Duruflé: Requiem Etc.@Ivan Repušić/Münchner RO |
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Duruflé: Requiem, Op.9
Ⅰ. Introit
Ⅱ. Kyrie
Ⅲ. Domine Jesu Christe
Ⅳ. Sanctus
Ⅴ. Pie Jesu
Ⅵ. Agnus Dei
Ⅶ. Lux aeterna
Ⅷ. Libera me
Ⅸ. In paradisum
Respighi: Concerto gregoriano P.135
Ⅰ. Andante tranquillo - Allegro molto moderato - Calmo, tempo I
Ⅱ. Andante espressivo e sostenuto
Ⅲ. Finale. Allegro energico "Alleluja"
Chor des Bayerischen Rundfunks
Münchner Rundfunkorchester
Ivan Repušić (Cond)
Okka von der Damerau (Mezzo-sop), Ljubomir Puškarić (Bar),
Uladzimir Sinkevich (Vc), Max Hanft (Org)
Henry Raudales (Vn: Respighi)
デュリュフレ(1902-1986): レクイエム Op.9
Ⅰ. 入祭唱
Ⅱ. キリエ
Ⅲ. 奉献唱「主イエス・キリスト」
Ⅳ. サンクトゥス - ベネディクトゥス
Ⅴ. 「主イエスよ」
Ⅵ. 「神の小羊」
Ⅶ. 聖体拝領唱「永遠の光」
Ⅷ. 「我を許し給え」
Ⅸ. 「楽園(パラダイス)へ」
レスピーギ(1879-1936): グレゴリオ風協奏曲
Ⅰ. アンダンテ・トランクィロ
Ⅱ. アンダンテ・エスプレッシーヴォ・エ・ソステヌート
Ⅲ. アレグロ・エネルジーコ 「フィナーレ(アレルヤ)」ロンド形式に準じる
バイエルン放送合唱団
ミュンヘン放送管弦楽団
イヴァン・レプシッチ(指揮)
オッカ・フォン・ダメラウ(メゾ・ソプラノ)
リュボミール・プシュカリッチ(バリトン)
ウラジミール・シンケヴィチ(チェロ)、マックス・ハンフト(オルガン)
ヘンリー・ラウダレス(ヴァイオリン:レスピーギ)
イヴァン・レプシッチについて
彼の経歴については適当な邦訳が見つからなかった。以下は彼自身のWebサイトのバイオグラフィーだ。結構長かったので要約し、更に日本風に年代の昇順に並べ替えて和訳しておく。
BIOGRAPHY
Croatian conductor Ivan Repušić(1978) made his debut in 2011 at the Deutsche Oper with Puccini's opera La boheme, becoming the Kapellmeister for that distinguished institution the following season, and has since conducted numerous operas, including Tosca, A Masked Ball, Traviata, Macbeth, The Magic Flute, Lucia di Lammermoor, etc.
From 2010 to 2013, he served as the first Kapellmeister of the Staatsoper Hannover, where he successfully conducted performances of operas Falstaff, Otello, Tannhauser, Eugene Onegin, La boheme, Carmen, The Obduction from the Seraglio, Faust and many others. He also made successful debuts and continued conducting at other important German opera houses, such as the Hamburg State Opera, Semperoper Dresden, Komische Oper Berlin, and Staatsoper Hannover.
He has conducted all the major Croatian orchestras and opera ensembles, as well as the Berlin Deutsche Oper, Giuseppe Verdi Symphony Orchestra of Milan, Prague Symphony Orchestra, the State Opera Orchestra Hannover, the Slovenian Philharmonic Orchestra, etc. He performed at all the major Croatian festivals, as well as held guest performances at numerous European halls and festivals, including the famous Musikverein in Vienna, Baden Baden Festspielehaus, Konzerthaus in Berlin, Smetana Hall in Prague, and Festival Verdi Parma.
Ivan Repušić studied conducting at the Zagreb Music Academy with Igor Gjadrov and Vjekoslav Šutej, continuing his studies with renowned conductors such as Jorma Panula and Gianluigi Gelmetti, as well as assisting Kazushi Ono (Badisches Staatstheater Karlsruhe) and Donald Runnicles (Deutsche Oper Berlin). He began conducting in 2002, as conductor and from 2006 to 2008 as Opera Director at the Croatian National Theatre Split which resulted in an array of successful opera performances, such as Don Carlos, Aida, Suor Angelica, Gianni Schicchi, La boheme, Manon Lescaut, Simon Boccanegra, Nabucco, Pagliacci, Eugene Onegin, etc. He was Music Director of the Split Summer Festival from 2006 to 2009, and the Dubrovnik Summer Festival from 2010 to 2012. Since 2005, he has been Chief Conductor of the Zadar Chamber Orchestra.
