2008年 11月 05日
Tchaikovsky: P-Con#1, Rachmaninov: P-Con#3@Gulsin Onay |
Triolilaという知らないレーベルの新譜でチャイコンとラフPコン3番の豪華カップリング。微妙な齢の女性がピアノの前で屈託なく笑っているジャケットが目を引いた。

http://www.tower.co.jp/item/2441693/
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 Op.23
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第3番 ニ短調 Op.30
ギュルスィン・オナイ(Pf)
ビストリク・レジューハ(指)スロヴァーク・フィル(1997年11月7日Live)
エミール・タバコフ(指)ビルケントS.O(2005年4月3日Live)
この女流ピアニストはギュルスィン・オナイといい、トルコ国内にあっては極めて著名な人物、国民的な演奏家らしいが、日本では余り知られていない。過去に来日し公演もしたらしいのだがこのCDを買うまでは全く知らなかった。
本人のWebサイトはこちら:http://www.gulsinonay.com/newsite/main-en.php
結構な数のCDをリリースしているようだ。今回のこれも例によってキング・インターナショナルのチャレンジングな輸入となるが、他のリリースも取り扱っているかどうかは不明。
チャイコンの入りはごく普通に絢爛豪華、モデレートなもので安心して聴き始めたのだが、最初のカデンツァからただならぬ気配が漂う。スタインウェイが時々鋭い悲鳴を上げるし、アチェレランドの急峻さはかつて例がないほどの高速域に達する。アインザッツからのオケとの絡みがまた凄い乗りで瞬きをする暇もないほど目まぐるしい弾きっぷり。緩徐楽章のピアノの歌わせ方は独特のクールさであってとても女流とは思われない醒めたもの。そしてフィナーレの凄まじいピアニズムの炸裂はいったい何なのだ。これほどピアノの音数の多いチャイコンは余り聴いたことがない。とにかく手数が多く、そしてなんと言っても豪快かつ精巧な高速スケール、分散和音、シンコペーションは現代のヴィルトゥオーゾそのものだ。ただ者ではない。コーダがやむやいなや嵐のような喝采が鳴り響いて我に戻った。
そしてラフ3番。チャイコンで打ちのめされたあと、甘美にやるせなく美しい旋律が待っているかと思いきや・・・、いきなりぶっ飛んでしまった。なんと速く巧いラフなのだ。もともとラフ3は最難曲の一つに数えられるコンチェルトで、弾き手の操鍵テクニックを過度に要求する曲だ。現代の名ピアニストをもってしても最後まで弾き通すのは息も絶え絶え、旋律とカデンツァを一通りトレースするだけでもアップアップという代物なのだが、これをいまだかつて聴いたこともない様な超絶技巧を用いて超高速で弾き倒してしまうラフ3というのは未体験ゾーンだ。そして特筆すべきはその技巧ではなく、乗りの良さである。本人は大いに楽しみながら時に情感を込め、時に痛快に疾駆しているのである。後からライナーを読んで納得した。この人は自他共に認める根っからのラフ弾きらしいのだ。
これは凄いピアノ弾きだ。こんな人がいたとはつゆ知らなかった。他にもショパンのポロネーズ集などを録音しているらしいのだが、果たしてどんな弾き倒し方をしているんだかとても気になる。
(録音評)
Triolilaレーベル、279923、通常CD。チャイコンの方は何の衒いもないワンポイント録り流しという風情の録音で、ライブ特有の会場ノイズなども盛大に入っている。音質はかなり良い方でメジャー・レーベルの現代録音よりも優れている。ラフの方はもうちょっと洗練された録音で弦が美しく際立っている。勿論両者ともピアノの狙い方は一級品で、痛いほど叩かれて悲鳴を上げるスタインウェイが克明に捉えられている。
このチャイコンは伝説とされているライブを録ったもので、かつてプライベートレーベルから限定数発売されたというが、今回はいわば幻の音源の再デビューということらしい。
とにかく生々しい優秀録音だ。チャイコン・マニアにもラフ好きにも超お薦めの一枚。
1日1回、ポチっとクリック ! お願いします。


