田中屋@平沼橋 |
やってきたのは初訪問の田中屋。大正九年(1920年)創業というから95年も続いてきた老舗。場所は平沼橋商店街だが高島町駅が一番近い。もちろん戸部、平沼橋からも歩ける。人通りの多いメインストリートからは外れた、いわゆる裏横浜にあたる場所で決してアクセスは良くない。だが、到着時には店外で行列ができるほどの人気店。
名簿に名前を記入して順番に待つこと暫し、厨房脇のテーブル席に通される。まずは生ビール中ジョッキを頼むとおまけの蕎麦味噌とともにすぐにサーブ。メニューを眺めると肴が充実していてどれも食べたくなるほど目移りする。そんな中から北海道産の大豆、特製苦汁で自家製造しているという厚揚げ豆富、鴨の網焼きをチョイス。
待つこと暫し、厚揚げ豆富が到着。衣を被ってぷよぷよに揚げられている自家製豆腐の柔らかさと旨さは抜群。この腰のない豆腐を崩さずじょうずに揚げてある。鰹節厚削り、分葱、大根おろし、生姜を添え、ヒゲタ醤油を少し垂らして頂くと濃い大豆の旨みと軽やかな芳香に包まれる。これ以外に笊豆腐のような升豆富なども選べる。
鴨の網焼きだが、値段からすると合鴨と思っていた。しかし、身がみっしりと硬くて歯を跳ね返すほどの弾力、独特の臭み、濃厚で稠密だが軽量な脂身と肉汁は一般的な合鴨の特徴とは全然違う。家鴨を交雑させた合鴨ではなくて真鴨を使用しているのであろう。勿論、価格からして天然ものであろうはずはなく、蓄養の真鴨だろうが。
クリーミーで繊細な揚げた絶品の豆腐、そしてジビエ風味豊かな滋味深い鴨を堪能しつつ、メインディッシュに頼んだのは江戸前天ざる。肴が終わるタイミングを見計らってサーブされる。蕎麦の笊は二段で、相応の量がある。そして天麩羅だが獅子唐、鱚、女鯒、海老、そして穴子。なお、野菜は獅子唐だけで魚介に特化した内容。
海の素材のみを揃えたので江戸前という命名なのかもしれない。どのタネもきちんと下拵えされており、そして揚げ油の管理も完璧、衣の付き具合も最高だ。特に中型の穴子が長手方向一直線で揚げられており、この柔らかさと風味の良さは別格である。勿論、女鯒や鱚もほくほくで美味しいし、海老も太った特上品でぷりっぷりだ。
蕎麦粉は店内の電動石臼で挽いて作っているが、たぶん機械打ちであり腰はそれほど強くはない。成分的には普通の二八。香りがすこぶる良いというわけではないので等級の高い蕎麦の実ではなさそうで、いわゆる普及品だろう。だが、この緩さが逆に安心感を生んでいる。二段の笊に収まる蕎麦は相当な量で、かなり満腹となる。
ということで、創業95年の老舗には老練な蕎麦の技と、気を使わないで普段使いできる身近さが兼ね備わっていて素晴らしい。酒も肴も種類がかなり豊富なので、今度はディナータイムにゆっくり、そしてじっくりと料理の数々を頂いてみたいものだ。
平沼 田中屋
横浜市西区平沼1-5-21 田中屋ビル
電話:045-322-0863、050-5869-2954(予約専用)
営業:月~土:11:00~22:00(LO 21:30)、
祝:11:00~21:30(LO 21:00)
定休:日曜・第3月曜(祝日および12月は営業)
最寄:市営BL 高島町3分、各社線 横浜10分、
京急 戸部5分、相鉄 平沼橋6分
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