会場ノイズは比較的多めに入っている方で臨場感は良好。所々MTTが歌いながら主旋律とハモっている声が入っており、これはご愛敬だ。
音質はかなり良く、音色傾向やサウンドステージの作りとしてはOEHMSのオケ録音と酷似している。SFSOの美しく直進する弦が克明に捉えられ、また木管も金管も明晰なパースペクティブをもって収録されている。全体の見通しは恐ろしく良好で透明度は抜群。プレゼンスはSACDレイヤーがCDレイヤーを圧倒する。尚、一聴しただけだととても地味で特徴のない録音に聞こえるが、実は超高解像度録音なのであった。
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by primex64
| 2008-12-02 10:02
| Symphony
|
Trackback
|
Comments(4)

トラックバックありがとうございました。
録音の評が演奏の説明と一体化しており素晴らしいですね。
MTTは昔の無垢な指揮ぶりはそんなに変わっていないと思います。
でもこんなにすごい大地の歌になるなんて思ってもみませんでした。
ハンプソンがかなりマジですのでつられたのかも知れません。
SACDプレイヤーは初期から物色してまして今は2台目です。
個人的に好きなSACDは、ソニーの初期のものでハイブリッドではないものです。SACDオンリー。
今はいろいろなフォーマットが出てきており楽しくCDを聴くことができますね。
河童メソッドは演奏評がメインですが、これからもよろしくお願いします。
録音の評が演奏の説明と一体化しており素晴らしいですね。
MTTは昔の無垢な指揮ぶりはそんなに変わっていないと思います。
でもこんなにすごい大地の歌になるなんて思ってもみませんでした。
ハンプソンがかなりマジですのでつられたのかも知れません。
SACDプレイヤーは初期から物色してまして今は2台目です。
個人的に好きなSACDは、ソニーの初期のものでハイブリッドではないものです。SACDオンリー。
今はいろいろなフォーマットが出てきており楽しくCDを聴くことができますね。
河童メソッドは演奏評がメインですが、これからもよろしくお願いします。
0
河童さん、突然にTBを差し上げて連絡も差し上げず失礼を致しました。
最近ではシングルレイヤー(単層)SACDは殆ど出なくてハイブリッドが多いですね。この前、久し振りに五嶋みどりのCDを買ったら珍しくシングルレイヤーでした。レーベルはやはりソニークラシカルで・・。
河童さんの精力的な演奏インプレ、これからも楽しく読ませて頂きたく存じ上げます。こちらこそヨロシクです!
最近ではシングルレイヤー(単層)SACDは殆ど出なくてハイブリッドが多いですね。この前、久し振りに五嶋みどりのCDを買ったら珍しくシングルレイヤーでした。レーベルはやはりソニークラシカルで・・。
河童さんの精力的な演奏インプレ、これからも楽しく読ませて頂きたく存じ上げます。こちらこそヨロシクです!

トラックバックありがとうございました。
私のBLOGはもう長い間更新も止まっていて自分でも存在を意識しないほどであります。
また、トラックバックが送られたと言うお知らせメールアドレスのメールもほとんど目にしませんので気づくのが遅れました。
6番から始まったMTT/SFSのマーラー全集。最新の「大地の歌」まで全て所持しており、どれも最高の音とパフォーマンスであるため私の一番の宝物になりました。現在私は、フロント2CH、リア2CHの4.0で聴いています。基本的な音は最初の6番からほとんど変わりませんが、良く聴くと若干変化(進化)しているように思えます。特に今回の「大地の歌」は編成が小さい為か細部がことごとくよく聞こえてきますね。
6番、3番、4番、5番、7番・・・・とどれもこれも素晴らしく、結局すべて私の数多いマーラーコレクションの最高位に鎮座しています。
adamsheaven
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また、トラックバックが送られたと言うお知らせメールアドレスのメールもほとんど目にしませんので気づくのが遅れました。
6番から始まったMTT/SFSのマーラー全集。最新の「大地の歌」まで全て所持しており、どれも最高の音とパフォーマンスであるため私の一番の宝物になりました。現在私は、フロント2CH、リア2CHの4.0で聴いています。基本的な音は最初の6番からほとんど変わりませんが、良く聴くと若干変化(進化)しているように思えます。特に今回の「大地の歌」は編成が小さい為か細部がことごとくよく聞こえてきますね。
6番、3番、4番、5番、7番・・・・とどれもこれも素晴らしく、結局すべて私の数多いマーラーコレクションの最高位に鎮座しています。
adamsheaven
adamsheavenさん こんにちは!
そうですか、MTT/SFSOを全部(8番以外)をお持ちなんですね。今回の大地の歌が凄く良い具合だったので他も揃えようかと画策中です。かなり大人の解釈で自分の好みにもバッチリ合っている様な気がしています。コメントありがとうございました!
そうですか、MTT/SFSOを全部(8番以外)をお持ちなんですね。今回の大地の歌が凄く良い具合だったので他も揃えようかと画策中です。かなり大人の解釈で自分の好みにもバッチリ合っている様な気がしています。コメントありがとうございました!