2008年 10月 27日
Mahler: Sym#3@Gergiev/LSO |
LSO Liveの新譜、マラ3@ゲルLSOで、ゲルによるマーラー・チクルス第4弾だ。
マーラー:交響曲第3番ニ短調
アンナ・ラーション(メゾ・ソプラノ)
ティフィン少年合唱団
ロンドン交響楽団合唱団
ロンドン交響楽団
ワレリー・ゲルギエフ(指揮)
(一枚目/一部:1楽章、二枚目/二部:2~6楽章)
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2788467
このチクルスは6→1→7と来て、そして最長にして最大4管構成のこの3番だ。この長さゆえか、国内のコンサート・プロに取り上げられることは希で、生で聴いたことのある人は少ないのではないだろうか。
ゲルのこの3番は賛否両論、好みも意見も分かれる解釈と出来映えだ。個人的にはゲルが今回提示したこの新機軸に対しては好ましいと感じている。マーラーの交響曲の録音で名盤と言われているものは、古くは愛弟子ブルーノ・ワルター、ムラヴィンスキーに始まり、ショルティ、テンシュテット、アバドなどが上げられる。今回の3番に関しては手元にあったブーレーズVPO盤を規範として聴き比べてみた。
ご存知の通り、このマラ3は長大な第1楽章およびフィナーレ第6楽章の間に、この両端楽章とはテーマ連関性を少しだけ持たせた中小規模の楽章が疎結合で並ぶという構成なのだが、とにかくこの両端部が極めて長いもので、演奏する側にも聴く側にも忍耐を要求する作品だ。
冒頭一楽章のゲルLSOの演奏は出色で、過度のドライブ感と著しく先鋭な描き込みが凄まじい。曲が進むにつれ前半の印象が薄れていくことが普通であるこの曲では珍しく、旋律やリズムが脳裏に焼き付いて離れないという鮮烈、いや激烈なパフォーマンスだ。例によってゲルのタクトはかなり急ぎ足でありブーレーズVPO盤より2分ほど速い。
そして中間部の4つの楽章へ移っていくのであるが、2~3楽章は従来のゲルでは余り見られない丁寧でゆったりと落ち着いた展開だ。エネルギー感が1楽章から見ると一気に減退しメロウな流れだ。3楽章には有名なポストホルンが登場し滑らかな角笛の変奏主題を吹くのだが、この盤ではバンダのフリューゲルホルンにゆったりと歌わせている。演奏時間はブーレーズ盤に比べて二つの楽章とも長い。ただ、ダルなだけなのかというとそうではなくある程度の緊迫感は維持されている。しかしブーレーズのタクトほどの呪術感はない。あっさりと言えばあっさり。
4楽章は独奏アルトが切々と歌い上げるニーチェのツァラトゥストラはかく語りきの歌詞が主たる聴き所なのだが、ここでのオケ・サポートも割とあっさり目だ、だが、ここの中間部からは徐々に歩を速め、いつものアチェレランドが見え隠れしてくる。小さな5楽章のBimm bamm!は非常に闊達かつ快活な少年合唱で目が覚める。ここは出色の出来であり過去最高の色彩感、まったりと淀んだブーレーズVPOと比べるべくもない。
問題は6楽章フィナーレで、ここの賛否が最も分かれる所ではないだろうか。ここは三部形式の主題が何度も何度も手を変え品を変え繰り返される変形ロンド形式の長い長い楽章で、弱~中奏部における主たるプレーヤーは弦楽隊なのだが、今までのどのマラ3よりも艶がなく、言ってみれば木で鼻を括ったような解釈なのだ。ドライで現代的と言えなくはないが物足りなさは否めない。
元々LSOの弦楽隊の基本性能はピカイチとは言い難いのであるが、それほど劣ったものでもないと思う。しかし、このゲルの解釈はまるで意図的に弦の歌いを抑制して、その強い抑圧感の背景で木管と金管を浮かび上がらせようと言う狙いがあるように感じられる。ブーレーズ盤と比較すると可哀相なくらいプアな弦の響きである。勿論、VPOの弦の艶やかさは世界一級品であることは論を待たないわけで、それを差し引いたとしても貧相な響きだ。対する木管のふくよかさ、金管の正確無比なビームは出色である。そして、前半~中盤まで抑圧されてきたためか、コーダの全奏は弦も含め一気に頂に駆け上がり、圧巻の一言。
