Purcell: Fantasias for the Viols@Savall / Hesperion XXI |
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2720912
パーセル:
・3声の3曲のファンタジア
・4声の9曲ファンタジア
・6声のイン・ノミネ
・7声のイン・ノミネ
エスペリオンXXI
ジョルディ・サヴァール(Gamb(ドシュ))
ヴィーラント・クイケン(Gamb)
ソフィ・ワティヨン(Gamb(オートコントル))
ユニス・ブランダン(Gamb(テノール))
セルジ・カサデムント(Gamb(テノール))
マリアンヌ・ミュラー(Gamb)
フィリップ・ピエルロ(Gamb)
ヘンリー・パーセルの人となりや生涯についてはWikiなどに詳しいが、少しだけ記す。パーセルはイギリスの作曲家/音楽家で、若くして才能を開花させ最終的には宮廷楽士を務めた。生まれたのはJ.S.バッハより四半世紀早い1659年ということからバロック期に位置付けられる人物である。その生涯は短く36歳という若さで逝去しているが作品は割と多い。
皮肉なものでパーセルのオリジナル作品よりも、後のイギリスの近現代を代表する作曲家ブリテンが書いた「青少年のための管弦楽入門 Op.34 」の出自としての方が有名なのではなかろうか。このブリテンの曲のサブタイトルは「~パーセルの主題による変奏曲とフーガ」となっていて、同郷の先輩大作曲家パーセルに敬意を表する格好になっているのだ。
これらの曲はヴィオール属の楽器群によるサロン風の雰囲気を持った小曲集で、いずれも肩肘を張って聴くような厳めしいものではない。どちらかというと食事をしたり談笑をするときの背景音楽として適するような中庸の速度、抑揚、穏やかな旋律進行を狙ったように感じられる。
楽器の音域は通奏低音のバス・ガンバ(バス・ド・ヴィオール)にドシュ(アルト音域)、オート=コントル(テノールの高い方)、テノールが載ってそれぞれが主旋律、対旋律を交互に担当する形態で、バッハらがその後に確立した管弦楽組曲の原型とみなされる合奏(コンソート)形態である。対旋律が主旋律に対して対等な進行を示す対位法に関してもその端緒が垣間見られるが、後の時代のフーガやリチェルカーレ、コントラプンクトゥスといった本格的に激しく瞑想的な曲想ではなくごく穏やかな掛け合いだ。対旋律が現れない箇所はシンプルなユニゾンで切々と流れていくが、この辺りではルネサンスの気風も感じられる。
ぼけっとしながら気持ちを鎮めるとき、また手元を動かしたり目を動かしている時に背景音楽として流しておくとゆったりと落ち着いた気分を持続できそうな音楽だ。ちょっと哀愁に満ちているので、逆に元気になりたい・高揚したいときには不向きかもしれない。
(録音評)
ALIA VOXレーベル、AVSA9859、SACDハイブリッド、録音は1994年10月カタルーニャ、カルドーナ城とある。マスターはPCM録音だろうが仕上がりはDSD録音されたのではないかと勘違いするほどディテールが柔らかく細密かつアンビエントが非常に自然だ。これはいつものALIA VOXの音質に共通するものであって、従って音質は極めて優秀だ。CDレイヤーでは空気感が多少後退して聞こえる。どちらのレイヤーも録音レベルは高め。オフマイクでもオンマイクでもなく、その中間のニア・マイクとでも言えるような絶妙なマイク・アレンジで、楽器の直接音、擦過音、そして残響がほぼ均等に生々しく収録されている。
収録場所のタルーニャのカルドーナ城とは、このページの後半に載っている「カルドナ/聖ヴィンセンソ参事会教会」のことと思われる。確かに石造りで残響が長そうな建築物ではある。
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