J.S.Bach: Sonatas & Partitas BWV1001-1003@Isabelle Faust |
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J.S.Bach: Sonatas & Partitas BWV1001-3
Sonata I BWV 1001 in G minor
1. Adagio
2. Fuga. Allegro
3. Siciliana
4. Presto
Partita I BWV 1002 in B minor
1. Allemanda
2. Double
3. Corrente
4. Double
5. Sarabande
6. Double
7. Tempo di Borea
8. Double
Sonata II BWV 1003 in A minor
1. Grave
2. Fuga
3. Andante
4. Allegro
Isabelle Faust (Vn)
J.S.バッハ:無伴奏ソナタ&パルティータ集 VOL.2
J.S.バッハ:
(1)ソナタ 第1番 ト短調 BWV1001
(2)パルティータ 第1番 ロ短調 BWV1002
(3)ソナタ 第2番 イ短調 BWV1003
イザベル・ファウスト(ヴァイオリン/1704年製ストラディヴァリス スリーピング・ビューティー)
ファウストの前回のバッハ無伴奏の録音は2年前に遡り、尚、これは2010年度のMusicArena Awards セミ・グランプリに選定した秀作だった。2年前にこの盤が出たときには明確にVol.1とはアナウンスされていなかったが、内容的にはソナタ1~2番とパルティータ1番が抜けていたので続編がリリースされることは分かっていた。
しかし、よもや2年もの月日を経ることになろうとは思っていなかった。そのときにはこれらBWV1001~1003も既に録音済みであり、編集の都合によってBWV1004~1006を先行リリースさせたものと思っていたのであるが、今から振り返ってみると実は録音はしていなかった、あるいは録音していたが気に入らずに録り直しを決断していた、ということだったのだろう。
ファウストはこの2年の間にブラームスのVnコン(with ハーディング)、アルバン・ベルク&ベートーヴェンのVnコンの2回目(with アバド)と、割と精力的にポスト・バロック作品のアルバムをイシューしてきているし、またリアルの演奏活動においても幾つかのツアー/シリーズ公演やゲスト出演を精力的にこなしてきた。そういったアクディビティに関する話題の多さもあってか、私自身はバッハ無伴奏の続編について忘れかけていた感があった。
従前の慣習からはBWV1001から順に聴き進みたいところ、ファウストの最初の盤にはそれらが入っておらず、従ってBWV1001~1003を頭内想像して聴いたふりをしておいて、そして中途のBWV1004から聴き始めるということをしていた。
入りのBWV1001の1楽章アダージオは、まさに2年間想像してきたイメージとまるで同じフレーバーだったので思わず笑ってしまった。しかし、2楽章フーガがちょっと違っていて少々面食らった。ずっと頭内定位していたバーチャルのファウストは、このフーガを割と冷静沈着で瞑想的なパッセージで弾いていたが、現実には想像していたよりも動的でめりはりの効いた、しかし厳しい解釈だったのだ。
今回のこの演奏は2年前のBWV1004~1006にも感じられた特徴を基本的には引き継いでいるが、更に幾つかの形質を加えたものとなっている。まず、マルカート基調が更に徹底しているということ。相当にアップテンポなのに音符の刻みが更に微細で短く、かつスラー要素やポルタメント要素が殆どなく、バッハが書いた簡潔で美しいスケールが殊更に際立ってストイックに聴こえるのだ。次に、アゴーギク、特にリタルダンドによるアーティキュレーションを積極的に付けていること。テーマの終盤における引っ張り方が特徴的で、殊にダブルストップで弾く場面における時間軸方向の粘性が強くてなんとも引き込まれるものがあるのだ。そして、ヴィブラートの排除については僅かに寛容であること。前作では徹底したノン・ヴィブラートを貫徹していたが、本作では稀に音程を揺らす場面が観察され、これはこれで弊害とも言い切れず、多少なりともソフトタッチに振りたいパッセージにおいては容認されるとの判断があったのかもしれない。
このアルバムの白眉はソナタ2番のフーガにおける透徹されたコンテキスト構築力と音数の多さ、そしてフィナーレのアレグロの閉め方と評価する。いずれもファウストの肉声による歌としか聴こえないような雄弁で表情豊かなVnの音であり、並外れた技巧だけでは決して成しえない、内面的熟成が発露してこそのハイレベルな無伴奏といえる。本作と前作を通しで聴いた場合の連綿性に関してはいまだ評価できてはいないが、ある種の不連続性が感じられるかもしれない。これは収録の時間的間隔が開いていることを考慮すれば致し方ないところだろう。音楽表現的には極上のパフォーマンスを達成した数少ないアルバムといえ、欠点らしい欠点は見当たらない。唯一論うとするなら、それは、このバッハを聴くには体力的にも精神力的にも激しい消耗を伴うということ。
【録音】
Harmonia Mundi HMC902124、通常CD。録音は2011年8~9月、定番のTeldec Studio, Berlin。音質的には前作を上回る優秀なもので、スタジオ録音なのに立体的なステージ・アンビエントに包まれるという優れものだ。また、前作よりもディテールの解像度が一段上がっていて、ファウストが駆るスリーピング・ビューティが眼前にリアルに結像する。さらにはファウストの息遣いや上半身を揺らしたときのノイズなども豊富に拾い出している。演奏内容は優秀で厳しく、そして録音品質的にも克明で厳しいものがある。但し、あくまでもフラット基調であって華美な調音でもないことから、この音質によって聴き疲れするということはないだろう。演奏自体にのめり込んで聴いた場合には酷く疲労することはあるかもしれないが。
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わざわざコメントを頂きありがとうございます。こちらこそよろしくお願い致します。トミーさんの真摯なリサイタル・レポート、興味深く拝読致しました。深い感動が手に取るように伝わります。随分前ですが、私も王子ホールでファウストを聴いています。http://musicarena.exblog.jp/7468989/ トミーさんの昨年のレポートを拝読し、王子ホールでの清冽な情景が蘇りました。ありがとうございました。