誤解を承知で言うなら、現在のゲルのリードは高回転高出力型のエンジンのトルクカーブに似ていて、強奏部においてそのトルクが最大となる。今回比較対象としたブーレーズは典型的な中回転域高トルク型であり、その分解能は高いし緻密なドライブ力を有する。前者の魅力はことこのマラ3に関しては1楽章に現れ、後者の魅力は6楽章に現れている、と出来そうだ。ゲルは、恐らくこれからの生涯、あと数回はマラ3を録ると思う。
(録音評)
LSO Live、LSO0660、SACDハイブリッド。録音は2007年9月24日、ロンドン、バービカンホール(ライヴ)、プロデューサー:ジェイムズ・マリンソン、エンジニア:ニール・ハッチンソン&ジョナサン・ストークス、DSD Recordingとある。
音質は過去最高、透過性と視認性・・いわゆる「見える度数」も過去最高。特に一楽章のダイナミックレンジは凄まじく、DSDならではの高分解能と相俟って未曾有の録音品質を達成している。このチクルスはリリースを新しく重ねるたびにその音質が向上しており、どこまで良くなっていくのかが気になる存在だ。
弱音部が非常に多い演奏なので、CDレイヤーでは弱奏における弦の減退やホーンの歪み感が僅かに感じられる。但し、水準以上の音質であり大きな破綻はない。
ゲル好きで尚かつ良い音で作品を楽しみたいという人にはイチオシの傑作SACDだ。是非ともSACDレイヤーで聴いて欲しい二枚組であった。
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マーラー:交響曲第3番ニ短調 アンナ・ラーション(メゾ・ソプラノ)
ティフィン少年合唱団
ロンドン交響楽団合唱団
ロンドン交響楽団
ワレリー・ゲルギエフ(指揮)
(一枚目/一部:1楽章、二枚目/二部:2~6楽章)
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2788467
このチクルスは6→1→7と来て、そして最長にして最大4管構成のこの3番だ。この長さゆえか、国内のコンサート・プロに取り上げられることは希で、生で聴いたことのある人は少ないのではないだろうか。
ゲルのこの3番は賛否両論、好みも意見も分かれる解釈と出来映えだ。個人的にはゲルが今回提示したこの新機軸に対しては好ましいと感じている。マーラーの交響曲の録音で名盤と言われているものは、古くは愛弟子ブルーノ・ワルター、ムラヴィンスキーに始まり、ショルティ、テンシュテット、アバドなどが上げられる。今回の3番に関しては手元にあったブーレーズVPO盤を規範として聴き比べてみた。
ご存知の通り、このマラ3は長大な第1楽章およびフィナーレ第6楽章の間に、この両端楽章とはテーマ連関性を少しだけ持たせた中小規模の楽章が疎結合で並ぶという構成なのだが、とにかくこの両端部が極めて長いもので、演奏する側にも聴く側にも忍耐を要求する作品だ。
冒頭一楽章のゲルLSOの演奏は出色で、過度のドライブ感と著しく先鋭な描き込みが凄まじい。曲が進むにつれ前半の印象が薄れていくことが普通であるこの曲では珍しく、旋律やリズムが脳裏に焼き付いて離れないという鮮烈、いや激烈なパフォーマンスだ。例によってゲルのタクトはかなり急ぎ足でありブーレーズVPO盤より2分ほど速い。
そして中間部の4つの楽章へ移っていくのであるが、2~3楽章は従来のゲルでは余り見られない丁寧でゆったりと落ち着いた展開だ。エネルギー感が1楽章から見ると一気に減退しメロウな流れだ。3楽章には有名なポストホルンが登場し滑らかな角笛の変奏主題を吹くのだが、この盤ではバンダのフリューゲルホルンにゆったりと歌わせている。演奏時間はブーレーズ盤に比べて二つの楽章とも長い。ただ、ダルなだけなのかというとそうではなくある程度の緊迫感は維持されている。しかしブーレーズのタクトほどの呪術感はない。あっさりと言えばあっさり。
