Stravinsky: The Rite of Spring & The Firebird@Andres Orozco-Estrada/hr-SO. |
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Stravinsky: The Rite of Spring & The Firebird (Suite 1919)
Le sacre du printemps(The Rite of Spring)
Part I: Adoration of the Earth
Introduction
The Augurs of Spring - Dances of the Young Girls
Ritual of Abduction
Spring Rounds
Ritual of the River Tribes
Procession of the Sage
Dance of the Earth
Part II: The Sacrifice
Introduction
Mystic Circles of the Young Girls
Glorification of the Chosen One
Evocation of the Ancestors
Ritual Action of the Ancestors
Sacrificial Dance
The Firebird Suite
Ⅰ. Introduction
Ⅱ. The Firebird and its Dance
Ⅲ. Variation of the Firebird
Ⅳ. Ring dance of the Princesses
Ⅴ. Infernal Dance of King Kashchey
Ⅵ. Lullaby
Ⅶ. Finale
Frankfurt Radio Symphony (hr-Sinfonieorchester)
Andres Orozco-Estrada(Cond)
ストラヴィンスキー: バレエ音楽 春の祭典
第1部 大地の礼賛
1. 序奏
2. 春のきざし(乙女達の踊り)
3. 誘拐
4. 春の輪舞
5. 敵の部族の遊戯
6. 長老の行進
7. 長老の大地への口づけ
8. 大地の踊り
第2部 生贄の儀式
1. 序奏
2. 乙女の神秘的な踊り
3. 選ばれし生贄への賛美
4. 祖先の召還
5. 祖先の儀式
6. 生贄の踊り(選ばれし生贄の乙女)
ストラヴィンスキー: バレエ音楽 火の鳥 (1919年版)
1. 序奏
2. 火の鳥の踊り
3. 火の鳥のヴァリアシオン
4. 王女たちのロンド(ホロヴォード)
5. 魔王カスチェイの凶悪な踊り
6. 子守歌
7. 終曲
hr交響楽団(フランクフルト放送交響楽団)、アンドレス・オロスコ=エストラーダ(指揮)
春の祭典
ハルサイの新譜を買うのは久し振りという気がする。今回のこれは、個人的にはドイツ放送局系オケとしては最高性能を誇ると評価するhr-SOということで少し期待した。指揮はアンドレス・オロスコ=エストラーダとあるが聴くのは初めて。第一部、序奏は穏当な入りで、Obもインテンポな流れ。春の兆しも穏当かと思われたが、今まで聴いてきたハルサイの演奏設計とはちょっと違って完全なマルカート基調、通奏低音が完全分離されてきっちりと刻まれる。速度の揺らぎも殆どなくてこれは好みの分かれるところ。中間部を過ぎてもマルカート基調は継続し、そのままアブダクションへ。どうやら器楽音の一つ一つを完全抽出するポリシーのようだ。要するに潔癖症かつ端正と言えばその通りで、例えるならベートーヴェンの交響曲を鉄壁のドイツ流派でやりました、という感じのハルサイ。
春の輪舞のテンポは遅くて雄大で揺蕩う雰囲気は出ているが、ここもマルカート基調で個人的には本当はレガートで揺らして欲しいところだが、実に冷静沈着でドイツ的というか、ロマンチシズムを排除したエナジー感の低い冷涼な演奏だ。因みにアンドレス・オロスコ=エストラーダはコロンビア出身ということでラテン系の出自なのだが。後半の総奏におけるティンパニ、グランカッサ、Vnの全開からコーダ前にかけての疾駆感はよく出ている。第一部の終曲は瞑想的で、ノンレガート基調だがここではこの設計が奏功している気がする。そしてピアニッシモで埋もれそうなパートをも克明に拾い上げることに成功している。
第二部でも基本構造は同じ様で、マルカート基調で繋いでいく。乙女の神秘的な踊りはマルカート、スタッカートで正解と思われる力強い設計で、音たちの溶け合いが少ないようだが、迫力という点においては音の各々の独立性が強く、従って音数が夥しくて凄く効果的だと思う。金管と打楽器にはディレイを一切許さないというリアルタイム志向のリズムを要求している。従って一切の弛緩がない厳しくてハイスピードな演奏となっている。これは後の祖先の召還、祖先の儀式でも同じことが言える。レガート基調で情感豊かに織り込んでいく従来のハルサイ解釈、例えばテミルカーノフ/サンクトペテルブルク等との差異が明確になる箇所だ。
基本はレガートに軸足を置きつつ、各ディテールの純度を上げ、大きなデュナーミクと計算されたアゴーギクを駆使したネゼ=セガン/フィラデルフィアの火の鳥も現代的でハイスピードな演奏で記憶に残るが、このオロスコ=エストラーダの解釈は設計思想が全く違っていて、聴き比べると面白い。
火の鳥 1919年版
1910年の全曲版に比して1919年版は縮約版なのでゴージャスさという点においては迫力は少々足りないが小気味よくて個人的には好きだ。ハルサイでのマルカート基調は火の鳥では緩和されていて全般でレガートを採用し滑らかな描写に心掛けているようだ。それにしても随分と方向が違うものだ。全般的に奇を衒った演奏ではなくてオーソドックスで律儀な解釈と言える。ここでは、カスチェイについてのみ書く。最初から最後までノンレガートを貫いたハルサイとほぼ同じ演奏設計。楽器の数が夥しくて縮約版とは思われない煌びやかで豪勢なサウンドを細密かつ大胆に組み上げている。ことこのパートにおいてはhr-SOの性能の高さを遺憾なく引き出しており、エストラーダが今後彼らをどう率いていくのか楽しみにさせられる演奏だ。
録音評
Pentatone PTC5186556、SACDハイブリッド。録音だが、春の祭典が2015年6月/アルテ・オーパー、火の鳥が2015年8月/ヘッシッシャー・ルントフンク、hrゼンデザール(セッション)とある。新生ペンタトーンの音は尖鋭度とディテール再現が従前よりも増していて更にハイファイ度を上げている。この盤の再生は難しい。音場が奥へと展開しないのだ。例えるなら一階席の最前列で聴いているようで音が全部自分の頭の上を飛び越えていくのだ。レンジは極めて広くてグランカッサの極低音の風から超高域の木管、弦、トライアングルの響きなど細大漏らさず捉えてはいるものの、楽器たちが目の前の至近距離に大きめに定位し、アンビエントは多量に入ってはいるがあまり綺麗には整理されておらず、左右方向へと残響が飛ぶ感じだ。新種のペンタトーンかもしれない。
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