Schubert: Complete works for Vn & Pf@Alina Ibragimova, Cédric Tiberghien |
http://tower.jp/item/3259340/
Schubert: Complete works for violin and piano
Sonatina in D major, D384 (Op. posth. 137 No. 1)
Sonatina in A minor, D385 (Op. posth. 137 No. 2)
Sonatina in G minor, D408 (Op. posth. 137 No. 3)
Grand Duo for Violin and Piano in A Major, D574
Rondo brillant in B minor, D895 (Op. 70)
Fantasie in C major for violin and piano, D934
Sei mir gegrüsst! D741 (Rückert)
Alina Ibragimova (Vn) & Cédric Tiberghien (Pf)
シューベルト: ヴァイオリンとピアノのための作品全集
ヴァイオリン・ソナタ第1番ニ長調 D.384(ソナチネ)
ヴァイオリン・ソナタ第2番イ短調 D.385(ソナチネ)
ヴァイオリン・ソナタ第3番ト短調 D.408(ソナチネ)
ヴァイオリン・ソナタ第4番イ長調 D.574(デュオ)
ロンド ロ短調 D.895
幻想曲ハ長調 D.934
私の挨拶を D.741
アリーナ・イブラギモヴァ(ヴァイオリン)、セドリック・ティベルギアン(ピアノ)
シューベルトは若くして夭逝した天才作家である。歌曲に多くの秀作があることで知られるが、VnとPf(当時はもっと小型のクラヴィーア、或はフォルテピアノの前身にあたる鍵盤楽器)のための作品もそれなりに書いていた。歌曲のエッセンスを取り入れて書かれているこれらの作品は、個人的にはベートーヴェン、また後のブラームス、フランク、フォーレ、ドビュッシーなどの同系統曲に比してシンプルで面白みに欠けるものと思ってきた。
今回、イブラギモヴァ/ディルベンギアンの演奏を聴いてその考えを少し改めようと思った次第。つまり、面白味がそこかしこに隠れていて、それがひとたび抉り出されると単純で退屈と思われた旋律も和声も快活かつ闊達、そして光と影の抑揚がはっきりと聴こえてくるから不思議だ。イブラギモヴァのVnはふくよかで堀が深く、それでいて伸びやかで明快なのだ。特にそれが感じられるのはD385の短い第三楽章Menuetto: Allegroと、続く第四楽章Allegro、そしてD408の最終楽章Allegro moderatoだ。これらは明暗の出し入れが割と頻繁であり、そういった揺れ動く部分の表現が実に多彩で聴かせるものがあるのだ。
そして何といっても出色なのはD574=愛称デュオで、耽美的な旋律と飛翔・浮遊を想像させられる自由闊達な和声が特徴となるこの大規模ソナタを悠々と、そして濃やかに綴っていく。技巧的にも高度なものがあり、ダブル、トリプルストップはもとより精密なフラジオレットによるトレモロは目を瞠るものがある。勿論、ティベルギアンのサポートが完璧であることは言うに及ばずで、これはVnとPfが対等な関係性を保つことを前提として書かれた作品であることを如実に示しているもの。
ファンタジーD934については、個人的にはずっとモーツァルトK331からの主題転用と思っていたのだが(詳細はここに書いている)、このアルバムのライナーにその記述を見つけた。証拠はないらしいのであるが、普段よりモーツァルトを敬愛していたというシューベルトがこの名作Pソナタから主旋律を拝借したという説は真実味を帯びてくる。そして、最後に入っている歌曲「私の挨拶を D.741」=ここではVn+Pfへの編曲=が実際には作曲年代は古くて、こちらがK331引用の先駆けで、それを更に転用したのがファンタジーD934だったというわけである。
(録音評)
Hyperion CDA67911/2、二枚組通常CD。録音は2012年7月27日-29日&8月3-4日 ヘンリー・ウッド・ホール(ロンドン)。音質はハイペリオンの典型で、シズル感が感じられる秀逸なもの。ヘンリー・ウッド・ホールの豊かなアンビエンスも丸ごと捉えられており、その真ん中にVnとPfが球形に拡散していく様が手に取るように分かる。このCDの場合、イブラギモヴァのVnも優秀なのだがティルベンギアンが縦横無尽に弾くハイスピードなPfが克明に捉えられており、なおかつ音が軽くて非常に綺麗なのだ。室内楽を収めたCDとしてはまさに教科書的な優秀録音。
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