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チャイコフスキー:ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 Op.23
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第3番 ニ短調 Op.30
ギュルスィン・オナイ(Pf)
ビストリク・レジューハ(指)スロヴァーク・フィル(1997年11月7日Live)
エミール・タバコフ(指)ビルケントS.O(2005年4月3日Live)
この女流ピアニストはギュルスィン・オナイといい、トルコ国内にあっては極めて著名な人物、国民的な演奏家らしいが、日本では余り知られていない。過去に来日し公演もしたらしいのだがこのCDを買うまでは全く知らなかった。
本人のWebサイトはこちら:http://www.gulsinonay.com/newsite/main-en.php
結構な数のCDをリリースしているようだ。今回のこれも例によってキング・インターナショナルのチャレンジングな輸入となるが、他のリリースも取り扱っているかどうかは不明。
チャイコンの入りはごく普通に絢爛豪華、モデレートなもので安心して聴き始めたのだが、最初のカデンツァからただならぬ気配が漂う。スタインウェイが時々鋭い悲鳴を上げるし、アチェレランドの急峻さはかつて例がないほどの高速域に達する。アインザッツからのオケとの絡みがまた凄い乗りで瞬きをする暇もないほど目まぐるしい弾きっぷり。緩徐楽章のピアノの歌わせ方は独特のクールさであってとても女流とは思われない醒めたもの。そしてフィナーレの凄まじいピアニズムの炸裂はいったい何なのだ。これほどピアノの音数の多いチャイコンは余り聴いたことがない。とにかく手数が多く、そしてなんと言っても豪快かつ精巧な高速スケール、分散和音、シンコペーションは現代のヴィルトゥオーゾそのものだ。ただ者ではない。コーダがやむやいなや嵐のような喝采が鳴り響いて我に戻った。
そしてラフ3番。チャイコンで打ちのめされたあと、甘美にやるせなく美しい旋律が待っているかと思いきや・・・、いきなりぶっ飛んでしまった。なんと速く巧いラフなのだ。もともとラフ3は最難曲の一つに数えられるコンチェルトで、弾き手の操鍵テクニックを過度に要求する曲だ。現代の名ピアニストをもってしても最後まで弾き通すのは息も絶え絶え、旋律とカデンツァを一通りトレースするだけでもアップアップという代物なのだが、これをいまだかつて聴いたこともない様な超絶技巧を用いて超高速で弾き倒してしまうラフ3というのは未体験ゾーンだ。そして特筆すべきはその技巧ではなく、乗りの良さである。本人は大いに楽しみながら時に情感を込め、時に痛快に疾駆しているのである。後からライナーを読んで納得した。この人は自他共に認める根っからのラフ弾きらしいのだ。
これは凄いピアノ弾きだ。こんな人がいたとはつゆ知らなかった。他にもショパンのポロネーズ集などを録音しているらしいのだが、果たしてどんな弾き倒し方をしているんだかとても気になる。
(録音評)
Triolilaレーベル、279923、通常CD。チャイコンの方は何の衒いもないワンポイント録り流しという風情の録音で、ライブ特有の会場ノイズなども盛大に入っている。音質はかなり良い方でメジャー・レーベルの現代録音よりも優れている。ラフの方はもうちょっと洗練された録音で弦が美しく際立っている。勿論両者ともピアノの狙い方は一級品で、痛いほど叩かれて悲鳴を上げるスタインウェイが克明に捉えられている。
このチャイコンは伝説とされているライブを録ったもので、かつてプライベートレーベルから限定数発売されたというが、今回はいわば幻の音源の再デビューということらしい。
とにかく生々しい優秀録音だ。チャイコン・マニアにもラフ好きにも超お薦めの一枚。
1日1回、ポチっとクリック ! お願いします。

by primex64
| 2008-11-05 10:30
| Concerto - Pf
|
Trackback
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Comments(6)
このCDも凄く面白そうですね。とても参考になりました、いつも有難う御座います♪
0
特にラフのPコンは凄いの一言・・。機会があれば聴いてみて下さいませ。

