Eyes Look No More@Raphaela Danksagmueller Etc. |
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「うつろな瞳」
1. 作者不詳: グリーンスリーブス変奏曲
2. パーセル: ソナタ ト短調
3. ジョン・ダニエル: うつろな瞳
4. ジョン・ダウランド: 流れよ、わが涙
5. ヨハン・ショップ: 涙のパヴァーヌ
6. エクルズ: スコットランド民謡によるグラウンド
7. マシュー・ロック: 組曲 第4番 ホ短調
8. トレット: トレット氏によるグラウンド
9. ジョン・ブル: メランコリー・パヴァーヌとガリアルド
10. アンヌ・ダニカン・フィリドール: ニ短調
11. 作者不詳: イタリアのグラウンド
ラファエラ・ダンクザークミュラー(リコーダー)
西谷尚己(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
大塚直哉(チェンバロ/ヴァージナル)
16~17世紀に掛けて作曲されたちょっと虚ろでアンニュイな曲集で、ほぼ全編がリコーダーで吹かれる素朴でシンプルな器楽構成の楽曲。この当時の社会や文化程度がどうであったかは詳細に窺い知る術もないのだが、なんとも仄暗くてやるせない風情が漂う曲たちだ。アルバム名になっているジョン・ダニエルのうつろな瞳は、確かに題名そのもののちょっと空虚でやるかたない悲哀も感じさせるしみじみとした佳作で、ダンクザークミュラーというリコーディストの表現幅がよく現れた演奏だ。続くダウランドの作品もまた独特の哀愁、そして諦念の調べが物悲しくて宜しい。
時々噎び泣くバス・ド・ヴィオール(ガンバ)と温度感の低い通奏低音を弾くチェンバロがなんとも言えぬ頽廃のエモーションを織り込んでいく中、時にソプラノ、時にアルトと持ち替えられるリコーダーが情感豊かに、しかし闊達に純朴な旋律を紡ぐ。色彩感で例えるなら暗いパステル、そして暖色系にして仄暗い風情が空間を支配するこのプログラムはなかなかに秀逸。これから寒い冬に向かう昨今、モンスーン気候帯である我が国にも四季が存在したことを確実に知らしめてくれる旋律及び和声であった。
余り宜しくないことがあった時、無理に心の士気を鼓舞しようとはせず、たまにはこのアルバムをしんみりと聴いて心の擦り傷を癒したいもの。
(録音評)
WAONレーベル、WAONCD090、通常CD。録音は2007年5月20-22日、アートコートギャラリー、大阪とある。このレーベルは録音に拘っているらしく機材リストが明記してあり、また録音風景の写真なども載っている。
DSD recording
Microphone: Earthworks QTC-1mp
Method: One point stereo A-B
Pre-amp: Millennia Media HV-3C-I
Recorder: TASCAM DV-RA1000
Clock: Rosendahl nanosyncs
Monitor: Bakoon Products SCA-7511改+Sennheiser HD580/CLOU cable
PB Monitor: Waon Reference Monitor
96kHz 24bit PCM editing
DAW: Waon DAW mk III
DDC: dCS974
Monitor: Waon Reference Monitor
但し、このホール自体アンビエントの豊かな優秀な施設のようであるし、プログラムと演奏が秀逸なだけに、この音質は実に残念な出来だ。Earthworks社製の無指向性マイクの特質なのだろうか、音色自体は悪いと言うほどではないがSchoepsやDPAで録られるnaiveやMIRAREといった欧州レーベルには遠く及ばない。
しかし、それにもましてこの録音の最大の問題はマイク・セッティングにある。オンマイク過ぎるのとマイク・アングルが良くなくて正しいフォーカスを結んでいないのである。リコーダーの音像は肥大しすぎて左右バッフル間に巨大な洞窟が出現しボーボーと滲んだ音を出し、ガンバも茫洋とした響きでディテールが判然としない。唯一、最後尾に位置するチェンバロだけが音像を結ぶのだが、これもディテールがはっきりとせず、この楽器の特徴である高域の鋭いスクラッチ音のビームが殆ど飛んで来ない。
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