J.S.Bach: Partitas & Sonatas for Solo Vn Vol.1@Rachel Podger |
http://tower.jp/item/1619664/
Partitas & Sonatas for Violin Solo Vol.1
J.S.Bach:
Sonata for solo violin No.1 in G minor, BWV1001
Partita for solo violin No.1 in B minor, BWV1002
Partita for solo violin No.2 in D minor, BWV1004
Rachel Podger (Vn)
J.S.バッハ:
無伴奏ヴァイオリンソナタ第1番ト短調 BWV.1001
無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第1番ロ短調 BWV.1002
無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番ニ短調 BWV.1004
レイチェル・ポッジャー(ヴァイオリン)
クラシック以外の短めの軽音楽やPOPS系はネットからトラック単位にスマホへダイレクトにダウンロード購入するのが常識となりつつある昨今、リアル店舗を構えていたところでその収支は苦しいのであろう。そういった時流から判断すると大型でそれなりの在庫を抱えるCDショップがビジネスモデルとして次第に成り立たなくなってきていて相次いでの撤退が余儀なくされるのは致し方のないところ、実に寂しい現状ではある。かくいう自分も、決め打ちで買うことを決めている盤に関してはネット販売(=ダウンロードではなくて円盤を買う)を利用している。そしてそれ以外へ食指を動かして自らの糊代を拡大する目的において店舗を回遊するという利用法なのである。ネットで購入するよりかは店頭を彷徨していてたまたま見つけた盤に刺激的かつ前衛的なものが含まれる確率は高く、そういったCDの猟場として見た場合にはHMVやタワレコが展開していた大規模店舗は射幸心を満たすうえでも適していたのだ。
こういう契機があって、横浜駅西口に出かけた折にふらっとタワレコへ行った。全品10~20%割引セールをやっていて、なおかつ格安なワゴンがいくつも出ていた。クラシック領域をあちこち覗いているうちに、過去に買いそびれていていつかは買わねば、と思っていていまだに購入していなかったCDが何枚か見つかった。このポッジャーのバッハ無伴奏もそのうちの一つだ。ポッジャーの盤に関してはCHANNEL CLASSICSが誇る遠大なモーツァルト・チクルスを何枚か持っているが、実はそこへ繋がる原点とされているバッハ無伴奏は聴いていなかったのだ。そしてタワレコ横浜モアーズの閉店というトリガーが取り持ってくれた縁でこれらが入手できた格好となった。
バッハ無伴奏は全曲を吹き込むと必ず2枚組となる。そしてそれぞれに何を並べるかは奏者ごとに異なっていて定番というのはない。2004年リリースのこのポッジャーのVol.1に関してはBWV1001/1002/1004と並べていて、Vol.2にはBWV1006/1003/1005と並べている。まずまず穏当な順序かと思う。Vol.1の冒頭はソナタ1番でいきなりの山場である。特に2つ目のフーガはこの曲集のなかでもいくつかの聴かせどころのうちの一つである。ここを聴くとだいたい当該アルバムの性格や奏者のポリシーが分かるのだ。ポッジャーはモーツァルトにおいては割と地味系でありながら抑揚が効いていて聴きやすくわかりやすい解釈であった。個人的には、得てして退屈し、長く聞いていられないモーツァルトだが、ポッジャーのこれらは楽しく飽きずに聴くことができる。
さて、冒頭のアダージオは瞑想的な運びで、次のフーガ・アレグロもまた慎重で丁寧な入りだ。他の奏者よりは幾分遅めのテンポといえる。ところが後半になると俄然ピッチが上がり、ヴィヴィッドで明晰、多少荒れた感じのボウイングに豹変する。しかし、技巧的には唸るほどのレベルであり、2~3挺のVnを操っているのでは、と錯覚するぐらいシンクロした複雑な重音を発するのだ。
続くパルティータ1番の冒頭アルマンドは慎重な弾き方に立ち返る。噛み含めるように、しかし抑揚を効かせながらも周到なコントロールを聴かせる。コレンテではやや単調に傾くものの第2ドゥーブルでは過激なアチェレランドと高速スケールを展開、サラバンド、第3ドゥーブルを経てブーレに至ると堂々たる、しかも明るく屈託のないコントラプンクトゥスを聴かせるのだ。ポッジャーがピリオド系Vn名手であることを忘れてしまうほどの感情移入。この部分だけ聴くとムローヴァのロマン派解釈をも上回るロマンティックな解釈だ。Vol.1の最後に位置するパルティータ2番の終曲シャコンヌの音の素直さ、G線の隈取の太さが印象的だ。ここに至り、完璧なノンヴィブラートが醸す単音の持続効果が大いに発揮され、聴く者を圧倒するのだ。
(続く)
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