Mahler: Sym#1@Norrington/SWR |
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Gustav Mahler: Symphony No. 1 - including "Blumine"
1. Langsam, Schleppend - Im Anfang Sehr Gemachlich
2. 'Blumine' Andante Allegretto
3. Kraftig Bewegt, Doch Nicht Zu Schnell
4. Feierlich Und Gemessen, Ohne Zu Schleppen
5. Sturmisch Bewegt
Roger Norrington / SWR Stuttgart Radio Symphony Orchestra
このところ流行らない「花の章」付きで、しかも二楽章に位置するという大胆な構成。この位置に花の章があった稿から批判に耐えかねたマーラー自身が削除してしまったもので、他の多くの花の章付き録音では最終トラックにひっそりと置いてあるのが普通だ(ジンマン/チューリッヒ・トーンハレもその構成)。
しかしピリオド演奏に拘るノリントンは敢えてここへ持ってきている。これについてはノリントン自身がライナーにコメントを書いている。ちょっと長いが引用する。
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ご存知のようにマーラーはもともとこの作品を4楽章ではなく、5楽章の作品として書きました。そしてそれを「Tondichtung in Symphonieform(交響詩)」とし、各楽章に描写的な表題をつけました。第2楽章は私たちがよく知っている元気の良いスケルッツオではなく、優しく魅惑的な愛の一場面となっていて、マーラーはそれを「花の章」と名付けました。しかし、後にこの交響曲に対する厳しい批評の前に、彼はその楽章を削除しました。
シュトゥットガルト放送交響楽団とリハーサルを始めてみて、私はこの交響曲を再び本来の形で聴いてみたいという思いを強くしました。この作品が何も欠けていない完全な形になったときに見せる概観や詩的な組み立てが、何故私にとってとても重要なのかを説明しましょう。
マーラーは5楽章の形で美しいバランスを作り上げました。活動-瞑想-活動-瞑想、そして最後に再び活動。しかしこのバランスは「花の章」を削除することによって失われてしまいました。また、作品の筋の運びにおいても、早い段階で愛という主題を出すことがとても重要だったのです。マーラーは自分にとって初めての交響曲が、彼の作品の大半もそうであるように、自らの実体験から生まれたものであることを明確にしています。若き指揮者兼作曲家の彼は非常に繊細で傷つきやすい心をもっていました。
カッセルという町で、彼はあるソプラノ歌手に想いを寄せ、「花の章」と「Lieder eines fahrenden Gesselen」を作曲したのです。ライプツィヒで既婚女性に恋したことの苛立ちなどが、彼にこの作品を交響曲に仕立て上げるエネルギーを与えました。
この壮大な作品に一貫している要素が愛です。(例えばそれは第3楽章のウィンナ・ワルツのトリオにも現れています。)そして、優しい第2楽章が削除されたとき、それが失われてしまったように私には感じられるのです。この第2楽章は、マーラーの作品の中で特に優れたものではないかもしれませんが、それは愛の芽生えをしっかりと呈示しているのです。ちょうど第4楽章(皮肉な葬送行進曲)が愛の終焉を表しているように。
最終楽章の壮大な「指輪物語」的苦闘の中で、愛の2つの面が、2つの恍惚とした緩徐部分で再現されます。まず「花の章」での愛の芽生えが細やかなノスタルジーとして思い起こされます。その後愛の終焉が、強烈なシンバルの音と共に訪れたヒーローの死に映し出されます。この戦いにおいて、勝利はヒーローの死によってしか得られないのです。
サー・ロジャー・ノリントン
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これを本来の第二楽章として鑑賞するか、またはボタン一つで花の章を飛ばして一般的な全四楽章形式で鑑賞するかは聴き手の判断だ。ま、ノリントンは色々述べているが、自分的には花の章は別の曲という気がして、この場に挿入されていることに違和感を禁じ得ない。
全体を通しての印象は、前半が淡泊でサラサラと流れ、最終楽章が分厚い和声と硬派な構築性を示すコントラストの解釈で、ライブ向きの組み立て方と言える。ブーレーズなどのセッション録音の様に最初から陰鬱かつ緊張を強いられる演奏ではない点がノリントンの美点かも知れない。
また、サラサラした感触はノンビブラート演奏による直截的な旋律進行によるところが大きいだろう。しかし、全編ノンビブラートかというと、実はよく聴くと随所でソロをとるパート(オーボエやフルート、金管)ではビブラートをしっかりと掛けている箇所が散見される。
最終楽章の怒涛の攻めは出色であり、前楽章までの淡泊かつ規則正しいテンポ取りとの対比が凄まじいものがある。これはこれで聴かせる解釈と演奏だ。
(録音評)
Hänssler Classicレーベル、CD93.137、通常CD。収録は2004年9月30日~10月1日、シュトゥットガルトのリーダーハレでのライブ録音。
音質は透明にして多少の硬質感と細さを伴った手堅いもの。サウンドステージの展開はワンポイント的にブロードで自然だが、各パートの分解能は高解像度であり、これはマルチマイクの特徴だ。しかし、細密ディテールが重層的でかつステージ再現が自然なのは特筆すべきことでありマスタリングのセンスと優秀性は随一だ。
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