SL聴き比べ:Schumann: Faschingsschwank aus Wien |
シューマン: ウィーンの謝肉祭の道化芝居「幻想的情景」
Schumann: Faschingsschwank aus Wien ‘Phantasiebilder’ op.26
ピアノ: ミケランジェリ、アラウ
この曲はタイトルが示す通り、シューマンがウィーンで楽しんだ謝肉祭の賑やかな様子を幻想的に描いたもの。しかし当初は「ロマンティックな大ソナタ」と名付けようとしていたため単なる情景のみならず形式的にソナタ風の要素も持った曲である。
1.アレグロ / op.26-1 "Allegro"
第1楽章 アレグロ 変ロ長調 3/4拍子 ロンド形式
舞曲風のロンド主題に、エピソードが5つも挿入されている。この様々なエピソードのうち第4のエピソードには、フランス国歌「ラ・マルセイエーズ」の一部が登場する。
2.ロマンス / op.26-2 "Romanze"
第2楽章 ロマンツェ ト短調 2/4拍子 三部形式
ゆったりと始められるやや悲しげで美しい旋律が登場。中間部は三拍子に転じる。
3.スケルツィーノ / op.26-3 "Scherzino"
第3楽章 スケルツィーノ 変ロ長調 2/4拍子 ロンド形式
軽快なリズムに乗ってさわやかに流れる、明るくユーモラスな曲。
4.間奏曲 / op.26-4 "Intermezzo"
第4楽章 インテルメッツォ 変ホ短調 4/4拍子
終始一貫して現れる三連音の伴奏上に、優雅な旋律を切々と歌いあげている。
5.フィナーレ / op.26-5 "Finale"
第5楽章 フィナーレ 変ロ長調 2/4拍子 ソナタ形式
華やかでやや騒々しい謝肉祭の情景。全体に細かい音型が現れて、興奮覚めやらぬ様子が描かれる。
どっちも巧いのだが、神経質なまでのレガートで繊細さの極致を見せつけるミケランジェリに対し、豪放磊落なマルカートでポップで華やかな楽しさを満喫させるアラウ、と言える。
この曲に関しては両方の弾き方と楽しみ方があって良いと思う。
ミケランジェリは前述の通りFinger-Key noiseを極端に嫌うためどうしても摺り指になってしまうこともあり、この曲の特徴である分散和音がパチパチと弾ける部分がスポイルされてしまう。反面、緩徐楽章の滑らかな美しさは極上だ。
アラウの弾き方は明晰で力強い。シューマンが活き活きと描いた情景が目に浮かぶ。全編をマルカート奏法で音符の一つ一つを粒立ち豊かにトレースしている。音の微粒子によって点描画のように浮き立つウィーンの街の風景や道化芝居のポップな雰囲気が生々しく伝わってくる。
この曲を聴くと、時代背景こそ違えどもウィーンへ行ってみたいと思う。そして、ショパンに勝るとも劣らないシューマンの甘美なピアニズムを改めて素晴らしいと思う。こういった華やかな曲を華麗に弾きこなせれば人生はバラ色だ。
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