Ravel: P-Con@Zimerman, Boulez |
http://www.hmv.co.jp/product/detail/464309
(国内盤はこちら↓)
ラヴェルは生涯で2曲のPコンを作っている。一つは普通にピアノ協奏曲と呼ばれているもの、そしてもう一つは左手のためのピアノ協奏曲と呼ばれるもの。
まずは無印のPコンから。パシッ! という鞭の音から瞬間的に立ち上がる一楽章は変形ソナタ形式で展開部はジャズっぽい感じで明るいなかにもロマンチックな速いパッセージの短調的旋律も加わり木管・金管との軽やかな掛け合いが楽しい。二楽章は打って変わって静かなアダージオ、ピアノ独奏が長く感傷的な旋律が展開部には木管楽器が旋律を引き取って静かに進行。三楽章も変形ソナタ形式で一楽章と同様ジャズっぽい。オケの楽器が総動員で旋律を引き継ぎつつ壮大なリレーを見せる。カデンツァは短いトリルで締めはグランカッサの一発。
オケはクリーヴランド管@ブーレーズ、収録はTELARKの定番マソニック・オーディトリアム、独特の空間感が幻想的だ。
このCDの最終トラックは左手のためのPコン。これは戦争で右手を失ったピアニストであるヴィトゲンシュタインのために作られたとされる曲で前のPコンとほぼ同時期の作曲らしい。
一楽章だけの割と小規模な作品だが内部は三部構成となっていて、各々切れ目はないもののミニ三楽章形式、またはソナタ形式+展開部のミニ再現部付き単楽章形式と、どっちにも解釈出来る構成で、A→B→A'→B'には違いがなさそう。コンバスとファゴット、バスクラリネットの低い重暗い旋律がレントで始まる異例の冒頭部は再生装置のローエンド再現性が試される注目の20秒間だ。この低音部のみのざわめきに終わりを告げるのはまたもやグランカッサの短いトレモロで、これは地震の地鳴りに似て恐怖をそそる。恐怖に息つく暇もなくオケはトゥッティへ徐々に駆け上り、その頂点でピアノがカデンツァで参戦、ツィマーマンの叩くスタインウェイは剛直で良く謳う。割と分かりやすいオケの旋律が独特のピアニズムに満ちたカデンツァで層状に挟まれるという、いわば音のミルフィーユ状態のままリリカルで短いフィナーレを迎える
聴いているとこれが左手だけで演奏されているとはとても思えない。これを左手で弾きこなしてしまうツィマーマンの超絶技巧も凄いがこんな曲を書いてしまうラヴェルもまた凄いものだ。
バンドルの佳作、高雅で感傷的なワルツについては後日改めて取り上げたい。
こちらはロンドン交響楽団@ブーレーズ、録音はロンドン郊外のワットフォードタウン・ホール、豊かで残響も長めに感じられるが滲みのない佳い録音だ。
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