SL聴き比べ:Mozart: Fantasia D min.K.397 |
今日は、数あるモーツァルトのピアノ曲の中でもひときわ著名なこれ。
モーツァルト ヴォルフガング・アマデウス Mozart, Wolfgang Amadeus 1756~1791
幻想曲 ニ短調 / Fantasia K.397(385g)
ピアノ: ギレリス、内田光子
以下、楽曲の説明を某サイトから拝借する。
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「幻想曲 ニ短調」は、ウィーン滞在中の1781年に作曲された。曲は「幻想曲」というタイトル通り自由な形式で書かれ、冒頭の序奏のような役割を果たす分散和音の部分や、哀感に満ちた美しい主題など、まさに天才的な霊感が遺憾なく発揮された名曲である。しかしこの曲は未完で、現在演奏される形の最後10小節は、モーツァルトの死後補筆された他人によるものである。その補筆は当時の指揮者アウグスト・ミュラーによると言われているが、正確には判っていない。
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この曲の概型は3部形式でもソナタ形式でも、またロンド形式でもない。モーツァルトがどの様に完成させたかったのかは今となっては五里霧中で、曲は97小節目で突然終わってしまう。ギレリスと内田光子の弾く曲はそれぞれ楽譜が違う。
ギレリス: A-B(b-b'-b)-C'
内田光子: A-B(b-b'-b)-C-A
A部は分散和音が厳かな序奏部に当たるが、演奏時間はゆうに1分を超える長いもの。最終音のフェルマータと休止の後、B部がゆっくりと始まる。このB部がこの曲の第一主題であり、あの余りにも有名な、憂愁を帯びた美しい旋律のアダージオなのだ。
b'は短いながら展開部と言って良い。そしてC部は属調の長調に転調しての明るい天国的な第二主題に相当する部分だ。
ギレリスのC’の最後10小節は、恐らく補筆されたものである。対する内田光子のC部はオリジナル通り97小節で分断した格好なのだろう、多少短く突然に終わる。どういった補筆版が存在するかは知らないのだが内田光子の演奏は最初の序奏部Aに戻っていき、これを終始形に変形して終わりにしている。
曲の終わり方が違うので両者のニュアンスも異なり、従って公平な比較は出来ないかも知れないが、ギレリスの幻想曲は固く遊びのないソリッドステートの世界だ。対する内田の幻想曲はまさに幻想的に、変幻自在に音符を操っている。内田は休符にフェルマータを掛けている、という表現が妥当か否かは分からないが、「無」の部分を非常に大切に弾いている。
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