欧米のPWMアンプ事情とDIY'erの指向 - 3 |
しかし、このTripathのICが流行する前には自作PWMアンプのトレンドは何もなかったのかというとそうではない。
デンマークのLC Audioというキット会社のPWMアンプユニットがかなりもてはやされた時代があったのだ。
http://www.lcaudio.com/
ここのホームページにあるように、現在ではCDプレーヤー・チューン向けクロック、PWMとアナログAB級のアンプ・モジュール、そしてその他アクセサリーという柱で通信販売を展開しており、アンプ基板以外には電源トランスや電源ユニット、ソフトスタート用コントローラー、スピーカー端子やRCA端子、コネクタ類、配線材からRIAAフォノアンプに至るまでDIYのためのパーツをほぼ一式揃えて販売するようになっている。
しかし、現在の欧米ではLC Audioのモジュールは人気を失っていて、その名を目にすることは少なくなった。その代わりDIY'erの間で人気が出てきているのがオランダHypex社のUcDと呼ばれるPWMアンプ・モジュールである。
http://www.hypex.nl/
UcDは「Universal Class D」を略した頭文字である。このアンプの特徴は、負荷変動に対して位相回転しないこと、及び、いかなる周波数スペクトルにおいても出力インピーダンスが不変(=低域においても高域においてもダンピング・ファクタが一定)というものらしく、Hypex社の創業者の一人であるBruno Putzeysがフィリップス研究所時代に発明したものである。フィリップスが半導体部門を分離してNXPセミコンダクターを設立する際に彼らがスピンアウトし独立・起業したのがHypex社であり、2004年にはフィリップスからUcDの特許と意匠権の譲渡を受けている。尚、現在のNXPはUcDではない一般的なPWMドライバICを開発・販売しているというのはなんとも皮肉なものだ。
UcDモジュールは現在では最大出力に応じてUcD180、UcD400、UcD700と3つの基本ラインを取り揃えており、そのほかに電源基板、トランス、ソフトスタート、その他アクセサリを含め通信販売で誰でも購入することが出来る。最近になって中出力のSMPS(スイッチング電源)も発売しており、今後は地球温暖化対策の趨勢からかトランス排除の方向へ向かうものと期待される。 UcDを取り扱うサードパーティのショップも幾つかあるようで、美麗なケースを含めたキットとして購入することも可能だ。http://www.mm-audio.nl/
あまり有名な話しでないかも知れないが、イスラエルのハイエンド・スピーカー・メーカーであるYGアコースティクス社のANAT REFERENCE IIという製品のアクティブ・サブウーファーには特別チューンを施されたUcD400モジュールが組み込まれている。
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