[R]evolution - Stockhausen: Klavierstuck Etc.@Vanessa Benelli Mosell |
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[R]evolution: Vanessa Benelli Mosell
Stockhausen:
Klavierstuck I~V, VII,VIII,IX
Beffa:
Suite pour Piano ou Clavecin
La volubile
La ténébreuse
La déjantée
Stravinsky:
Trois mouvements de Petrouchka
Danse Russe
Chez Petrouchka
La Semaine Grasse
Vanessa Benelli Mosell (Pf)
[R]evolution ~ 近現代ピアノ作品集
シュトックハウゼン: ピアノ小品集 I~V, VII, VIII, IX
カロル・ベッファ(1973~): ピアノまたはクラヴサンのための組曲
ストラヴィンスキー: ペトルーシュカからの3楽章
ヴァネッサ・ベネリ・モーゼル(ピアノ)
ピアノを弾いているヴァネッサ・ベネリ・モーゼルは数年前からFacebook Friendであるが、どういった経緯でお友達になったのかはもう覚えてはいない。ピアニストであることは知っていたし、リサイタル/コンサート活動が中心であることも日記の内容からは分かっていた。だが、CDを出していることは知らなかった。彼女は廉価レーベルで有名なブリリアントから3枚ほどアルバムを出していたとのことだ。それらに関しては今まで全く語られていなかった。
今年の春から夏にかけて、デッカからアルバムをリリースするとの日記がFacebookに唐突に書かれた。それがこのシュトックハウゼンを始めたとした近現代曲を集めたCDだったというわけ。少し出遅れてタワレコのサイトを覗きに行ったが着目されていないらしく在庫はまだあり即納とのこと。というわけで発注、そして針を下して聴いてみた。
これが括目のピアニズム。斬新な解釈であって高速な超絶技巧、そして少々やんちゃだが元気が漲った勁(つよ)い演奏に耳が釘付だ。シュトックハウゼンのこの作品は聴いたことがなく初めて触れる。シュトックハウゼンの作品はいくつか聴いたことがあるが、この演奏で聴くとそれらの印象とはまるで違い非常に尖鋭かつ深みがある作風だ。ミニマルともちょっと違うが繰り返し執拗に迫り来る単打のリズムは非常に変わっていて脳裏に定着しやすいのだ。この無調性の曲は解釈も鑑賞も難しいと思われるが、それは音楽の要素を聴き取ろうとするからであって、例えば環境音、一種の秩序を与えられた騒音の類と思えばそれほどおかしな曲ではない。パーカッション的な左手に明確な拍子が刻まれていて、それでも分かり易い旋律は決して出してこないという少しひねくれた作品だ。
なお、この作品に関し、モーゼルは師事しているシュトックハウゼン自身から直接稽古を付けてもらったという。また、彼女はシュトックハウゼン以外にはヴィオリストのユーリ・バシュメットにも師事していて音楽的内面の研鑽を重ねているという。
ベッファの作品はシュトックハウゼンのクラヴィーア・シュトゥックよりかは聴きやすい有調性の曲で、イレブンスコードが効果的に使われた飛翔感の強い現代曲。3曲目は一転して4ビートの乗りの良い速い拍子を刻む、いわばクロスオーバーないしフリー・ジャズ的な作品。ここでもモーゼルの強打が炸裂し、精密なリズムと左手伴奏部を刻んでいく。なお、この作品に関しては世界初録音となる。
この盤は、現代作品の代表格としてシュトックハウゼンを前半のピーク、そして箸休めのベッファを挟んで近代のストラヴィンスキー:ペトルーシュカを後半のピークとしたダブルネームのアルバムだと思う。そのペトルーシュカだが、元々がバレエ音楽なのでフルオケ向けスコア、そこから作家自身が3つだけ抜粋、縮約してピアノ譜に仕立てたものであり、普通に弾こうとするとかなり無理のある譜面である。今までの金字塔といえばポリーニの録音があって、昨今ではキーシンの録音も素晴らしかった。しかし、モーゼルのこの演奏はこれらの名演すら軽く霞ませてしまうほどで、まさに驚天動地である。あの速弾きで名を馳せるリシッツァでもここまでは無理と断言しておこう。注目すべきはその超絶技巧のみにあらず、斬新かつ大胆、天衣無縫を地で行く特異な解釈にあって、肉声で朗々と歌唱するがごとく魂が宿ったような躍動する太いピアノが特徴。ここまで強烈な語法で弾かれるペトルーシュカは未体験だ。
(録音評)
DECCA 4811616、通常CD。録音は2014年2月、イタリア、モンテヴァルキ(デジタル:セッション)。音質は軽量にして高解像度、アンビエントは適量で滲みが少なくちょっとドライでソリッドな感じ。だが、モーゼルの強い打鍵は飽和なく適切なマイクアングルで捉えられていて、音像は肥大せずにきちんと定位している。YouTubeで見ると実際には小柄な女性のようで筋肉隆々としたタイプではないのにどこからこのエネルギッシュでやんちゃな音が出るのであろうか、不思議。DECCAは相変わらず一定の音質を高いレベルで維持しておりさすがだ。しかし、DECCAはこのところ若くて個性的なソリストを見つけてくるのがうまい。
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