He was the recipient of some of the most prestigious awards in Croatia.
Beside his conducting endeavors, Ivan Repušić continually pursues his pedagogical work as Adjunct Professor at the Academy of Fine Arts, University of Split. His upcoming performances include Deutsche Oper Berlin (Tosca, Lucia di Lammermoor, Turandot, Traviata), Semperoper Dresden (Simon Boccanegra), Hamburg State Opera (La boheme), Aalto Musiktheater Essen (Falstaff), Nationaltheater Mannheim (Cavalleria rusticana, Pagliacci), concerts with Radio Symphony Orchestra Berlin, Brussels Philharmonic, Croatian Radiotelevision Symphony Orchestra and many others.
イヴァン・レプシッチは、1978年生まれのクロアチア人指揮者。ザグレブ音楽アカデミーで指揮法をイゴール・ジャドロフ、ヴィエコスラフ・シュテイに師事。並行しヨルマ・パヌラ、ジャンルイジ・ジェルメッティに師事し、その後、大野和士、ドナルド・ラニクルズのアシスタントを務める。
2002年にオペラ分野において指揮活動を始め、2006年から2008年までスプリットのクロアチア国立劇場でオペラ監督として指揮をし、ドン・カルロ、アイーダ、マノン・レスコー、道化師、エフゲニー・オネーギン等、オペラ指揮で成功を収める。
2010年から2013年、ハノーファー州立歌劇場の第1カペルマイスター(常任指揮)としてオテロ、タンホイザー、カルメン、ファウストなどで成功。その他、ハンブルク州立歌劇場、ドレスデン・ザクセン州立歌劇場、ベルリン・コーミッシェ・オーパー等の主要なドイツ・オペラハウスにて成功裏にデビュー。2011年にベルリン・ドイツ・オペラにおいてプッチーニのラ・ボエームでデビューし、翌シーズンにはカペルマイスターに就任、以来トスカ、仮面舞踏会、椿姫、マクベス、魔笛など多くのオペラを指揮している。
ウィーン楽友協会、バーデン・バーデン祝祭劇場、ベルリンのコンツェルトハウス、プラハのスメタナホール、およびパルマのフェスティバル・ヴェルディを含む多くのヨーロッパのホールおよび音楽祭において特別出演をしたばかりでなく、クロアチアの主要な全ての音楽祭で演奏した。2006年から2009年までスプリット・サマーフェスティバル、2010年から2012年までドゥブロヴニク・サマー・フェスティバルの音楽監督を務める。2005年以来、ザダル室内管弦楽団の首席指揮者。2017年秋からはミュンヘン放送管弦楽団の音楽監督。
デュリュフレ: レクイエム Op.9
これまで慣れ親しんできた同曲の演奏だが、オックスフォード・マグダレン・カレッジの男声合唱およびイングリッシュ・シンフォニアによるもの、また近年だと、ケンブリッジ・キングズ・カレッジおよびエイジ・オブ・エンライトゥンメントによるものを規範としてきた。
後者のリンクに詳述しているが、デュリュフレのレクイエムは現在三つのバージョンがあり、前記二つの演奏はいずれも小オーケストラ伴奏版。今回のこの録音は初期のフルオーケストラ伴奏版となる。小オーケストラ版に慣れた耳にはフルオケ版は色々な意味で厳しかった。つまり、フルオケでの演奏だとアインザッツもリリースも揃わない箇所が必ずいくつも出現して音が滲むのだ。また、混声合唱も人数が多く、全員が発声を始めてから止めるまでのタイムラグが必ず発生する。勿論モツレクやヴェルレクのような大規模合唱/合奏を前提とした演奏には要所がぴたりと合った超優秀演奏はいっぱいあるが、ことデュルフレのこの浮遊する微細にして幽玄なスタイルではなかなかに難しいのが現実だろうと思われる。