お世話様です、koyamaです。
このCDを購入しました。たしか、アルゲリッチにも同一曲の名盤と
いわれるのがあったような・・・・コンドラシンと一緒ですか?ジャケに
「ラフマニノフ3番のbest」みたいな売り文句がありました。
このCDの企画者も、アルゲリッチ盤は意識しているのでしょうかね。
で、このCD、チャイコフスキーはポピュラーなクラシックで、私でも
何枚か所有してますが、まあ、凄みというか、切れ味というか、分からない
なりに強烈な凄さを感じました。
ラフマニノフは、アルゲリッチ盤が行方不明、聴き比べが出来ないですが、
比べなくとも、このテクニックは抜群ですね。
いやあ、携帯プレーヤーにも入れて今日も出勤がてら聴いてましたが、
迫力満点、エネルギーに溢れた音楽。
いろいろとお教えいただいて有難うございました。
ではでは。
このCDを購入しました。たしか、アルゲリッチにも同一曲の名盤と
いわれるのがあったような・・・・コンドラシンと一緒ですか?ジャケに
「ラフマニノフ3番のbest」みたいな売り文句がありました。
このCDの企画者も、アルゲリッチ盤は意識しているのでしょうかね。
で、このCD、チャイコフスキーはポピュラーなクラシックで、私でも
何枚か所有してますが、まあ、凄みというか、切れ味というか、分からない
なりに強烈な凄さを感じました。
ラフマニノフは、アルゲリッチ盤が行方不明、聴き比べが出来ないですが、
比べなくとも、このテクニックは抜群ですね。
いやあ、携帯プレーヤーにも入れて今日も出勤がてら聴いてましたが、
迫力満点、エネルギーに溢れた音楽。
いろいろとお教えいただいて有難うございました。
ではでは。
koyamaさん
禁断のオナイを聴かれましたかww 良いですよね、この乗りと男性的な? 弾きっぷり! 他にも色々と録音しているらしいのですがまだ入手出来ていません。最近の日記にはオナイのYouTube画像も上げていますのでご覧になって下さい。
禁断のオナイを聴かれましたかww 良いですよね、この乗りと男性的な? 弾きっぷり! 他にも色々と録音しているらしいのですがまだ入手出来ていません。最近の日記にはオナイのYouTube画像も上げていますのでご覧になって下さい。

オナイの画像も拝見、エンゲラーほどではないですが、ゆうけいさんの
お言葉に従えば、オナイも「おばさん」wですね。
でも、凄さも含めてコントロールしているのでしょう、繊細さも、それと
「弾き倒して、ピアノが悲鳴」も自由自在なのでしょうね。
それと、アルゲリッチも発見(爆
チャイコとのカップリングではなく、20世紀の偉大なるピアニストの
シリーズにも入ってました。リスト、ラベル(左手?)、これにラフ3と
凄いセット。
オナイと比べると、やはり録音自体の違いは大きく感じました。
が、アルゲリッチ、オナイ、アルゲリッチと一楽章の冒頭数分を
聴き比べましたが、アルゲリッチも良いですね。2回目に聴いた
アルゲリッチで、結局全曲通して聴いてしまいました。
アルゲリッチのソロとコンツェルトのBOX、重複は承知で
買おうかな? リマスター、オリジナル・ジャケだしw
ではでは。
お言葉に従えば、オナイも「おばさん」wですね。
でも、凄さも含めてコントロールしているのでしょう、繊細さも、それと
「弾き倒して、ピアノが悲鳴」も自由自在なのでしょうね。
それと、アルゲリッチも発見(爆
チャイコとのカップリングではなく、20世紀の偉大なるピアニストの
シリーズにも入ってました。リスト、ラベル(左手?)、これにラフ3と
凄いセット。
オナイと比べると、やはり録音自体の違いは大きく感じました。
が、アルゲリッチ、オナイ、アルゲリッチと一楽章の冒頭数分を
聴き比べましたが、アルゲリッチも良いですね。2回目に聴いた
アルゲリッチで、結局全曲通して聴いてしまいました。
アルゲリッチのソロとコンツェルトのBOX、重複は承知で
買おうかな? リマスター、オリジナル・ジャケだしw
ではでは。
koyamaさん 毎度です。
そうですね。女流と言えば元祖的存在のアルゲリッチがいましたね。昨今ではフェスティバルやコンペティションの企画ばっかりやっていて演奏家としての活動は低調ですものね・・。若い頃のアルゲリッチは美貌の超絶技巧でほぼ完璧な女流でしたからね~ww そのアルゲリッチももう老齢ですわ orz
アルゲリッチのBOX、良さそうですよね・・ww
そうですね。女流と言えば元祖的存在のアルゲリッチがいましたね。昨今ではフェスティバルやコンペティションの企画ばっかりやっていて演奏家としての活動は低調ですものね・・。若い頃のアルゲリッチは美貌の超絶技巧でほぼ完璧な女流でしたからね~ww そのアルゲリッチももう老齢ですわ orz
アルゲリッチのBOX、良さそうですよね・・ww