読響Paolo Carignani@サントリー |
前回、チケット交換が開演一時間前丁度で、当たったのがかぶりつきでイマイチだったので、反省をして5分後に行ったら1階14列の8番と、サントリーでは最高の音響特性を誇る席!! ヤッター。
前回サントリーでの定演は現代音楽だったが今回のプログラムは打って変わって正統派。前半はチェリストのピーター・ウィスペルウェイを迎えてチャイコ・ロココ風とブルッフのコル・ニドライだった。
噂のカリニャーニはどんなものか? うーん読響の連中、またまた芸風を変えて来やがった(^^ゞ。いつも剛直で多少荒れ気味の立ち上がりなのに昨晩は打って変わって最初からメローな滑り出し。こんなにメロディアスで猫を被った読響は久しぶり、しかも美音のサントリーとあって読響じゃないみたい。
チャイコはコンバス3本の最小構成、ブルッフは多少増えたが中規模構成。今日は破綻が少なくソリストとの息もまあまあだが、このカリニャーニって男、若いのになかなかやる。リードは軽やかかつ快活、速めで明るいし、メリハリも聴かせどころでは卒がない。読響をここまでブリリアントに騙して鳴らすとはね。イタリアの結婚詐欺師といったところか(^_^)。
ピーター・ウィスペルウェイは、技巧的には巧い。それもそのはず、古楽の巨匠アンナー・ビルスマーの弟子である。ただ、音は小さい方でもう少し朗々と謳って欲しかった。カリニャーニのタクトが多少速めで、チェロもオケも全編で1/8拍くらい遅れていた。
前半、アンコールが最初から仕込まれていたらしくあっさりと、J.S. Bach / Cello Suite #1, Preludeをサラリと弾いた。確かに軽くコケティッシュな味わいはビルスマー一派かな?
休憩を挟んで、オケ最大構成で見せ場の多いベルリオーズの幻想交響曲だ。国内プロオケ最大音圧レベルを誇る読響のためにあるような大曲。
幻想の前半は、休憩前の余韻もそのままにメロディアスにしかも小気味の良いルバートを連発しながら割と早足で美音を響かせながら過ぎた。ファゴット、オーボエのソロパートは完璧だった。
問題は断頭台。失敗は許されないとの緊張感からか、カリニャーニもオケもちょっと焦ってつんのめった入り方をしてしまってホルンがちょっとコケて遅れ、そのせいでご自慢のトリプル・ティンパニの打点がずれてしまった。聴いている方が焦ってしまう。が、そこは帳尻合わせの読響、中間部からリカバった。控えめなグランカッサも加わり、ブラスセクションも多少抑制気味ながらまずまず何とか体裁は取れた。
そして終楽章、出足のVnが連続16分音符でちょっとつんのめり、その後コンバスとチェロの出だしも揃わなくてモタついて、またかと焦ったが、まぁ、ぎりぎりクリアでリカバった。カリニャーニのタクトで良くないのは小節の頭の振り下ろしが不明瞭なところで、こういった苛烈で単純極まりない曲進行でのメロウな振り方は逆に弊害となる。
右のティンパニ方面から舞台裏を通って左側のグランカッサと袖のカリヨン(鐘)へと要員移動。一番の圧巻、ツイン・グランカッサのトレモロ、咆哮するTb、Tp、Tuba、思いのほか図太く打ち鳴らされる鐘、怒濤のように攻めてくるBass、Vc、津波のように押し寄せるVnのコルレーニョ奏法、狂喜のコーダは最大音圧、超広ダイナミックレンジの魅力をこれでもかと見せつけた。実にオーディオ的な快感であり、これくらいの音シャワーは一年ぶりくらいだろうか? Pさんの言葉を借りれば「デジタル・グランカッサ」が大炸裂した真夏の夜だった。
これまた出来レースで仕込まれていたアンコールは、Stravinsky / Circus Polka、余韻の醒めやらぬ観衆は最後まで拍手をしていた。
途中色々ヤバい箇所もあったが、カリニャーニという若い指揮者の将来性に感じ入った。詐欺師的な美音も良いが、細部の詰めに関してはこれから場数を多く踏んで学んでいくんだろうな。