4楽章は独奏アルトが切々と歌い上げるニーチェのツァラトゥストラはかく語りきの歌詞が主たる聴き所なのだが、ここでのオケ・サポートも割とあっさり目だ、だが、ここの中間部からは徐々に歩を速め、いつものアチェレランドが見え隠れしてくる。小さな5楽章のBimm bamm!は非常に闊達かつ快活な少年合唱で目が覚める。ここは出色の出来であり過去最高の色彩感、まったりと淀んだブーレーズVPOと比べるべくもない。
問題は6楽章フィナーレで、ここの賛否が最も分かれる所ではないだろうか。ここは三部形式の主題が何度も何度も手を変え品を変え繰り返される変形ロンド形式の長い長い楽章で、弱~中奏部における主たるプレーヤーは弦楽隊なのだが、今までのどのマラ3よりも艶がなく、言ってみれば木で鼻を括ったような解釈なのだ。ドライで現代的と言えなくはないが物足りなさは否めない。
元々LSOの弦楽隊の基本性能はピカイチとは言い難いのであるが、それほど劣ったものでもないと思う。しかし、このゲルの解釈はまるで意図的に弦の歌いを抑制して、その強い抑圧感の背景で木管と金管を浮かび上がらせようと言う狙いがあるように感じられる。ブーレーズ盤と比較すると可哀相なくらいプアな弦の響きである。勿論、VPOの弦の艶やかさは世界一級品であることは論を待たないわけで、それを差し引いたとしても貧相な響きだ。対する木管のふくよかさ、金管の正確無比なビームは出色である。そして、前半~中盤まで抑圧されてきたためか、コーダの全奏は弦も含め一気に頂に駆け上がり、圧巻の一言。
誤解を承知で言うなら、現在のゲルのリードは高回転高出力型のエンジンのトルクカーブに似ていて、強奏部においてそのトルクが最大となる。今回比較対象としたブーレーズは典型的な中回転域高トルク型であり、その分解能は高いし緻密なドライブ力を有する。前者の魅力はことこのマラ3に関しては1楽章に現れ、後者の魅力は6楽章に現れている、と出来そうだ。ゲルは、恐らくこれからの生涯、あと数回はマラ3を録ると思う。
(録音評)
LSO Live、LSO0660、SACDハイブリッド。録音は2007年9月24日、ロンドン、バービカンホール(ライヴ)、プロデューサー:ジェイムズ・マリンソン、エンジニア:ニール・ハッチンソン&ジョナサン・ストークス、DSD Recordingとある。
音質は過去最高、透過性と視認性・・いわゆる「見える度数」も過去最高。特に一楽章のダイナミックレンジは凄まじく、DSDならではの高分解能と相俟って未曾有の録音品質を達成している。このチクルスはリリースを新しく重ねるたびにその音質が向上しており、どこまで良くなっていくのかが気になる存在だ。
弱音部が非常に多い演奏なので、CDレイヤーでは弱奏における弦の減退やホーンの歪み感が僅かに感じられる。但し、水準以上の音質であり大きな破綻はない。
ゲル好きで尚かつ良い音で作品を楽しみたいという人にはイチオシの傑作SACDだ。是非ともSACDレイヤーで聴いて欲しい二枚組であった。
1日1回、ポチっとクリック ! お願いします。
by primex64
| 2008-10-27 10:47
| Symphony
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Comments(1)
元気にしていますか。
マーラーは良く効きました。
今はそれほどではありません。
今は、ちょっとパイプオルガンの曲を作ってみようと思っているのです。
せっかく近くにあるのですから
良くコツを学んでいけます。
ただ、私は、頭の中に響いた音しか捉えられないので
変な曲が出来るかもしれません。
今日もスマイル
マーラーは良く効きました。
今はそれほどではありません。
今は、ちょっとパイプオルガンの曲を作ってみようと思っているのです。
せっかく近くにあるのですから
良くコツを学んでいけます。
ただ、私は、頭の中に響いた音しか捉えられないので
変な曲が出来るかもしれません。
今日もスマイル
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