Debussy & Medtner@Irina Mejoueva |
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・ドビュッシー:ベルガマスク組曲
(前奏曲/メヌエット/月の光/パスピエ)
・メトネル:忘れられた調べ 作品38
(追憶のソナタ/優美な舞曲/祝祭の舞曲/川の歌/田舎の舞曲/夕べの歌/森の舞曲/追憶)
イリーナ・メジューエワ(ピアノ)
メジューエワは日本に活動拠点を移した前後、新潟でのリサイタル/コンサートを精力的に行ってきており、その後、富山県へも時折足を運ぶようになりコンサートも数度開かれた。このCDは私の故郷・富山県で録音されたものであり、レーベルもまた地元の若林工房というところだ。このレーベルの主宰者があるきっかけでメジューエワを紹介され、そして演奏が大いに気に入り、5年程前から数枚のCD録音が実現した。
ベルガマスク組曲は少々遅めのテンポではあるが非常に繊細かつ優美なタッチである。まさに女流と言える優しい、刺激の少ないドビュッシーだ。技巧的には申し分ないが、その冴えが大きく表出することはない。上部雑音は比較的多い方で、ペダルワークは多めだが響きが濁るほど多用はしていない。
一方のメトネルは、ロシアのショパンと呼ばれているだけに和声の美しさと鋭角的な旋律進行が特徴的だ。どこか甘美でありながら哀愁を湛えた響きはショパンに似ている。この孤高の作品をメジューエワは丁寧だが激情的に弾いており、聴いていてなかなかに引き込まれるものがある。ロシア風味のショパン、いやショパン風味のロシア音楽なのだろう。メジューエワの滑らかなタッチにより紡がれる強いパッションは一聴の価値あり。
(録音評)
レーベルは富山県魚津市のマイナー、若林工房。精力的で前衛的な作品で知られ、今回のCDもなかなかの出来だ。録音は2006年12月22-24日、富山県魚津市の新川(にいかわ)文化ホール、24bit録音とある。
このホールは富山県の県営ホールであり、愛称をミラージュホールという。音響設計はNHKアイテックというNHKの施設・映像・音響・情報インフラを一手に担う技術集団である。NHK技研が非営利の研究組織であるのに対し、この会社は外販も手掛ける独立子会社である。
音質だが、スタインウェイの録音であるにも拘わらずピーキーでメタリックなこのピアノの特徴は一切聴かれないという不思議なものだ。ホールの響きがウッディで割と高域デッドな印象と思った。マスのしっかりとした稠密感が心地よく、落ち着いた地味なピアノ収録だ。残響成分は穏やかだが拡がりは申し分なく、旋律たちが漆黒の空間に放散されて行く。
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