自家製麺 SHIN(新)@反町 |
夏の限定はアゴ冷やし麺といって、素麺を意識した涼やかな冷やしだ。待つこと暫し、フランス製のガラスボウルに盛られて出たその一品は見た目にも綺麗だ。店主は忙しい中、色々と解説してくれ、それによれば、まず麺は、製麺機の手持ちカッターの中では最も細い刃で切ったとのこと。ちょっと絡まってダマになるのが難点と店主は言うが、気になるほどでもない。
次にスープなのだが、ラーメン(あるいはつけ麺)然とさせたくなかったので敢えて動物系素材も香味油も排除し、アゴ煮干しと焼きアゴを主体に白口煮干し、昆布、宗田鰹、貝紐などを加えて煮出し、すっきりとした味を目指したという。添え付けは低温でローストしたらしいジューシーでむっちり柔らかいチャーシュー、プチトマトの甘いコンポート。
季節柄、野菜の薬味をたっぷり盛り付けていて爽やか。内容は鴨屋そば香の冷やし鴨南蛮などとほぼ同等で、長葱、大葉、茗荷、生姜少しといったところ。尚、油は使っていない代わりに、後半に味変を楽しめるようにと焦がした揚げ葱が別皿でサーブされる。これを加えると和風つけ麺っぽさが出る。トマトのコンポートも同様、醤油味に変化が付き良い感じ。
冷涼感を維持するためには氷を浮かべたりするのが通常の素麺だったりするが、SHINの場合にはこれでスープが薄まることを嫌い、敢えて手間のかかる出汁氷としている。恐らくは製氷皿にメインの出汁と同じもの注いで凍結させたものを浮かべているのだと思う。この氷には柚子が入っている。尚、柚子はSHINの拘り薬味の一つであり、必ずどこかに入っている。
私は暫く食べていなかった特製つけ麺を頼んだ。随分前に食べたので味を殆ど忘れ掛けていたのだが、従前よりも更に調和度が上がって美味しくなっていた。一番最初に感じたのはスープの粘度が増したこと。次に、いっそう滋味深くがっつりと食った感が増したこと。太いがじがじした硬茹で麺も存在感があって素晴らしいのひとこと。
この粘性は鶏肉を微細に擂り潰したムースを上質な魚介スープで溶いて出しているそうであり、昨今よく見かけるベジタブル素材によるポタージュとは一線を画した濃厚な味わいであり、かつ豚系に感じられる動物臭や諄さが排除された理想的なものだ。この強い粘性によって麺がスープに絡みに絡み、見る見る量が減っていくのだ。
言うまでもないことだが、麺に載った質の良い大判チャーシュー、姫竹、そして塩分強めのきりりとした味玉が脇をがっちりと固めていている。加えて、白濁スープの底には拍子木切りのシャーシューがたっぷりと潜んでいて抜かりはない万全の体制である。少しだけ塩分が強めに調整されたこのつけ麺は猛暑の時期には好適な一杯であり、とても美味しいのだ。
アゴ冷やし麺は非常に良いバランスの一杯であり、素麺の体をなす冷やしラーメンの類と言ってよい。その中核はアゴ主体の魚と昆布の出汁であり、ラーメン店が使う素材としては斬新に映る。しかし、よくよく考えてみると和食の出汁としてはオーソドックスなもので、これを使って大根を煮るもよし、ゼンマイを炊くもよし、出汁としては基本中の基本なのだ。
これは、いわばBack to the Basicsであって、全ての料理の基本は旨みがじょうずにバランスした出汁を取ることにあって、料理のメニュー作りはここがスタートポイントであるということを改めて実感した次第だ。SHINの店主は単なるラーメン屋の店主にあらず、和食やイタリアン、中華、フレンチなどのエッセンスを多彩に使う料理クリエーターなのだと思う。
自家製麺 SHIN(新)
横浜市神奈川区反町1-3-8
電話: 045-548-3973
営業: 11:30~14:30
18:00~21:00(木金土のみ)
定休: 水曜
最寄: 東急東横線 反町4分
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