冒頭の入祭唱は抑制されたppから入るので自然なのだが、後半の再現部で多声となって重ね塗りされる辺りから歪成分が増えてちょっとやかましいのだ。キリエも同様で多声部はノイジーなのだ。弦楽が綺麗なだけにもったいない。やはり全く同じスキームの主イエス・キリストの中間の展開部も暴れ気味で、演奏的にはサチュレートしている。後半の典礼文を歌うリュボミール・プシュカリッチ(バリトン)は極めて優秀。というか、この録音の場合、独唱の現れるパートは全般に静謐で優秀だ。
そして、この曲の中で最も鍵となるサンクトゥス。入りは大規模ソプラノ合唱のアインザッツが揃い、まずまず。途中のObのモチーフ、HrやTpたちのオブリガートと成功。中間部へ盛り上がりながら進む。しかし、後半部の入りのトゥッティでまたもや歪が急増してある種の破綻を示す。コーダに向けては静謐で良い統率だったが。
ピエ・イエスは静かなメゾが切々と歌う場面。ここは打って変わって抒情的で素晴らしい。弦楽隊の深い掘り込み、レプシッチの揺蕩う謳わせ方もオペラ場面のバトンを彷彿とさせるソフトで堂に入ったもの。アニュス・デイ、そしてルクス・エテルナは大規模合唱でテナーおよび女声の声域が活躍するが遅速パートでp主体であるため実に美しい描き込み。途中に入るHrや木管隊も実に綺麗。
あとは割愛したいくらいなのだが、もう少しだけ触れて終わりにする。テンポが速かったりアチェレランド/リタルダンドの交代、fからff程度の音量に上がると途端に歪とジッター成分が増加してしまう。中間部からコーダにかけての強弱の出し入れは正統的にやりたかったのであろうがテンポが鈍る面があってバックはなかなか追従できていなかった。最後の混声合唱のトゥッティもアインザッツが綺麗でない。終曲のパラディスムは静謐で良い締め方で、ここは救いだった。
レスピーギ: グレゴリオ風協奏曲
なぜレスピーギかというと、これは意外性の選曲。この曲はあのレスピーギがグレゴリオ聖歌を範にとって書いたとされる作品だから、という、ややこじつけ的な選択だ。私にはよく理解できないのだが、レスピーギは中世教会様式の旋法で書こうとしたらしいという。全体的にはやや自由なソナタ形式による普通の三楽章形式のVnコンチェルトに聴こえる。
1楽章はアンダンテ・トランクィロで16/8拍子のちょっと細かな刻みの曲。瞑想的と言えばそうなんだろうが、一般的に教会旋法と評されるちょっと退屈な動機提示。20小節目くらいからVnが参入するが、ちょっと支配力が弱い。ちょっと遅れてロココ風の主題が強めに提示。カデンツァを経て切れ目なしにそのまま2楽章へ入る。Vnはポリリズム的に拍子を4から5、そして3拍子系へと交代させながら(恐らく)主題を刻む。そうするとVcとCbが内声部的に刻む懐かしい低く奥ゆかしい副旋律が登場。これはグレゴリオ聖歌のあの部分だろう。この部分が唯一、グレゴリオ聖歌に由来するパート。中間部からは非和声の比率が増加し、なんとも彫りの深い地中海風のすすり泣くようなVnソロが支配的になる。曲の原型はともかく、ヘンリー・ラウダレスのVnはとても引き込まれるものがある。実にメランコリックで巧いのだ。後半、気付くと和声にはローマ三部作を思わせるような色彩感が充満していて思わず笑ってしまう。
最終楽章が謎。今までの浮遊するような夢想的な風情がばっさり断ち切られて、なぜかバルトークのミラクル・マンデリン、つまり中華的な、もっと言ってしまうと京劇のじゃんじゃん鳴らすような単調でキュリアスな主題が支配する音楽構造に化けている。アレルヤとの副題を持つこのパートの脈絡のなさは何度聴いても謎だ。そして謎は謎のままフィナーレを迎えてしまう。
録音評
BR Klassik 900320、通常CD。録音は2017年3月16-18日、べニューはHerz-Jesu-Kirche, München(ミュンヘン、ヘルツ・イエズ教会)とある。音質は悪くはないが、輪郭がはっきりしない音像の狙い方で、なおかつ音場の展開が明晰ではない。デュルフレの方はたぶん意図的にそういった音の混ざり方を意図したものだろう。だが、レンジは最低域から最高域までブロードに捉えられているので、思わぬところで極低音が襲ってきたりして驚くことも。一方、レスピーギにおけるヘンリー・ラウダレスのVnだけはかなり克明かつ鮮明に録られていて、この曲に関してはとりもなおさずコンチェルトであることを明確に主張している風だった。
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